電塾2009年8月定例勉強会レポート
 
 
8月の電塾はホームタウンの有明スポーツセンターで行われました。本日のお題は午前の部の優しい電塾を入れて4つ。今月も興味深いお話しが目白押しです。特に動画とCGはこれまで正面からはあまり取り上げていませんでしたが、今回はその入門編にふさわしいお二方の登場です。

午前の部
シバタススムの「カメラマンのためのMacのお得な情報」

午後の部
第1部■恒例「良いもの・こと探し」
第2部■「JVC最新42インチ静止画対応ハイビジョンモニター」
第3部■「静止画だけがデジタルフォトではない」
ー写真活動の延長としての動画制作ー
第4部■「デザインビジュアライゼーションセミナー」
ー加速する3DCGフォトー

 
 
午前の部 デジタルフォト入門講座
「カメラマンのためのMacのお得な情報」
電塾運営委員 テクニカルライター シバタススム
 
 

柴田氏ははもとアイオーデータの社員。ハード面のオーソリティでしたが、昨年末に血迷って独立?し、現在はマック系雑誌のライターとして生計を立てています。本日のお題は「カメラマンはカメラの前よりもMacの前にいることが多い」そのために、「Macを仕事の道具として使う」のだ、という事を認識し、より、Macを「良い道具」として扱うすべを身につけようという、何ともありがたいテーマ。

そろそろ話題になり出したスノーレパードに関して、いろいろな新機能はあるでしょうがベーシックな部分を見ると「64ビット化、Open CL、マルチコア最適化」という3つのキーワードに集約されると言うことです。

64ビット化

ファインダーが64ビット化される(実はこれまで、一番肝心なファインダーが64ビット化されていなかったそうです。ここが高速化されるのと、層でない場合とでは全てのパフォーマンスに影響してくると言うことです)そうです。
特に画像類に代表される大容量のコピーペーストでは驚くほど効果が上がるそうです。また、メモリーも理論的にはほとんど無制限に使用でき、Photoshop なども、アプリケーション側が対応できれば、大量のメモリーを使用して、ほとんど仮想記憶にデータが飛ばない状態での使用が可能になるという事です。

8GBメモリーの状態で、システムに1GB残して残りを全てPhotoshopに当てるとバッチ処理3倍以上の高速化が期待できるそうです。ただし、Photoshop CS4はまだ早くならりません。Mac用のPhotoshop CS4は64ビットに対応できるようには出来ていないからです。時期Photoshopが対応してくるかどうか、是非期待して待ちたいと思います。複雑、大量のパノラマ合成、位置あわせでは必須の機能となります。

Open CL

GPUをどんなプログラムからも使用できるようにする画像処理速度の高速化を指します。つまりCPUの処理では間に合わない画像処理をディスプレイボードに搭載されたコアを使用して同時処理させようという考え方。

よく似た機能でOpen GLというものがありますが、これは表示処理だけの高速化となります。更に一歩前進してCPUの画像処理に関するお仕事を手助けしてくれる用になるのですね。Photoshopだけでなく、動画のコンバートにも使用出来るようになるとのこと。期待できます!。

Centrai Dispatch

これは単純にマルチコア処理への最適化を指すそうです。
現状のマルチコア化の恩恵はデュアルコアを乗せてもせいぜい120%程度。単純作業ならもう少しアップするでしょうが、思ったよりも恩恵は少ないですね。
ところが、Grand Centrai Dispatchにより、その最適化が進むと150%以上はいけそう?だそうです。これはコアが増えたときにそれらに上手にお仕事を振り分けるシステムのブラッシュアップが未だに完璧ではないからでしょう。こうなって初めて8コアの威力が期待できるのでしょう。

というわけで、スノーレパードはレパードの目指した目標に、やっとベース機能をアップデートして最適化が可能になり、たどり着ける、レパードの完成型だといえルのでしょう。

ちなみにお値段はアップデート3000円 5ライセンス5000円だそうです。ま、当然か?という感想です。ウィンドウズ7のアップデートも似たような
持っていますが、あれは高いですね。
9月中のリリースと言うことでした!。首を長くして待ちましょう!。

更に新しいストレージ SSDについてもお話しがありました。接続はsATAですのでほとんどのマシンに普通につながります。

特徴は
1.低消費電力
2.低発熱
3.耐衝撃
4.軽量
5.高速

となります。HDは60度以上で壊れる可能性が飛躍的に増大しますが、SSDの場合は80度以上となるそうです。かなり安心できますね。温度上昇が抑えられることにより寿命が長くなるともいえます。また、耐衝撃性に関してはHDとは比較にならないほど高い数値を出します。ちなみに私は買ったばかりのMacBook Pro 17inchにSSDを搭載していますが、起動中に40Cmの高さからコンクリートの上に落っことしましたが、問題なかっ他という実証を図らずもやってしまいました。よい子の皆さんはマネしないように…。そして軽量。これも大きいです。特にノートブックでは!。HDの場合はモーターを分回す必要上「結構な重さ」が必要らしいのです。低消費電力によるバッテリー寿命の長さも大きな問題です。私の場合は新幹線で大坂まで往復する間、ずっとバッテリー駆動で使用し、まだ少々電力が余っていました。(もちろんまだ新品だからですが)最後に「高速」という大きなメリットがあります。書き込みはこれから更に早くなる(ディスク無いRAIDのコントロール技術の進化期待できます)でしょうが読み出しは現時点で驚くほど高速です。Photoshop CS4の立ち上がりも30秒程度。システムの立ち上がりも非常に高速で快適です。

ちなみに最近は低価格のSSDも多く発売され、128GB 1万円程度のものもありますが、通常これらは遅く、熱も多く、寿命も短いそうです。コントローラーのし上がり雇う際しているチップの性能差だそうです。ま、256GBで7~8万円というものがだいたいはインテルのチップが入っていてあんしんできるとか…。

 
 
午後の部 第一部「恒例 良いもの・良いこと探し」 参加者全員
 
 

今日も様々な「良いこと」が報告されました。息子さんがめでたく大学に入学しましたが、見事に奨学金を射止め、一年分の授業料がチャラになった方!先週結婚された方(おめでとうございます!)やっと電塾に来れたのが嬉しいとおっしゃってくれた方と様々でした。

また、定番になった感のあるエプソンのストレージビュアーに新機能が追加され、そのお披露目もここでされました。カメラにつないでおくことにより、自動バックアップ機能、そしてライブビュー機能の遠隔操作(なんと露出の変更やシャッターまで切れてしまうのです)。これは便利ですよね!

更に山田氏から富士フィルムのパノラマカメラのレビューもありました。ほんとに凄い!特に液晶が!!通常の写真ではもちろんお見せできないのがとても残念です。

 
 
午後の部 第2部■「JVC最新42インチ静止画対応
ハイビジョンモニターのご紹介」 日本ビクター株式会社ご担当者様
 
 

静止画も動画も再現できるディスプレイ(テレビ?)の登場です。すでにソニーさんからも同様のコンセプトのブラビアが発表さていますが、ビクターさんからも出てきました。これからのトレンドになるのでしょうか?
面白いのは動画と静止画の本質を理解した上で再現する際のエンジンを切り替えていること、カラーフィルターに合わせてFFCL(冷陰極管)をカスタムで設計しベストマッチングを試みていることなどでした。また、入力系統の差によってTV信号蜷それなりの、デジタル信号には無駄な変換を行わずすねての情報を生かし切る設計になっているようです。生産ラインでのガンマ、白バランスの全数調正を行うなどナナオさんにも迫る個体チューニングを行っています。動画にも対応したいカメラマンにとってはそのままコンピュータのディスプレイにしてしまいたいくらいです。


実際のデモでも、その差が確認できました。
プロファイル変換に近い作業を内部で行う

手前の縦長の部分が同じ機種をよこから三田ものです。スリムで無駄がないですね。

 
 
午後の部 第三部「静止画だけがデジタルフォトではない」ー写真活動の延長としての動画制作ー
ABCスタジオ 動画トレーニングスタッフ藤本様、金田秀樹電塾運営委員
 
 

まず金田氏からムービーに取り組みだした経緯が解説され、当初はレッドワンというデジタルムービーカメラを使い出したが結局はCANON EOS 5D Mark IIに行き着いたという事でした。

そこで5D Mark IIを使用するにあたっての注意事項やそのメリットなどを紹介していただきました。


屋外でムービーをきちんと見るためのアダプター

もちろん、ムービーとTVは信号処理、圧縮方法などでも差があり、フレームレートという考え方も理解する必要があるようです。このあたりはわかりやすい表として配布されていました。

物々しい装備をした5DMarkII。すでに本体の価格を大幅に超えていますが、実際はここまでする必要は無いそうです。

必要最小限の装備をした5D MARKII。結構シンプルで良い感じです。

また、ビデオ三脚は業界では「ザハトラー」がスタンダードとなっているそうで、確かに雲台の操作のスムースさは絶品でした。

小型でレンズの“ぼけ”味が美しく、低輝度でも撮影でき、しかもリーズナブルで写真も撮れる?、という素晴らしい「デジタルビデオカメラ」ですが、欠点も確かにあります。
CMOS,センサーの特徴で、「ローリングシャッター」というものがあり、速い動きのものや高速パンなどの場合にはその形がゆがんで記録されてしまうこと。今のところこの現象を補正することは出来ないようです。音声のモニターがないことなどで、ここは注意しておかなくてはなりません。
また、控訴くシャッターを切ることも出来るのですが、その場合水の流れなどは見た目と個となり、丸い玉となって写ってしまいます。とはいえ、これも逆にメリットとして「これまでとらえられなかった映像」とすることも出来るでしょう。

電塾発祥の地、ABCスタジオで動画編集のトレーニングを行う藤本氏からは、撮影後の動画編集に関して、いくつかのヒントとその現実をお話ししてくださいました。
動画を編集する、という事は私たちが思ったほど大変ではない。というとても安心できるお話しから開始されました。実際にFINAL CUT PROを使用してその編集のデモ、そして動画をハンドリングするために必要な機材、資材、心構えなどについてお話しをしてくださいました。彼自身のコースでは1からアプリケーションや理屈を覚えるのではなく、必要に応じて必要なソフトウェアのハンドリングを学べるのだそうです。
 たとえば、あるカメラマンが動画の編集込みの撮影を受注した(してしまった、あるいはしないわけにはいかなくなった)場合に、必要な撮影動画のサジェスション、どこに注意して、何を中心に撮影するのか、そして実際に編集する際に必要最低限の操作をその場で教えてくれるのだそうです。実は私もそのような立場に追い込まれ、たぶん今月中に藤本氏の門を叩くことになると思います。


 
 
午後の部 第四部「デザインビジュアライゼーションセミナー」
ー加速する3DCGフォトー 株式会社バーチ代表 長尾 健作様
 
 

長尾さんは元々「アマナ」に席を置いて映像、著作権関連のお仕事をされていたようです。
関西電塾100回記念でも同じプログラムをお話ししてくださいましたが、今回は東京の電塾バージョンです。3D CGをハンドリングするソフトウェアにはMAX、MAYAという二大ソフトが存在するそうです。マヤが自動車向けで、約20万。それ以外はほとんどがマックスで、約40万円というお値段だそうです。サポート方式の違いから、どちらが高いとはなかなかいえないそうですが…。自動車以外をハンドリングするのであればMAXを選択しておいた方が効率的とおっしゃっていました。

キャドと3DCGの関係はちょうど私たちにとってのIllustratorとPhotoshopにあたるのだそうです。イラストレーターの仕上がり(ベジェ曲線で校正された数値データ)をPhotoshop(pixelで校正されたラスターデータ)で肉付けして立体感と質感を与えて写真のように見せる…これを立体で行うと思えば想像が付く、とおっしゃいます。
 なるほど、MAXを使用してキャドデータから製品写真を作製する手順を見せていただきましたが、その通りでした。特にライティングというものがこの作業の中核をなすと言うことも一寸した驚きです。ライティングの…それも「効果的な」知識と経験を必要とするのですね。丸でカメラマンと同じです。そう思ったら、長尾さんから「だからーライティングノウハウをもった、CGオペレーションフォトグラファーという存在が今必要とされているのです」という言葉が聞こえてきました。
 なるほど。そう考えるのも一つの考え方です。動画の世界でもライトマンを雇う余裕のない撮影でカメラマンが照明をするのだそうです。スチールを撮影する私たちにとってはあまりに当然のことですが…。動画のカメラマンが静止画の撮影をすることに抵抗がないのに対して、静止画のカメラマンは動画を毛嫌いする傾向があります(私自身も)。しかし、今、どの世界にでも飛び込んでいける資質を持っているのは静止画のカメラマンなのだね、と改めて感じさせられました。それなら、早い時期に「飛んだ」方が正解です。早い時期にデジタルフォトを始めたカメラマンたちが生き残ったように…。
 奇しくも長尾さんも藤本さんと同じ言い方をしていたのが印象的です。新しいソフトウェアの全てを基礎から覚えるのではなく、大事なツールのみを覚える事が肝心だと。MAXを自分のものにするのに一ヶ月もあれば可能だそうです。ものが無い状態を可視化するためにはいくつかの段階が必要で、それらは他の専門家に任せても良いのではないかともおっしゃいます。(キャド変換の別注)アングル・ライティング・レンダリングに特化した、VAレンダラーとしての生き方もあるし、そのためには半年もあれば十分、というお話しでした。

 仕事がある場所さえ見つければ、そこに自分の得意な分野が少しでも重なれば、そこに生きる道があるのではないか。また、仕事の受発注の形態自身が驚くほどダイナミックに変化、進化を続けている。そこに「新規事業獲得のチャンスがある}というお話しはすでに「加速する3DCGフォト」というテーマを超えて、デジタル画像に係わる、今後の全ての写真家、オペレーター、イラストレーター、デザイナーにとって、最も重要な問題のような気もしました。


 
 
今月の一枚目
 
 

 懇親会は、今回はフジテレビ側の「わらわら」で行われました。人数が少なかったせいか、こじんまりとどこに座っていても皆さんのお話に耳を傾けることが出来る会でした。久しぶりに常連の柳川さんが参加していたのがとても嬉しいニ次回です。

文: 鹿野 宏