第59回九州電塾セミナーレポート

九州電塾12-09

9月15日、今日は8月の電塾お休みしましたので、2ヶ月ぶりのセミナーになります。
今回最初は、DNPフォトルシオ川口様より、デジタルアーカイブの現状と今後についてのお話です。今まで文化財の記録、保存はフィルムが当たり前でした、しかしフィルムが製造されなくなり、現像もプロ現像所の減少により、否が応でもデジタルへの移行が進んでいるようです。2010年度の文化財写真技術研究会福井県講習会のアンケートでは、フィルムカメラとデジタルカメラの併用が100%で、デジタル1眼レフの所有率が100%、大判中盤カメラの所有率が43%でした。それが2012年奈良国立博物館の現状は、デジタルバックによる16bitRAWデータ撮影が100%でカメラも8000万画素(可視光線)6000万画素(赤外)併用撮影に移行しているそうです。また過去のフィルムをデジタル化する作業も36万枚進行している状況だそうです。
今年に入りフィルム製造メーカーである、コダック・富士フィルムはフィルム製品、製造中止のアナウンスをおこないました。もう待ったなしで、デジタルへの転換に迫られている訳です。しかし実際に作業されている博物館や美術館の方々はまだデジタルカメラによる撮影の基準や運用が明確ではないそうです。
そこで東京国立近代美術館と大日本印刷が収蔵品デジタル撮影標準化プロジェクトがつくられたそうです。

美術品デジタル画像の仕様を定める

撮影方法 機材やライティングの仕様を定める

画像保管・運用の仕組みを定める
以上が標準化の目標になったそうです。
この中でRAWで撮影し,プロファイルで最適化してTIFF画像に変換するとか、モニタの基準など様々な仕様を決めていかれたそうです。RAW以外にTIFFを保存するのは、RAWはメーカーのソフトに依存しますので、10年後100年後に使えなくなる可能性があるからです。またカメラはできるだけ高性能のデジタルバックで行い最低4000万画素以上でレンズもできる限り高性能な標準から中望遠レンズを使用するということに決まっていったそうです。またカラーチャートも写し込むのですが、これにはマクベスのカラーチャートを使用するそうです。(昔はコダックのカラーパッチでした)
またデジタルにより、近赤外線撮影ではフィルムの再現性を遥かに凌駕した研究が進んでいるそうです。またデジタルデータのアーカイブ化により、デジタルミュージアム構想を文化庁が提唱しているそうです。

国民が世界中何処にいても自由にアクセスできる

「新しい知との出会い」の機会を確保し発想の多様性・柔軟性を醸成

マルチメディアで表現することにより「見えないもの」が「見えてくる」

文化資源の利用価値の高まりとコンテンツを利用した研究が促進


人類の英知によって築かれてきた記憶にデジタル技術で永遠の生命と普遍性を与え、未来へと導いていく。

またGoogleが世界規模のデジタルアーカイブのプロジェクトも行っているそうです。
Google Art Project
「インターネットを利用して、国境や時間、言語に関係なくアートに触れる」
このプロジェクトでは世界で、40カ国151館、約30,000件。
国内では 足立美術館、大原美術館、国立西洋美術館、サントリー美術館、東京国立美術館、ブリジストン美術館 6館合計567件の作品が閲覧可能だそうです。

僕たちの仕事でもアーカイブは重要な仕事です。しっかり勉強して美術館の学芸員の方々にデジタルでは負けない知識を持たなくてはならないようです。
 川口氏から新しいPhaseOne用のシフトレンズやリーフデジタルバックの実機の紹介もありました、またCapture Oneは現在Ver6.4.3でCanonのデジタルカメラのテザーができませんが、フォトキナと同時に新しいバージョンが発表になるとお話があったのですが、6.4.4でエラーはなくなったのですが、以前テザーはできません。EOS Utilityで監視ホルダーで使えますが、早い対応をお願いしたいところです。

次は佐口さんが前回の続きでLightroomのお話です。今回は読み込み時のプレビューサイズをどのぐらいで作成したら実用的かののお話と、LightroomのテザーにおいてEOS Utilityを使用してライブビューを使用したテザーのお話を行いました。まず読み込み時のプレビューサイズですが、最初は時間がかかるかもしれませんが標準、または1:1で作成した方が後からの作業が早いのでその方が便利というお話でした。EOS Utilityは、オーバーレイ機能やフォーカスの制御もできるようになり、Lightroomのテザーより俯瞰撮影など特殊な撮影においては便利に使えるのではないでしょうか。

その後僕が新しいカメラLYTROを皆さんにお見せしました。これは今年の始めにアメリカで発売になり話題になった、撮影後にピントを合わせるカメラです。

最後に的場さんが新しい機材の紹介を行い、今回の講義は終了しました。

レポート 写真 河口清秀