電塾2月定例勉強会 in PAGE2010
 
 

「電塾+JPC」年に一度の合同大勉強会

今年最初の電塾は恒例のPAGE2010の中でJPCと合同で行われ、今年最初の講師は

東京芸術大学 技法材料研究室 早川廣行。

テーマは文化財記録における撮影と画像処理技術です。

そーなんです、今年は早川塾長の講演から始まりました。

 
 

第一 文化財記録における撮影と画像処理技術

東京芸術大学 技法材料研究室 早川廣行

 
 

http://denjuku.gr.jp/seminar/_images/pastedGraphic.jpgこ のところ塾長は文化財のアーカイブに力を入れており、昨年も1ヶ月間近くインドに滞在してアジャンター遺跡の壁画の超高精細画像記録を行っています。そこ で、今回は超高精細画像記録の撮影方法や機材の選定の仕方。なんと壁画の絵の具の剥げ方、付着している埃までも記録してしまう、驚愕の2億6千万画素にも なる画像のハンドリングについてお話しされました。


ま ず、カメラの選定についてのお話です。一般的には1ショット1センサータイプが現在のスタンダードになっており2500万画素のカメラも登場しております が、平面色分解方式をとっており演算による画像補間が行われ偽色やモアレの発生が避けられず、ローパスフィルターにより画像の精細にかけてしまう。通常の 撮影では問題ないが、超高精細画像記録にはちょっと不向き。


シ グマに代表される垂直色分解方式は1画素毎にフルカラーを記録し,今後のデジタルカメラの目指す方向であるが、まだまだ高画素化が進んでいない。となる と、塾長が日頃から力説している、1画素が正しいRGB情報を持つタイプ そーです! マルチショットタイプの登場です。マルチショットタイプのお話をす る塾長は満面笑みで舌好調です!


塾 長の心を捉えたカメラはハッセルブラッドHD3?39MS。一体型のセンサーをちょっとしたコツではずし、4×5カメラにアダプターを介しセンサーを取り 付けます。シャッターシステムはシュナイダーSKシャッター、マルチショットの為数個のアダプターを介さないとシャターがきれません。この4000万画素 のセンサーを付けた怪物ビューカメラでライズ、シフトを繰り返し古代遺跡を再現するのです。


http://denjuku.gr.jp/seminar/_images/P2052528-2.jpg1面撮影するのにマルチショットタイプなので5回シャッターをきり、のりしろを作りながら8面撮影します。一つの画像が作られるのに40回ものシャッターがきられるのです、かかる時間は6分。



 

 

 


http://denjuku.gr.jp/seminar/_images/P2052527-2.jpgMS+8面付け…なんと2億6千万画素の画像の出来上がりです。


カメラは決まりましたが、相手は文化財。どんな所に在るか解りません。ここからは、塾長のアイディア満載です。数々の撮影機材に施す細工を見ていると、塾長は日曜大工大好き?昔は、一発撮りの仕掛け作りに苦労しましたね。カメラマンはみんな器用でした。


これだけの撮影システムを支えるPCは最新のMacBookPro 17インチです。MacBookPro の17インチはモニターの色域が広まっており、現場での確認作業が以前より容易になったようです。


ま た、大量のデータのバックアップを行うにはExpressCardによる高速転送が必要です。現行のMacBookPro には17インチにのみスロットルが付いています。大量なデータのバックアップを行うには、17インチしか無いのですね。塾長からExpressCardを 扱う為の注意と改善策がありました。私もExpressCardを使用しているのですが、撮影中にExpressCardに手が触れると、接触不良を起こ し、MacBookPro のモニターの画面が真っ黒になり再起動を促すメッセージが…このメッセージを見る度、私の目の前も真っ黒になります。そこで改善策として100円ショップ でマジックテープを買ってきて、ExpressCardとMac本体にテープの表裏に注意してを貼付けます。これでExpressCardが簡単に動かな くなり接触不良はおきません。マジックテープなので撮影終了時には直ぐに取り外せます。動き回る現場には欠かせないとの事。これで、撮影に集中!


http://denjuku.gr.jp/seminar/_images/P2052531-2.jpg撮 影現場は洞窟の中、発電機は回っていますが電源がいつ落ちるか解りません。バックアップのHDを安全に作動させなければなりません。突然な停電でもHDが 止まらない様に、MacBookPro のUSBポートを2つ使用して安定した電源供給を行います。そのために2又のUSBコードを製作します。これで1アンペアの安定した電源の確保でき、高速 転送、冷却効率、ミラーリングをできる2.5インチHDを安全に使用する事ができます。




http://denjuku.gr.jp/seminar/_images/P2052534-2.jpgMacBookPro を置く台も工夫を凝らして製作されています。ライトスタンドを支柱に使い、外付けHDが収納出来る仕様です。ライトスタンドを使用することで狭く限られた スペースの中での自分の望む所にMacBookProを置き、正確にピントの確認が出来るとの事。塾長はここまでの準備をしてインドの山奥に行かれたわけ ですね。凄い!確かバックアップに500GBのHDを14台持っていかれたとか。


最後には高精度フォトマージ法や3億画素でもインターネットを使用して発信出来るフォトショップCS4のZoomifyのデモが行われました。

高精度フォトマージ法では究極を求めるのでちょっとしたコツがあるとか。詳しく知りたい方は電塾勉強会にいらして下さい。


以 前,私も2億4千万画素の画像を拝見した事が有ります。それはもう超高精細画像記録そのもの、人間の目が見落とす物まで記録されていました。凄いの一言で す。やはり、素晴らしい作品を生み出す陰には卓越した知識や日々の惜しまぬ努力、フットワークの軽さが必要なのですね。



 

 
 

第2部「トリックプリント」

テーマはRGB発光インキによる印刷技術がもたらす世界とは?

株)SO-KEN  浅尾孝司様

 

 
 

RGB 発光インキがテーマです。以前にちらっと聞いた事がありましたが、現物を見た事が有りませんでした。どれだけの人が興味を示すのだろうと思っていた所、さ すがにここはPAGE2010のイベント会場、広い会場も立ち見がでる程の大盛況,みんな新しい技術にビジネスチャンスを模索しているのですね。


簡単にトリックプリントの説明です。

発 光インク(RGB)をインクジェット出力した特殊プリントをトリックプリントと言います。今では、通常インクCMYKと発光インクRGBを同時にずれなく プリントする事や発光インクと通常インクの2重印刷まで可能。例えば、白い用紙に発光インクだけのプリントとすると、通常の蛍光灯の下などは何も無い白い 用紙です。ここにUV-A(315〜400mm)の紫外線、つまりブラックライトを当ててみると、なんとフルカラーの画像が浮き出してきます。不思議です ね!


単 色では古くから有る技術でパスポートやクレジットカードなどのセキュリティなどに使われているのです。現在では,フルカラーでのプリントが可能になりオフ セット印刷までもが可能に成りつつ有ります。デジタルの時代になり、急速にいろんな技術が発展していきます。ぼーっとしていると自分だけ取り残される気に なるのは,私だけ?


http://denjuku.gr.jp/seminar/_images/P2052553.jpg


ではトリックプリントのもたらす最大の効果とは何でしょう?

静 止画でしか無かった印刷媒体に時間の流れやストーリー性を付け、サプライズな演出が出来る印刷。照明のバランスにより徐々に絵が変わり静止画に動きが加わ るのです。通常インク(CMYK)と発光インク(RGB)を重ねてプリントした場合、通常の照明の下ではCMYKの画像が見えます。ブラックライトを照射 すると発光インキが現れ,全く違う印象の画像になります。


http://denjuku.gr.jp/seminar/_images/P2052546-2.jpg


ま た、電飾看板などは中の蛍光灯とブラックライトを交互に入れる事と、光源のバランスを変化させる事により静止画に動きをあたえられ、大きな広告での2面性 をもった演出が可能になります。お話の中では,文具、ポスター,カード、室内装飾、交通広告、ビルボードまで対応でき、純白なウエディングドレスまでも印 刷可能で多岐の分野に渡り使用が可能との事。


なかなか、文章で効果を説明するのが難しい技術です。


もっとどんな事が出来るか知りたい方は株式会社SO-KENで検索してみて下さい。


昨年はデジタルサイネージ時間帯に応じて配信する画像を変えたり動いたり,今年は印刷物まで動きだすんですね!。

スチールカメラにも動画が付きみんな動きが必要なのですね。スチールカメラマンの私としても、これからの紙媒体に期待したい物です!


 

 
 

第三部「XYZフィルターカメラ 色視覚再現カメラシステムについての講演」

静岡大学工学部 電気工学科 下平美文教授

日本電信電話株式会社 メディア情報研究部 橋本勝研究員


 

 
 


この講演は、大変奥が深くレベルが高すぎて私の頭では何処まで理解できるやら?こんな事だったら,予習してくるべきだったと一寸反省!


XYZフィルターカメラてなに?

XYZ フィルターカメラは人間の目が感じる色の分光特性(心理物理特性)に近いカメラ特性で光を捉え、見たままの物体の色を正確に再現するカメラです。このカメ ラの使用目的として印刷の色確認、病理学検査、遠隔医療、工学デザイン、デジタルアーカイブ、などの正確な色再現の重要性が高いケースです。現在では、静 止画カメラで1100万画素CCD このカメラで撮影した画像は色差1以下の性能をもっており、また動画カメラもあるのです。


XYZフィルターカメラの見たままの色ってなに?

私 の仕事の中には、商品などのカタログの仕事が有ります。撮影した商品と納品データの色がそろう様、撮影や後処理を注意深く行います。信頼できるモニターで 確認して、商品の色に近い状態でプリントアウトします。これは私にとっては見たままの色ですが、この場合、カメラメーカーのカメラを使用するというのは、 そのメーカーの作った色再現でしか無いのです。しかし、XYZフィルターカメラでは視覚色域の色を測色的にデータとして捉え、デバイスに依存しない信号を 作ります。ディスプレイに表示させる場合でも、撮影した広色域の信号を、ディスプレイの狭い色域にマッピングするには、ディスプレイの色域内の色は測色的 色再現(正確に)、ディスプレイの色域の外の色は色域境界の色に変更する事により色を再現するのです。あくまで、測色的に撮影された画像信号に手を加えず 出力すると言う事です。カメラメーカーが作りだす好ましい色と言う訳ではなく、測色的な色再現をするカメラです。繰り返しますが、色彩を強調したり、きれ いに見せるのではありません。淡い色は淡いまま、正確な色再現を行うのです。


ディスプレイでも見たままの色再現?

こ こで、人間の見える色域をほぼカバーする6原色ディスプレイを使い、XYZフィルターカメラで撮影したオリジナル画像(非圧縮画像)をディスプレイの狭い 色域に圧縮(圧縮画像)していきます。オリジナル画像(非圧縮画像)と圧縮画像の色が同等に見える、「色域圧縮の許容範囲」を多くの人を使い実験したそう です。正確な色の管理を求められる職業では無い、一般の人はsRGB(HDTV)の色域まで色域圧縮を行っても、非圧縮画像と圧縮画像との色の差は感じに くいとの結果です。ということは、sRGB(HDTV)の色域まで圧縮しても見たままの色と感じてしまうのです。  これは、あくまで一般の方の感じ方で あり、厳密な色を表示するには、もう少し広い色域が必要との事。


http://denjuku.gr.jp/seminar/_images/P2052585.jpg会 場では色見本をXYZフィルターカメラで撮影してディスプレに表示させるデモがありました。現物とディスプレイの画像の色を比べて色々な意見が… さすが 皆さん色に関する仕事をしています。ディスプレイの色域外のモロフォ蝶の色、色域外の色をどうすればディスプレイで近似させるかにまで話が及びます。


http://denjuku.gr.jp/seminar/_images/P2052562.jpg次に橋本勝研究員からのXYZフィルターカメラの使用した感想です。

他 社製のカメラでは色が転ぶ蛍光色やオリーブ色でも、XYZフィルターカメラは、正確に色が再現できる。文化財のアーカイブについても、XYZプラス紫外線 や赤外線も記録出来れば、他のカメラとの差別化はできるのではないか。動画カメラでもアーカイブに挑戦してみたい。手術の経過撮影や医療関係でも積極的に 活用してみたい。など、これからの方向性についてお話しされました。


な かなか、学術的なお話が多く最初は理解できませんでしたが。以前読んだ、JAGAT発行の眼・色・光を読み直し、講義を収録したビデオを見る事によりこの カメラシステムが理解できました。通常のカメラマンの考える色作りとは違いますが、正確な色情報が必要な仕事やアーカイブなどは測色的な色再現を求めるカ メラが必要なのですね。まだ実用化にはいたりませんが、これから、どのように発展して行くか解りません。そこには、ビジネスチャンスが潜んでいるかも知れ ません。これからの動向に注目して行きたいものです。


最後にレポートを書くにあたってビデオを提供して頂いた久富さんの御協力に感謝いたします。

レポート 北 英樹


 

 
 

「番外編」PAGE2010内で行われた電塾コーナー、「デジタルスタジオ特設ステージ」

 今年は鹿野と菊池運営委員が担当しました、恒例の中国美人モデル撮影会と初級デジタル動画教室です。

 

 
 

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鹿 野自身、昨年9月頃から「デジタルカメラ」による動画撮影を勉強しはじめ、今年の一月に初めての「動画製品」を納品したばかりという丸まるの初心者。菊池 氏も殆ど同様です。そのため、初めて動画を撮影して戸惑ったこと、知識を偏って吸収してしまい、そのために大変な目に会ったこと、音声や音楽の扱いに戸 惑ったこと等を織り交ぜながらのお話しでした。


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JAGAT主催のセミナーで紙を否定するビジネスチャンスのお話しは何とも奇妙ですが、革命に近いようなダウンサイジングを感じ取っていただけたなら、成功だと思います。


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動画をデジタルサイネージに仕立て上げる作業を株式会社ブリスロード社さんにお願いしました。縦位置のダイナミックな画像が出来たと思います。


それを表示する56インチの立て型ディスプレイをソニーマーケティング株式会社さんのご協力です。新宿伊勢丹の地下街にあるデジタルサイネージも同じ種類のディスプレイだそうです。


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撮影用照明装置は株式会社ワイドトレードさん。毎年お願いしていますが、今年は蛍光灯を提供していただきました。


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相方は運営委員の菊池君。二人ともありがとうね!


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モデルはエコーインテックのお馴染みさん「オドンゴア」ちゃん。


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エッコーインテック近くの「とうしょう麺」やさんに勤める「帝」さんは拓殖大学の四年生。

動画を撮影するカメラとレンズはキヤノンマーケティングジャパン株式会社さんにお借りしました。EOS7Dと5DMarkIIが二台ずつです。


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殆ど打ち合わせ無しの一発勝負でした。菊池君、お疲れ様でした!。

レポート 鹿野 宏

 

 
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