2009年 電塾10月のレポート
 
 
本日のお題は「スノーレパードとファイナルカットプロ」
 
 
第一部「スノーレパードとファイナルカットプロの新機能」
株式会社TOO デジタルメディアシステム部 櫻井 充様 吉田 博行様
 
 
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第1部は株式会社Tooの櫻井様からスノーレパードとファイナルカットプロの最新情報です。
 最初はMACの最新OSスノーレパードです。これまで据え置かれていたファインダーがやっと32ビットから64ビットにやっとなり、全てのアプリケー ションに対するスピードが向上したと言うことです。マルチコアへの最適化もやっと実現できてきたようです。(それにはPower PCとの決別が必要だったようです)

64bit化

 32ビットの縛りであったメモリーの各アプリケーション使用限界が上限4GBも、64bitt化で 16EB(エクサバイト)…160億GB…殆ど無限大ですが…、そのうちこれも上限!といわれるのでしょうか?1EBでさえ、気が遠くなるしとてもそれだ けのメモリーを買えそうもありませんがご安心を。これは「理論上」のお話しで今すぐに、というわけではなさそうです。もう一つのメリットは1クロックサイ クルに倍の命令を実行できるようになるという事です。Finder、Mail、Safari、iCal、iChat等はあらかじめ64ビットコードで書か れているために、それだけでかなりの高速化が期待できるそうです。もっともMAC版のPhotoshopは32ビットで書かれているために大きな高速化は 期待できませんが、仮想記憶の扱いはファインダー上の話ですのである程度改善される可能性はあります。
 また、インストレーション(アプリケーションのインストール)に関しては50%も高速化され、システム容量に関しては7GB以上小さくなったと言うことです。新しいシステムの容量が減ったのは初めてのことではないでしょうか?
(現実に私のシステムもスノーレパードにバージョンアップしたらば、6GBほど容量が減りました。これって今まで抱えていたPower PC用のソースコードの重さでしょうか?)
※KBの上がPBペタバイト、その上が上の文章で話題のEB。さらにこの上にZB(ゼタバイト)、そして更にYB(ヨタバイト…殆どヨタ話??)

GCD(グランドセントラルディスパッチ)

 更にGCDも最適化されました。これも「やっと」と言う感はありますが…。個々のコアの高速化に上限が見え始め、奥の手として採用されたのがマル チコアでした。しかし実測してみるとヂュアルコアで1.1〜1.2倍。クアッドコアで1.3倍、8コアでさえ1.4〜1.5倍とプロセッサの数(と値段) に全く比例しない状況でした。これは様々な問題もありますが、最も大きいのは各アプリケーションがソフト的に処理パターンを計算していたため、全体では最 適なパフォーマンスを得ることが出来なかったからだそうです。それを解決するために採用されたテクノロジーがGCDです。GCDはオペレーティングシステ ムで処理され、デュアルコアから8コアまでその数に応じて使用するコアに最適なバランスで処理を振り分けます。もちろんアプリケーションがGCDに対応し ていることが必要ですが、これまでのマルチコア対応よりも遙かい容易なはずです。何しろデータを渡す相手にGCDを指定するだけで済むのですから…。

OPEN CL

 これに関しては前回レポートしてますので省略しますが、プログラムがc言語で書かれているため、対応が比較的易しく、AMD、Intel、 NVIDIA等が支持するオープンスタンダードであること、どのアプリケーションも基本のソースコードを書き換えることなくこれらの活用が容易になったと 言います。

QuickTime X

 QuickTimeもXとなり、殆ど様々なエンコードを行うためにQuickTime Proをわざわざ購入するの必要もなくなったようです。(あたしは先日QuickTimeをProにしたばかりです…。)H.264、 AAC等の最新のフォーマットにも最適化され、上記のGCD、64Bit、OPEN CLなどの技術上で動作し動画再生に関しては最強のアプリケーションとなるでしょう。

 マイクロソフトエクスチェンジという題目は初めて聞きました。MailやiCal、Address Book等のApple社製のアプリケーションにマイクロソフト製のアプリケーションとの互換性を持たせるためのユーティリティも新たに追加されたそうで す。MACが生き残るためには結構重要なことかもしれませんね。さらにPDFオープンのパフォーマンスも改善され、テキスト選択も普通に出来るようになり ました。筆者はPDFからテキストを選択するときのあの挙動(不要なスレッドまで勝手に選択してくれる)はどうしようもないものだと思っていましたが、 OSサイドの問題だったんですね。一寸びっくりしました。

もっと詳しい情報は此方
http://www.apple.com/jp/macosx/technology/

続いて、私が一番楽しみにしていたFinal Cut Proのお話しです。

 
 
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Final Cut Pro 7

ムービーのフォーマットは各社の思惑で乱立してしまい、手が付けられない状況です。 一寸見渡してもファイルフォーマットに13種類以上、圧縮方式に8種類以上存在しています。汎用低といわれるAVIも実は「コンテナフォーマット」形式で多くの圧縮方法や複数の音声や動画をまとめることが可能なため、現実には数え切れなバリエーションが存在するそうです。

Final Cut Proはそのフォーマットの「殆どに書き出せる」ことが一つの優位性だそうです。
また、Final Cut ProはFinal Cut Studioという大きな動画アプリケーションのグループ内二ファイナルカットプロとして、存在しています。このグループにはオーディオ編集を司る Soundtrack Pro 3、2D、3Dグラフィクスを扱いアニメーションを作製する Motion 4、色調補正のColor 1.5(ベタな名前です)DVDに書き出すDVD Studio Pro 4、バッチで様々なフォーマット変換圧縮を行うCompressor 3.5、等々が含まれており、これを購入すると動画に関する殆どの必要なアプリケーションが揃うという。段取りです。

Final Cut Proが扱えるフォーマットは全部で5種類。全てProResというアップル独自のフォーマットです。実はこのフォーマットを使用出来る点もFinal Cut Proの魅力の一つです。ProResのコーディックは高品質を保ちつつ、リアルタイム編集が可能、且つ圧縮力が大きく、劣化も非常に少なく、非圧縮の ソースと見分けがつきません。(動画もJpegと同じで編集や画像処理を加えれば加えるほど、劣化していくのです)通常のMovie形式やAVIでも読み 込めますが、その場合は何かの作業をするたびにレンダリングを待つ必要があります。ProResにしておくとあとの作業が非常に高速で劣化も減るのでお進 めです。

※画像データのサンプル深度が10ビットであるため、劣化に対して耐性が高いといえるでしょう。特にグラデーション再現力に定評があります。

※動画は無数の画像の連続であるため,その容量を上手に圧縮するのは必須。そのため目的に応じた最適のサイズ、圧縮方法を選択することが重要にな る。1920×1080の画像を非圧縮で1時間分を保存すると約450GBになり、その転送速度も秒30フレームで 120MBB/sのパフォーマンスが必要になる。 ProRes 422(HQ)は1/5の90GB程度に収まり、ProRes 422(LT)の場合、およそ60GBで、1分1GB に圧縮できる。

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○ProRes 422 リアルタイム編集を可能にし、可変ビットレートを採用しているため高い圧縮率にもかかわらず小さなファイルサイズを実現しています。HD画質です。 
○ProRes 422(HQ)ターゲット・データ・レートは約 220 Mbps(1920 x 1080、60i)で、Apple ProRes 422 よりも高品質です。
○ ProRes 422(Proxy):MacBookやMacBook Proでの仮編集とオフライン編集向け。
○ProRes 422(LT):データレートは Apple ProRes 422 の約 70 パーセントで、Apple ProRes 422(Proxy)よりも高品質ファイルサイズ縮小と放送クオリティの映像が求められるニュース、スポーツ、マルチカムイベントなどのプロジェクト向 け。
○ ProRes 4444:最高の画像忠実度が要求される合成処理とデジタルワークフロー向け。αチャンネルも扱えて高品質だが、それだけに容量も増えます。

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※422とか4444などの表示は動画特有のもので、簡単に言うとチャンネルの数だと思って良さそうです。444が、RGBのフルデータを持つこと を意味し、422がYCrCbというビデオの世界で使用される信号です。YCrCbはRGBに比較してデータ量が2/3に出来るというありがたい性質があ り(人間の目の特性を生かして明るい側の輝度を重視し,それ以外は色差信号で色彩を表しています。)ビデオのフォーマットとして採用されてきたのだそうで す。Photoshopのようにアルファチャンネルを持つと 4444。CANON EOS 7Dや5Dは 420でデータを保存しています。422よりもデータを圧縮できるので最近のトレンドになっているようです。…422が色差情報を2dot分伝送し (1dotあたり16bit)420は色差情報を1dot分伝送する(1dotあたり12bit)という仕様の差がありそうです。

5Dや7Dが採用しているH.264は非常にコンパクトで、高画質なのですがをそのまま編集すると非常に不便なため、まず必要なレベルの ProResに変換することになります。ベースはProRes422(HQ)で行うのが理想のようです。どうやらこれが今後デファクトスタンダードになり そうですが、この変換が面倒くさいということがよく言われます。キープロというデバイスはいきなりProResで保存することが出来るそうです。便利です ね。

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また、パナソニックのAVC-Intraという非常に評判の良いファイルフォーマットはFinal Cut Proにネイティブで対応しているそうです。

Final Cut Proの操作は左上に素材、中央上に素材を集めて、右にプレビュー(キャンバス)、下がタイムラインという構成です。Final Cut Proは何をするアプリケーションか、というと、その名の通りの最終編集ソフトです。動画の不要部分を切り取り、必要なカット(シーン)を、様々な効果で つなぎ合わせ、音声との同期を取る。それが大きな仕事です。そのためイン点とアウト点を決めて必要な部分を切り出し、そのつなぎ目にトランジション(切り 替え効果…ディゾルブ(オーバーラップ)などは代表選手)を設定。ピクチャーインピクチャー等もタイムライン上で設定できます。静止画には存在しない「時 間軸」という問題に慣れれば、さほど難しい問題ではありません。そんなに怖がる必要は無いと思います。

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ただし、出力するフォーマットにはデバイスと転送速度に応じた様々なフォーマットが、その容量とサイズごとに存在し、それなりに学習することが必要になるようです。

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書き出しに Earsy Exportという出力を司る項目があり、ここからiPod、i Phone、AppleTV,、iTunesへの書き出し、YouTubeやMobileMeへのアップロード、DVD,Blu-rayディスクへの書き 出しなどをFinal Cut Proからは、バックグラウンドで処理が出来るようになったそうです。

以下はFinal Cut Studioに含まれるアプリケーションの紹介です。

Motion4もっとも進化したアプリケーションのようです。
新機能で
手ぶれを補正するスタビライザー
構図を微調整できるカメラフレーミング
光源を使ってDrop Shadowやリフレクション、被写界深度([ぼかし(回転))
などの効果を作製、加えることが出来ます。
まるでPhotoshopのようです。
さらにフォーカス送り効果、パラメーターリンクアニメーションのパラメーターをリンク、クレジットロール機能、グリフ調整ツール(文字単位)、不良フィルムフィルタ等の効果を装備しています。

Soundtrack Pro3は以下の編集を行えます。
音声レベル調整。
音量調整。
おまけ音源(効果音)のストレッチツール。
ファイルエディタの改良。
ノイズ削除。
トラックが複数にわたる音声データの編集。

Color it Final Cut Proでは編集できない全体の色調の統合、あるいは強調を行います。色補正とカラーグレーディングの差、ホワイトバランスの崩れの補正を来ないます。個々のシーンに適切な色を作るクリエイティブにも使用されるそうです。

ProResへの変換はメディアマネージャーを使って同時進行で再圧縮できます。

コンプレッサー は作製した動画データを圧縮をして各メディアに渡す仕事を行います。ドロップレットの改良、パラメーターの自動設定により複数のフォーマットへの変換と書きだしも可能となりました。
複数のデータを同時に書き出すことも可能。特にQmasterを仕様することで8コアを十分に活用できるようです。(さすがに自社の製品をよく知っています)このデモンストレーションは圧巻でした。

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iChatでファイナルカットプロ編集を飛ばして遠隔地から判断を仰ぐようなデモも行われました。まるでPhotoshopの編集を遠隔で見ているようです。でもクライアントさんにいろいろ言われそうで一寸いやかな?

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最後にフローチャートを示してくれ、というリクエストがあり、入力にはどのようなもが存在しているか、その理由、そして編集中のフォーマットの意味、デバイスによって出力するフォーマットやサイズが多様に存在すること、その理由と今後の方向性まで示してくださいました。

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吉田博行さんから株式会社tooの事業展開のお話しがありました。私たちはソフトウエアTooはよく知っていますが,元々が画材を扱っていた「いず みや」さんがデジタル時代に対応し変化してきたお店です。私は画学生時代からお世話になっていました。カタログの中に「ぺこぺこ」や「ソルベックス」など がまだ存在していたことが妙に嬉しかったものです。

 
 
第二部 「Digital Video Expo in Los Angels/Pasadenaレポート&最新動画動向予想」
DVJ BUZZ TV 編成局長 石川 幸宏様
 
 
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石川様は初めてお会いする方でした。DVジャパンの編集長だったそうですが、今年の春にめでたく?廃刊になったそうです。その時代のつながりでライター業をしているそうで、前のセミナーをされた櫻井様も石川様のお話を聞きたがっておりました。

まず、最初にDigital Video Expo in Los Angelsのレポートです。
ハリウッドでの現在の業務用ムービーカメラの動向として存在感が大きいのがやはりCANON EOS 5D Mark IIで、その存在感は圧倒的だそうです。リーマンショック後のダウンサイジングも追い風になり、制作費は驚くほど引き下げられたと言うことです。それもあ り、HD・SLRとして今までにない「“ぼけ”味の素晴らしい」「フィックスで撮影しているときの絵が綺麗な」カメラとして認識されていると言うことで す。

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また、レッドロックマイクロ社のパーツをはじめ、多くのアダプター(ムービーカメラとして使いやすくするための)が注目を集めていたそうです。第1 部のテーマであったFinal Cut Proは全世界48%シェア。ムービーを扱うのであれば、まずFinal Cut Proを覚えておこうという感じで、このセミナーでもFinal Cut Proのセミナーはとても人気があったそうです。会場内のセッションでもムービーとスチールカメラマンの差はもうあまり無く、日曜大工感覚で新しいものに 対応してくことが重要だと言われていたそうです。なぜなら、ライティングが映画の「きも」であり、スチールカメラマンは監督とライトマンの両方を兼ねるこ とが出来るからだとも言われました。

RED ONEという4Kの画像(映画館で上映されるような画像)を撮れるデジタルムービーカメラの紹介もありました。

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CINE EXSPOという催し物があり、去年はユニバーサル、その前はMGM 映画系の展示会 今年はパラマウント映画のスタジオセット内、という面白そうな所で展示会を行うのだそうです。ここでも5Dが開拓した世界が主流だったそうです。 

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石川様も、光を読めるスチールカメラマンにどんどん、動画の世界に踏み行ってきてほしいというお話しで締めくられました。

 
 
第三部 「恒例・良いもの・こと探し」参加者全員
 
 

6年ぶりにキャノンマウントのカメラを購入したこと。それはCANON EOS 7D。発売日の翌日だったが、もう一人の運営委員、菊池君も同様に購入したそうです。実は二人ともスチール写真はニコンばかり使っていた人間です。こんなのも「良いこと」では??

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RED ONEを実際に使用して撮影した感想をお話しされた参加者もいます。一寸うらやましいお話しです。

 
 
第4部「秋の最新デジタルカメラ情報」
電塾運営委員 山田久美夫
 
 
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今回は数台のコンシューマー機を含んだデジタルカメラのインプレッションをお話ししてくださいました。その中でもやはり目玉はCANON EOS 7Dです。発売日の翌日の開催にもかかわらず、運営委員でも二人ほどさっそく購入した人間がいます。(実は私もその一人)使い勝手は5Dから大幅にアップ しているそうです。筆者も感じましたが、合焦スピードの高速化、正確さは見事だと感じました。さすがにF5.6対応のクロスセンサーを大量に導入しただけ のことはあります。

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例によって山田氏のお話しは「オフレコ」物が多く、詳しくレポートするわけには行きません。聞きたかったら、是非会場にいらしてください。

 
 
今月の二枚
 
 
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アジャンターの石窟寺院を記録撮影する旅から帰ってきたばかりの早川廣行氏。一寸やせました??

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「フォトのつばさPro」の作者陳さん。久しぶりにお元気な顔を出してくれました。「フォトのつばさPro」の新機種対応も動き出したようです。私を含めて、ほっとする人たちが多いのではないでしょうか。

文: 鹿野 宏

 
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