電塾2009年5月2日定例勉強会レポート
 
 
…今、パノラマフォトが面白い!…
2009年5月2日 有明スポーツセンター6階会議場
 
 
第一部「恒例 良いもの・良いこと探し」 参加者全員
 
 

第一部の「恒例 良いもの・良いこと探し」、かなり皆習熟してきたみたいで、見事な時間で収まるようになったようです。それでも自分に良いこと、皆によいことを探すのは大変。アメリカ発の金融危機で一時期の「大恐慌がくるんじゃないか?」ショックは結構収まってきたような気もします。でも何でこんな時期にA型インフルエンザなんでしょうね。わたしもみんなに自慢できるような良いものをもっと、毎日探していきたいと思います。

 
 
第2部「今、パノラマフォトが面白い!」…360°パノラマフォト実演解説…
電塾会員 谷口写真事務所代表 谷口とものり
 
 

 パノラマフォト。今更…。そう、Photoshop CS3からパノラマ合成は見事になり、CS4においては写真さえ並べて撮影すれば、誰でも、三脚無しで、プリグラムオートで見事なパノラマ写真を撮影することができるようになってしまった今なぜこのテーマなのでしょう?。今更何でパノラマ?と思ったのは私だけではないでしょう。

もちろんPhotoshop CS4でもやろうと思えば可能な事ですが、それをシステムとして作ってしまおうというものです。ただのパノラマではありません。360°のパノラマ。しかも天井も地面も写された完全につながった画像でWEBブラウザで見ることができるのが、何とも便利です。(クイックタイムの方がもっと綺麗だけど)

百聞は一見にしかず!。何はともあれ、会場で実際に撮影したものがあるので、是非見てください。通常のブラウザで確認することができます。

電塾会場風景360°パノラマ

操作は簡単で、前後、上下はスクロールすればいいし、フルスクリーンにしてしまったら、ESCキーで元に戻れます。

どうですか?中にはすでに気がついた方もいらっしゃるでしょうけど、数人の運営委員にはURLのリンクが張られています。このリンクをクリックすることで、彼らのサイトに飛んでいくことができ、その画質はかなりのレベルまで持ち上げられています。

どんな応用が考えられるでしょうか? 美術館。博物館は当たり前ですね。マンションのモデルルームはいかがでしょう? 車内設備や病院などの公共施設、設備。観光地のビッグポイントなどもこの手を使えるでしょうねえ。

なんと、この画像はたった6枚の画像で作られているのです。(実際には地面が難しく、複数枚の画像を撮影されていましたが)さてさて、電塾内ではどうやったら、この画像を作製できるのかを、細部にわたって解説されました。今回のセミナーを聞いた方々は、これで新しい分野のお仕事をさっそく開拓できるのではないでしょうか?私も作ってみたくなりました。さて、何を題材にサンプルを作りましょうか??もちろん来月の電塾にはそのサンプルを持ってお伺いしたいと思っています!。

 
 
第3部「光ディスクの保存性・安全性について」
株式会社スタート・ラボ 企画統括部 小林 貴様
 
 

スタート・ラボってあまり聞いたことのない方が多いでしょう。もちろん私も初耳です。実はCD-Rの規格設定に伴い、規格に関するノウハウ、特許を持ったソニーとその製造技術を持った太陽誘電の販売チャンネルとして1989年に設立された合弁会社なのだそうです。

光ディスクの規格は厚さ1.2mm、化学変化で焼くか焼かないかがゼロ or1として記録されるのがその概要で、そこにどのような化学材料を使用するかは、メーカー任せ。結果的に規格を満たせばいいのだそうです。そういえば数年前にも太陽誘電の方に電塾で講演をお願いしたことがありました。そのときにもずいぶんと感銘を受けた記憶があります。

お話しはハードディスクの磁気による記録方式、メモリーカードに代表されるシリコンディスクの違いから、それぞれのメリット、デメリットを解説され、ダブルバックアップの必要性を強調されておりました。

また、DVDの規格には複数の種類が存在し、現在は5種類のフォーマットになっているそうです。ややこしいですね。+とーは材料が異なる。RとRWは一回の記録か、上書きできるかの差だそうです。 RAMも上書きできますね。CDはRとRWしか無く、わかりやすかったのです。メーカー同士のいろいろな思惑でこうなってしまったようですが、これに懲りてBDもRとREの2タイプに統合されるようです。というか、ユーザーからすれば当然。いい加減にしろよ!ですね。

思わぬ豆知識もありました。よく、データ用と録画用のDVDがありますが、その差をご存じでした?機能や品質に差は全くなく、単に録画用というのは私的録画保証金が含まれているだけなのだそうです。自分が作製したデータなどはデータ用に。TVやインターネットなどから記録したものは録画用(あるいは録音用)のディスクを使いましょう。実は私もこの区別がつけられなくてずっと悩んでいました。コンビニなどでは録画用のものしか置いていないのですね。更にパッケージの読み方に関するレクチャーもありました。今まで、良くわかんないまま、過ごしてきた私も、これからはきっちり必要な条件をパッケージから読み取り、適切に活用できるでしょう。

その後、太陽誘電のトリプルガードの機能のデモがありました。デモといってもただやってみせるのではなく、実際に全員に2種類のメディアを配り、マジックで書いたり、金だわしでこすったりするハードなデモで、全員から驚きの声が上がっていました。これは楽しかった。こんなデモなら、寝ている暇がありません。

更に寿命格差に関する実証実験の結果も報告されましたが、これには多くの方々から質問が出ていました。皆さん、一番気になるところなのですね。更に、ドライブとの相性問題についても言及され、これまで「何となく」感じていた相性問題とは、「これだったのか!」とびっくり。なんと「ライトステラジー」というドライブのレーザー出力の最適化を行うために、あらかじめメデイアメーカーは、「うちの最適出力はこれですよ」という情報を、ドライブメーカーに与えているのです。その情報が無い場合はいわゆる「スタンダード」で対応し、これに外れると「相性が悪い」と言うことになってしまうのだそうです。ああ〜、なるほどね!

聞いていて楽しく、ためになるデモはあっという間に終了し、最後にDVD-R For MASTERのお話し。もちろんこれは機能や能力は一般のものと同じ。ただし、初期ロットの金型から作られたもので、エラーレートが低く、メディア特性が高いのだそうだ。(私の理解が間違っている可能性はあります)記録面には保護シートが貼られており、使用するときに初めて露出するようになっているのだそうです。これは音源や画像をマスターとして[保存]するために作られたもので、その道のプロたちには好んで使用されているようです。(値段は張るそうです…確認していませんが)

実はそれ、1枚いただきました。私だけでなく、他にも5名ほど。楽しく、有益な、しかも実利もある講演をありがとうございました。

 
 
第4部「最新小型ストロボとバッテリー」
ニッシンジャパン株式会社 営業部 國頭公之様
 
 

こちらもあまり耳慣れないメーカーさんです。実はストロボのOEMメーカとしての歴史は長く、自社製品がほとんど日本で発売されていなかったためです。

クリップオンタイプの外部ストロボが中心のメーカーですが、特筆することは新製品のDi866はニコンやキヤノン製のリモートTTLに完全対応している事です。実は私もニコンのワイアレスTTLを良く仕事で使っているのです。でも、それにはまだまだ使い勝手の悪さ、値段の高さも同居しており(もちろん、基本的に便利で有効だから使っているのですよ)同じ機能が使えて希望小売価格が5万円以下、というのも嬉しい設定です。(5月末の発売)


ワイアレスTTLに対応し、マスターとリモートに互換製があるのが新しい特徴で、従来品にはMyTTLという調光レベルの基本設定をカスタマイズ可能なモードが搭載されています。気になるリサイクリングタイムは電池で通常3.5秒、フルチャージで5.5秒。普通のスピードと言っていいでしょう。一番感心したのはバッテリーホルダーが共用で用意されていることです。現場で使用しいるときに、一番気になるのがバッテリー交換。スタンド、アンブレラを取り付けた状態でのクリップオンストロボのバッテリー交換はむちゃくちゃ面倒なのです。(もちろん、そのような状況まで想定して作ってはいないのでしょうが)でもこれなら、マガジン交換一発です。これには惚れ込みそうです。

できれば、全方位に赤外線信号を送れるような仕組みを持った、マスターとしての用途を第一義に考えた軽くて取り回しのいいストロボを作ってくれると嬉しいですね。カメラのホットシューに取り付けて使用する場合、軽いことは大きな条件ですから。

そのほかの特徴としてはUSBでファームアップ可能(サードパーティとしては、重要)、この手の製品としては珍しくストロボの色温度を公表しています。 5600Kelvinだそうです。個人的には5,200ケルビン程度が嬉しいのですが…。もちろんシリーズ方式ですので出力差での変化はあり、出力を絞ると色温度は上がります。質問の中でも放電管の寿命に関するお話しがありましたが、基本的には10万回発光が目安、ということでした。(どうやったら10万回数えることができるのだろう?)

更に充電式の外部電源、パワーパックプロ300のデモもありました、Di866で0.7秒ニコン系やキャノン系は0.5秒でチャージするそうです。あまりに早すぎて使いすぎると、ストロボが高熱で安全装置が働いてしまうそうです。
元メーカーの端子付なので、アダプターの必要が無く、アクセサリーとして現状のシステムに参入できるのが強みだそうです。ラジコン、モデルガンなどに使用されている充電池パックを使用しあまりにパワーが強いので安全装置が二重についているそうです。また、2系統のストロボに同時にチャージできるのも強みだとか。

特にロケで多用されていたナショP用の積層電池の販売が終了した今、今までの機材の寿命を延ばすためにも有用な製品化だといえるでしょう。実際、ニコンモデルをお借りして使用しましたが、クリップオンストロボと思えないチャージタイムでした。

有効に電力をコントロールしているので最後まであまりチャージタイムの変化無く使えるのが魅力です。その代わり急に使えなくなるというデメリットも発生します。難しいところですね。

最後にどのメーカーでも使える延長TTLシューの紹介がありましたが、玉内運営委員がお持ちらしく、早速質問をされていました。

 
 
第5部「春の最新デジタルカメラ情報」
電塾運営委員 山田久美夫
 
 

第5部はSpyderCUBEで始まりました。これについてのレポートは電塾のレポートにも上がっておりますので、そちらを参照してください。

前回に引き続いてソニーサイバーショットDSC=HX1の紹介です。900万画素 秒30コマの能力を持ったCMOS ですが、あえてそこを10コマとしています。実はレンズシャッターを搭載したためで、そのままでは像が流れてしまう現象を嫌った結果だと言うことです。

元々28ミリからのズームレンズですが、スイングすることで14mm相当にまで拡大できる…これは前回もレポートしました。

面白いのは6枚露光してシャドウ部を見事に描写する機能です。ノイズが減るだけでなく、解像感もむちゃくちゃアップします。つまり上下左右のパノラマだけでなく、レイヤードしてダイナミックレンジと解像感を拡張する事ができるのです。そのサンプル画像にはびっくりです。(もっとも仕様上、動くものには対応できませんが…)

更に6枚撮影して、人物は、一番いいカット1カットだけ使用して、その周りを合成する…。これまで私たちが一日かかって作業してきたようなこともあっという間に処理してしまいます。

問題はメディアがメモリースティックッてところかしら??

次に紹介されたのがオリンパスE-620。さすがフォーサーズ。小さく見事にまとまっていますね。作り全体のバランスも非常に良くできているそうです。逆にバランスが良すぎて特徴が少ないとか…。

パナソニックGH-1は新しいイメージセンサーを搭載し、感度1600までは十分にいけるそうです。
また、動画のシャッタースピードを変化させる事も可能。これも基本機能が高いコンシューマ機だといえますね。

キヤノンEOS X3はこれも非常に良くできたカメラだそうです。きわめて平均値が高いので、あえて悪いところを探すと、ハイビジョン20フレームしか設定がない。AVC-HDが無い。14ー140動画対応レンズが無い。となるそうです。逆にすごいところは15メガでISO12800を実現。(お仕事で使えるレベルとは思わないように)個人差はあるものの、3200で結構使えるといいます。周辺光量落ちを自動補正するなどのメリットも紹介していました。

 
 
午前の部 デジタルフォト入門講座2009年第3回
新しいカラーマネージメントを理解するための今すぐ役立つ色彩の基礎知識 CMS研究家 村上章
 
 

光と色について考えるときに役立つ知識として最初に触れたのは光源についてでした。

色と電磁波の関係、光源と色温度の関連にもふれ、なぜ自然光と人工光の見え方に差があるのか、などにも触れて行かれました。さらに光は光源だけでは成立せず、光源色、物体色がからみあい、そこに目の特性が個々に加味されます。やはり一筋縄ではいけないようです。

演色性とその評価についてもお話しがありました。白熱電球は演色性が100ですが、きわめて色温度が低い。蛍光灯で96程度が限界のようです。

演色性に関連して光源が与える影響として光源が白を造るというお話しもありました。

そして、通常使われているホワイトバランスとグレイバランスの意味の差(元々ごっちゃに使われていたのが今ではホワイトバランスは白色点を指し、グレイバランスは明度ごとの色相のずれを刺すようになったと言われます)。また、三原色(RGB)と心理4原色(RGBY)というとらえ方があり、この心理4原色がLab色差の考え方の基本だというお話しもありました。

その後。色混合の原理、色度図の考え方、CIE L*a*b*色空間、色の再現性、環境条件と色管理、色覚作用と色の弁別、色の認識と色覚、目の構造、人間の色感覚、目ためリズムとアイソメリズム、色順応性と色恒常性、あたらしい色差の観念、新しい色差の実施例、イメージセンサの構造、CSMの定義と本質と必要性、CMSの概念、ICCプロファイル、レンダリングインテント、最後に理想的なCMSという膨大パネルを用いた講演でした。

通常カラーマネージメントを語る場合、多くはこのようなことは省いて語られます。だって本気で学習するとなると、きっと1年間のプログラムになってしまうほどの内容なのですから。これらとはまた違った観点で科学の基本から光と色と諧調をとらえる知識を得ることができる貴重な機会でした

村上さま、ありがとうございました。

 
 
今月の一枚目
 
 

このセッションの後にDVD-R20枚パックがサンプルとして全員に配られ、更に 希望者にはもう1パックが追加されました。ひょっとしたら、これだけでも参加費の元を取ってし待った方も多いのではないでしょうか?私は更にマスターバージョンまでいただいてしまいました。太っ腹な会社です。

文: 鹿野 宏