電塾 2008年10月定例勉強会レポート
 
 
『フォトキナ2008レポート』
 
 
第一部 恒例 自己紹介と良いこと探し 参加者全員
 
 

定例勉強会は10月4日第一土曜日、有明のABCスタジオ特設会議室にて開催致しました。

午前は「デジタルフォト入門講座2008年版第8回」山田久美夫さんの担当です。
本編でも『フォトキナ2008レポート』というタイトルでフォトキナで発表された製品の全貌を、午前に引き続いて山田久美夫さんが、金田秀樹、永嶋サトシ両氏のサポートで報告いたしました。

さて、先月から始まった良いこと捜しに変更した自己紹介のパートですが、参加者の多くが身近な良いことを披露していただきました。

ニュースを見れば連日景気の悪い話、身の危険を感じながら食事をする毎日だったりしますが、多くを望まなければ、身近に幸せは感じられます。仕事柄、上を目指したり、多くを望んだりする業界ですが、ゆったりとした気持ちになることも大切な習慣ですね。

 
 
第二部 「フォトキナ2008レポート前編」
電塾運営委員 山田久美夫、金田秀樹、永嶋サトシ
 
 

まずは金田さんのご報告から。

とにかく会場が広いのは例年通り。そこを端から端まで歩くのは並大抵のことではないというお話から。持って行ったニコンD80の電池がなくなって大変だったりしている横を山田さんが軽快に歩いていったそうです。

まずはライカS2。新型のカメラなのになぜ2型なのか?古くからのデジタルフォトマニアの方はご存じの方も多い、スキャナータイプのS1が存在していたので今回2という名前になったと言うことです。

バックタイプ業界は去年から再編の波に飲まれています。イマコン、ハッセル陣営から始まった波は、マミヤ、Phase Oneの提携。そして先日はジナーとリーフの戦略的提携も発表されました。今回のライカS2ではPhase Oneと提携となり、ライカの中判デジタルはPhase Oneが扱うかもしれないとのことでした。

そのPhase Oneですが、満を持してC1プロがバージョンアップされます。4.5となるC1Proですが、10月15日に英語版が発売されます。 
新型のデジタルバックではP65+です。6000万画素という途方もない画像が撮れるものですが、そこまでの高画素が必要ない普段の仕事でも扱いやすいRAWデータで撮れるSensor+という機能があります。キヤノンのsRAWのような画素数の小さいデータ、1/4の画像を作れるものです。コダックセンサーと言われています。
Phase Oneからはシフトレンズ(東ドイツ製)の展示もありました。

リーフからはAFi10の展示。ユニークな点はWIFIでサーバー経由でiPhoneで画像を見られるそうです。ただし、パソコンに接続時なのでP to Pのように直接転送ではないのが残念なところです。

ジナー、リーフと戦略的提携の発表もあり、今後の動向がどうなるのか?興味の尽きないところですが、、一説では5000万画素以上をジナー、それ以下のモデルをリーフが担当か?とも言われています。

ハッセルではシフトアダプター 1.5の実機の展示です。H3Dの液晶にあおり量を表示できるそうで、面白い展開が期待できそうです。

マミヤからは645の縦位置グリップとレンズシャッター搭載のレンズ。 
アルカスイスからはMライン。スライディングアダプターでレボルビング出来るものが付いているそうです。

ストロボ関係ではバルカーから新型ヘッド。角形のジャックを採用しているそうです。 
ブロンカラーは50周年記念モデルと新型ジェネレーターの発表。現行グラフィットの上の機種になるそうです。
プロフォトからはプロ8の展示。日本でも使用可能なラジオスレーブを内蔵している点と5w/sまで下げられる点が素晴らしいですね。

そのほか、いろいろな新しい機材のご紹介をしていただきました。

 
 
第三部 「フォトキナ2008レポート後編」
電塾運営委員 山田久美夫、金田秀樹、永嶋サトシ
 
 

本日、2回目の登場、山田さんのレポートです。

まずはフォトキナの概要から。

東京で春に開催されるPIEの9倍の展示面積、と言えばだいたいの規模は想像できるでしょう。
今年は9月23〜28日。基本的にはビジネスショウですが、週末には一般客も多いそうです。
165000人の来場者を誇り、その4割は海外からだそうです。

最初はライカから。その展示には写真文化を感じたそうで、新型 S2が展示の中心です。十分なレンズラインナップ、さらにシフトレンズもあり、 WIFIユニットがストラップ部分に付いたり、ケーブルの取り付けもガッチリとしているとのことでした。
気になる値段は未定。予想では高級車メルセデスCクラス1台分か?
他にM8.2。M8のマイナーチェンジでシャッター音がよくなったそうです。
また、山田さんが気になったのはライカのプロジェクター。静止画で相当きれいだったと言うことで、レンズはライカ、本体はOEMとのことでした。

カールツァイスはライカの隣にブースを構えていました。 
planner50ミリf1.4のEOSマウント、コレが話題です。フォーカスエイドは効きますが、コンタックス時代のレンズ設計なので、、、、近日中に日本でも発売予定です。

今回のフォトキナの目玉 マイクロフォーサーズを前面に出しているのはパナソニック。センサーが小さい割にフランジバックが長かったフォーサーズのフランジバックを半分20ミリにしたもので、マウント径も6ミリ小型化されています。
G1はパナソニック独自の設計です。フォーサーズ時代はオリンパスの設計によるミラーボックスなどを搭載していましたが、今回はすべてパナソニック製です。


大きさは女性が持つとちょうどいいサイズ。
パナソニックのブースは他メーカーと比較しても大きいがその半分はG1に割かれていたということで、その力の入れようが分かるでしょう。
パナソニックは光学式手ぶれ補正を採用しています。動画はセンサーシフト方式のブレ補正は出来ないので、将来的な展開も視野に入れた設計と言うことが分かります。
マイクロフォーサーズはそのフランジバックの小ささから超広角レンズでも小型化可能になります。
G1赤ボディが人気だったそうです。

オリンパスではマイクロフォーサーズのコンパクト機を展示。
HOYA・ペンタックスからはK-m。小型の一眼レフです。

キヤノンは一番の賑わいで巨大なブース全部が展示スペースです。
当然5Dmk2が一番人気。今回は各社フルサイズが出そろった感がありどこでもフルサイズが人気だったそうです。
ここで山田さんの面白いお話。デジック4ハイビジョンは違う形式でスチル情報(毎秒30コマの静止画)を寄せ集めたムービーと言えます。だからスチルの切り出しが出来るのです。スチルの超高速連射を動画として見せていると言っても良いわけで、そこから見える未来は?・・・

また、キヤノンのプロジェクターがフルハイビジョン対応になったと言うことですが、印象的にはライカのプロジェクターの方が若干きれいか??
 
ソニーはα900が話題です。実際にお使いだそうですが、非常にいいという印象だそうで、高感度でもそこそこ使えるノイズ感と、見やすいファインダー(倍率が高いがいい感じ)、唯一ライブビューが出来ないが残念ということでした。

シグマはDP2です。レンズが40ミリになりました。 
SD15はDSPが新型になりましたが、どちらも外観はほとんど変更なし。

タムロンからは18−270mmIS付。ブースでは、毎回恒例となっている、日本人プレス向けのカレーやラーメンが用意されており、遠い異国の地で朝から晩まで動き詰めの疲れた体には、たいへんうれしいというお話です。 
トキナーからは16.5〜135mm。
ケンコーからはバリアブルNDとスポットメーター。

面白いのはレンズベビーの新型。

それからフジの3Dカメラ。これは背面液晶がすでに立体画ということです。これからはフォトフレームなどソリューション込みで展開していくか?まだまだ未完成だが楽しい分野というお話。
 
コダックからは有機EL使用のフォトフレーム。WIFI内蔵です。
ナナオからはフレックススキャンでハードウェアキャリブレーション可能のモデル。6500k ガンマ2.2のみという設定ですが、廉価モデルでのハードウェア・キャリブレーションは新しい展開です。当座の対応機種は3種類のみで近い時期に発売されそうです。

他にアルチザンアーティストからおしゃれなストラップやケースなどが楽しかったそうです。

 
 
午前の部「デジタルフォト入門講座2008年版第8回」
山田久美夫運営委員
 
 

午前中の部は「デジタルフォト入門講座2008年版第8回」山田久美夫運営委員が担当いたしました。題して「山田久美夫のデジタルワークフロー」超個人的なもの。大目に見てね、と言う副題と表しているところが山田さんらしい。
この時間では山田さんのお仕事の一部であるdigitalcamera.jpを参考にして、そのリアルなデジタル・ワーク・フローをご紹介いただきました。
まずは山田さんの履歴紹介から。

知っているようで知らないことなのですが、、、18歳でフリーになってからキャリア30年!カメラ雑誌の執筆だけでも25年のキャリアがあります。digitalcamera.jpも立ち上げてから今年で9年目になるそうです。
デジタル化は自分の作品作りのために取り入れたのが最初です。フィルムスキャンからデジタル化、そして画像処理をした作品作り。
94年頃から仕事でもデジタルを使い始めたそうで、クイックテイクなんかもお使いになっていたとのこと。95年以降、100%デジタルになったそうです。
デジタルのメリットとして、
1:通信で画像を送れる 
2:ランニングコストを抑える 
3:撮影時のミスの減少
山田さんは大きくこの3点が挙げています。
特に雑誌仕事に向いているのがデジタルカメラです。雑誌の世界では経費節減が以前から掲げられていました。末端のカメラマンにとっては経費もギャラに含まれる仕事も多いため、ランニングコスト抜群のデジタルカメラは向いていたのです。

また、取材系の 仕事では予想の出来ないことが往々にして起こります。そういう現場に対応しやすいのもデジタルカメラの特性です。
さらに撮影時に画像確認できる安心感、一度それを経験してしまうと、、、条件が悪ければ悪いほど、その恩恵は測りしれません。
web仕事はスピードが勝負です。今となっては画像を通信で送るのは当たり前。しかも最大でもXGA程度の画像ですからモバイルでの通信でも大丈夫です。
このウェブ・ジャンルのお仕事は画質よりも画像としての情報が優先される世界です。コマーシャルとは違う世界です。その環境下で重要なのは「適度な品質を短時間で大量に」ということだと山田さんは言います。
また、今となってはその現場に行かなくても情報は入ってくる時代になりましたが、山田さんが常に重視しているのは、「百聞は一見にしかず」を実践することだと言います。特に写真は現場でしか撮れないメディアです。仕事人として現場にいることが何よりも大切であり、伝聞情報では分からない何かが必ずそこにはあるそうです。発見は必ずある、と言い切ります。それを伝えるのが山田さんなのです。

さて、ここからはdigitalcamera.jpを参考にしての具体的な方法論を語ってくれました。

取材用機材は100%コンパクトデジタルカメラを使い、JPEG(FINE)で撮影しています。
なぜコンパクト機か?一眼レフタイプではないのか?・・・それは必要十分だからと言います。多くのプロカメラマンはコンパクトカメラを馬鹿にしがちです。>僕を含めてですが。山田さんは言います。「カメラは信用して使えば必ず答えてくれる、コンパクトカメラを見直してくれるとうれしい」
コンパクトデジタルカメラのメリットには簡単にクローズアップが出来る点も大きいことです。。
さらに簡単に超望遠ができること。これらを35一眼レフタイプでやろうと思ったら、、
山田さんならではの撮り方としては被写体(カメラ)を持ちながら片手で撮れる点も大きなメリットです。
また、記者会見などではアングルの自由度が高いことも有利です。片手で頭の上に手を伸ばして、その上、水平が出るようにフレーミングをする、、一眼レフタイプではとてもとても。
CCDが小さいというメリットもあります。被写界深度が広いのは取材系では圧倒的に有利です。山田さんは最近フォーサーズを便利に使っているそうです。
他にもホワイトバランスを確認しながら撮影できることも便利ですね。
山田さんの撮り方は、撮影以前で出来るだけのことをやることで、JPEGでも十分な画質になるように撮影しているそうです。
後処理しなくてもきれいな絵作りは、結果的にはトータルの作業時間を短縮できることになります。

以下、具体的な機材とノウハウを披露していただきました。


取材ではノートPCとカメラを一緒に持ち歩く
万が一のために予備のPCを必ず持って行く。海外取材の場合は合計3台持って行く。
イベントの時は軽量な機材が重要
通信手段の確保。
国内ではイーモバイルとPHS
海外取材ではモデム機能は必要 音響カプラーの利用 電源アダプタは2個 ISDN回線ではカプラーも必要 それとモデムチェッカー。
取材用のカメラはその時点で一番信用のおけるカメラを使用。
今はパナソニックルミックスFZ28
サブはパナソニックルミックスLX3 キャノンイクシー920
印刷原稿で使う可能性がある時はデジタル一眼を使う場合もある。
取材用はキヤノンキスX2 EF17-85 感度1600でJPEG。

パノラマ写真はジャングルのソフトを使用している。
撮影時ホワイトバランスはオート
PCはウィンドウズがメイン。シンクパッドX61を使用。
取材先ではノートPCで画像補整をするのは当たり前
液晶のカラーマネージメントは「よい加減」に。
ウェブでは9300ケルビンの色温度液晶で閲覧している人が大半であること。さらにタグを読まないブラウザーがほとんどであること、以上を考慮して 自分の液晶は6500よりも若干高めの設定にしていて、画像データは当然sRGBを使用している。それ以外はだめ。
基本的なフローはJPEG撮影して、フォトの翼で確認、Able CVで整理、
画像調整はシルキーピックスのマリンフォトグラフィーを使用。
(JPEGを調整するのにはこれが一番きれいだと思う)
AbleCVでリネーム HTML化。縮小処理はOPTIXWEBDesignerを利用(縮小がきれいで減色処理でファイルを縮小する)
ホームページビルダーで編集・・・


と、ご自身のフローを惜しげもなく披露していただきました。日々更新中のdigitalcamera.jpです。その裏にはこんな工夫が、と言う驚きが会場を包みました。とかく「モニターキャリブレーションが〜、色域が〜」とかの話に終始する勉強会ですが、杓子定規な理論と日々進行していく実際の仕事との間にはギャップがあります。

正しい理論も押さえながら、では自分の仕事ではどうするか?その見本を見せていただいた気がいたします。

さて、最後に写真家山田久美夫としてのライフワーク用機材も紹介していただきました。
カメラはキヤノン1Dsmk3、ソフトはLightroom フォトショップ シルキーピックスで、カラースペースはAdobeRGB、と王道の選択。

会場からの質問で、海外での撮影の場合、カメラの設定時刻はどうしているか?の問いでは、日本時間で撮影しているとのことでした。 自分の中では日本時間で常に計算しているそうです。

次の質問ではやはり海外へ行く場合、飛行機に積める荷物は 20キロですが、カメラ機材、パソコンなどで簡単にオーバーしてしまいます。その対策は?と言う問いでは、まず、機材は手持ちで機内持ち込みにしていること。預ける荷物はスターアライアンスゴールドメンバーなので30キロまで無料になるので、それを利用しているとのことでした。

時間があれば海外ロケでの工夫をもう少し聞きたいところで、午前の部は終了いたしました。

 
 
今月の一枚
 
 

いよいよ電塾も実りの季節を迎えたようです。

文: 湯浅 立志