電塾 2008年7月定例勉強会レポート
 
 
…最新中判デジタルカメラ…
 
 
第1部 自己紹介&自己主張の時間 参加者全員
&臨時プログラム『HP RGB LED バックライトディスプレイ』のご紹介
 
 

今月はつくばエキスプレスを利用して、勉強会へ!
実はこの日の前日に水戸で刃物を持った男が、中学生を斬りつける、通り魔事件が発生しました。あまりにも事件だらけの毎日。つい、秋葉原の事件も忘れておりましたが、駅からUDXまで行く際、なんだか早歩きしながら、そしてチラチラ後ろを見ながら、UDXの自動ドアをくぐるまで、落ち着いていられませんでした。普通は、萌え〜な女の子を見物しながら呑気に歩いていたのですが、当日の秋葉原は、道中異様な数の警官の多さに、気持ち悪ささえ感じてしまいました。
ということで、7月の勉強会は秋葉原はUDX9F、IOデータにて開催されました。

自己紹介の時間に聞いたお話!皆さんおなじみのマクベスチャート、下の画像を見てください。右下にあるロゴ、XRight!しかも、チャートの黒い枠、以前はボール紙みたいなものでしたが、樹脂に変わっているんです!随分発色も変わってました。これ2003年から変わっているそうです。知ってました?!

さて、この日の午前の部は電塾運営委員永嶋さんが担当されました。
前日の夜から徹夜して作ったというレジメは「Macintosh The History」
なんだか、マニアックそうな話になりそうなレジメだな〜と思ったら、やっぱりマニアック話でした。例えばですね、「スティーブジョブスとアランプロストの誕生日は同じだ」とか・・・(笑)
永嶋さんは、マッキントッシュに愛すら感じる内容でした。マッキントッシュの歴史と永嶋さんが思うマッキントッシュの可愛らしさ、そしてLepordの新機能のお話をされました。

下の写真は、自己紹介の余った時間で、山田さんからのニコンD700のお話、それから日本ヒューレットパッカード、ワークステーションマーケティング、加賀谷泰子様から「DreamColor LP 2480zx Display」のご紹介をしていただきました。

D700、もうみなさん購入しました?私はというと、まだです・・・うちは写真店をしている関係で、注文した新商品がいつも発売日には数台届くのですが、基本的にお客様優先。D3の時も結局お客様の手に先に行き私の手には届かず、数週間経つと、購入意欲の熱が冷めてしまいます。今回のD700も同じで、自分の数を含めた発注をしても、数が届かないとなんだか熱が冷めてきてしまいます。私は写真を撮ることがお仕事なので、みなさんも同じでしょうが、仕事量と機材への投資のバランスを考えてしまいます。フルサイズの利点は??流石に、分かるようになっては来ましたが、簡単なとこで言うと、広角が必要な場合は最近、Nikkor14−24mmのレンズをDXフォーマットに付けると歪みが殆どなく、フォトショップでフォトマージ。9割は10枚近くの合成が簡単です。残りの1割だって、簡単な修正で済みます(保険で、シグマの10-20mmで押さえますが…)それ以外で言うと、全て単焦点レンズを使用してます。ズームレンズも、割と所有している方ですが、使うのは月に1回?!なぜって、電塾に通って、いろいろ知ってしまうと、やはり使えないものです(勿論自分の判断でも・・・)
今月の勉強会のお題目である、中判デジタル!私的には、FXでなく、購入するならこっちなんですよね。個人的な意見ですが、1眼デジカメではDXもFXもそんなに画的な開きを感じません。それは、やはりまだまだ知らないことだらけですが、プロバックの画の良さを知ってしまったから・・・
D700を発売前に触れたことによりうちのお店のお客樣方に言ったことは、買った方が良い!でも、半年前にD300購入したばかりですよね?!「冷静になってください」と(笑)複雑です。
山田さんのコメントを言うのを忘れてましたが、ま〜いいでしょう!欠点らしい欠点の話は無かったので。「D3を迷って買わなかった人は触ってみてこれでいいのかな〜と思いながらも、さっさとD700買ってください、視野率95%ですが、ライブビューで確認してください」という感じのことを言ってました!

RGB各色で10bit、従来8bitというのが常識でしたが、合計で30bitの表示が可能となったモニター「DreamColor LP 2480zx Display」。単純に言うと、今まで、70万色しか(しかってのも変ですが・・・)表示できなかったものが、10億色を超えるということです(驚)
DREAMWORKSと一緒に作ったモニターだそうで、映画関連の方では、AdobeRGBよりももっと広い色域「XVカラー」という規格、そちらの方を基準にして画を作っていこうという流れだそうで、RGB各色8bitでは足りない!10bitないとそれだけの色域と、階調が両立できない!
そうそう、各色10bit対応のビデオカードが発売されてるって知ってました?
カラーマネージメントに関しても、システムが用意されております。バックライトはLED。値段は399,000円。
キャリブレーションソフトはセンサーとのセットだそうで、フードもそうですが、別売。今のところキャリブレーションソフトのみの販売は未定、ベゼル(画面フチ)はブラックのみ!このあたり、かなりみなさん突っ込んでいたので、これらが改良されたら、フォトグラファーへの本気度が見えてくると思うので、私の場合少し様子をみるという感じでしょうか・・・

 
 
第2部 『Phase One 645とCaputre One4 日本語版のご紹介』
株式会社DNPフォトマーケティング
下田貴之/川口和之/小山秀一
 
 

下田様から、カメラの話 川口さんからレンズの話 小山さんからソフトの話をしていただいました。
中判デジタルのレポートは正直書けません。持ってないので・・・使った方でないと、新機能の良さが分かりません。仕様書なんて見ても、ピクセル数の数字以外は、一眼デジタルの方がホント便利って思うだけ!
でも、欲しいですね〜中判デジタル。前にも書きましたが、中判デジタルを1ヶ月ほどお貸ししてもらったことがあるので...
中途半端にレポートは書けません。ごめんなさい。やっぱ、僕らの世代だからこそ、コーユーの借金してでも買わなきゃな〜って思います。一眼デジタルだけで、今後もお仕事していると、なんだか頭打ちされて、いろんな意味でのレベルアップが期待できないように感じてしまうのは私だけでしょうか???
今月も、日大芸術学部の写真学科の在学生が来ておりましたが、先日P45プラスが10台も入ってきたそうです。いいな〜・・・

 
 
第3部 『HasselbladH3D?-39MSとPhocusのご紹介』
シュリロトレーディングカンパニーリミテッド
カメラ製品事業部営業部長渡辺 正彦
カメラ製品事業部 波多野 顕
 
 

このパートはこの日途中参加でした湯浅がレポートを受け持ちます。
 
ハッセルブラッドは古くから僕たち多くのプロカメラマンに使用されてきた中判カメラです。デジタルバックメーカーであったイマコンと一緒になったのが、現在のハッセルブラッド社です。
 
デジタルバック対応の新世代のカメラとして開発設計されたのがHシリーズですが、今回のH3D-2はそのシリーズの最新モデルです。
ここで簡単に各モデルの特徴を書いておきます。
 
H1D
デザイン的に一体感のある形状
ボディ部はハッセルブラッド社、レンズ部は日本の富士フイルムが担当しての共同開発。
レンズの各収差が目立っていた。
 
H2D
バッテリーの一体化(デジタルバック部へはボディからの電源供給)
レンズの収差補正対応(ディストーション 周辺光量の補正など)
ファインダーが645のフィルムのまま
ピント精度の問題
広角レンズの対応
 
H3D
フォーカスキャリブレーション:ウルトラフォーカス(絞りによってずれるのことを補正)
広角28ミリの開発
カメラ、バックそれぞれに設定が必要
バック部には冷却ファンが必要
 
H3D-2
3インチ背面ディスプレイ
ペルチエ素子で冷却(ファンがなくなった)
操作性の向上(グリップから手を離さずに操作ができる)
ファインダーがデジタル専用
マルチショットへの対応(Hasselblad H3DII-39MSのみ)
 
と言う具合に、モデルチェンジを重ねるごとに先代の問題点を一つずつ潰してきた4世代目と言うことが分かります。
現在、デジタルバック業界は大きく分けて3つの勢力があります。この中で唯一ハッセルブラッドのみがバックとカメラ、レンズ一体の設計が出来るメーカーです。35ミリボディのデジタルカメラでは当たり前のように、レンズ、カメラ、ソフトと、一つの会社が作っていますが、たとえばレンズの収差の補正をソフト上でやるとか、キヤノンのピクチャースタイルに代表されるような各種味付けが、中判デジタルバックでは出来ませんでした。35からのステップアップ・ユーザーにはこのあたりが不満でした。
 
ハッセルブラッドではH3の時の28ミリレンズに代表されるように、デジタル収差補正をソフト上で補正するシステムになっています。これは撮影時のレンズ情報をRAWデータに付加して、専用ソフトで解析、補正をするというものです。 レンズ1本あたり500種類くらいのデータを収集しており、専用ソフトにその収差のデータを入れ込んでいます。これにより、ディストーション補正や周辺光量の補正を、その撮影データから撮影時のパラメータを読み込み、半自動的に、画像データを補正することが可能になりました。
前述の28ミリは開発当初よりソフト上での補正を前提に設計されたもので、フィルムでは使えないデジタル専用となっています。 光学的に補正していないので比較的コンパクトな設計になったものです。
 
そのほかの改善点としてはファインダースクリーンがデジタル用のファインダーは3.1倍となり(フィルムは2.7倍)かなり見やすくなりました。

また、デジタルバックでは常にカスタムホワイトバランスを取る前提なのですが、H3D-2の場合、スポット測光範囲にグレーカードを入れて撮影すれば、それが自動設定されるという、撮影現場ではかなり便利な機能も盛り込まれています。
こんなところが、レンズ、本体、バック、ソフトまで、すべて一社で作っているメリットだと感じました。
 
また、ウルトラフォーカスという、絞りによってピント面が動く現象を解決するシステムも内蔵しています。これはボディとバック、一体での調整が必要なのです。ボディが壊れた時のためにスペアボディを持っているカメラマンが多いのですが、新規購入時にスペアボディの同時発注をすれば調整済みのスペアボディが手に入るというサービスもあります。
 
さて、問題のマルチショットですが、、、
 
詳細な説明は以下のハッセルブラッドのサイトをご覧ください。
http://www.hasselbladusa.com/media/1056682/jp_h3dii_ms_datasheet.pdf

勉強会では実際にマルチショットをやってみました。
その被写体として選ばれたのは、あの意地悪な電塾チャートです。細かな線が描かれているチャートですが、それをCCDの1ピクセルぴったりに合うように撮影距離を調整して、撮影します。つまりは1ピクセルがちょうど線1本分に掛かるようにするのです。1ショットタイプの撮像素子ではご存じのように、ベイヤー配列と言って4個のピクセルで色を作り出す仕組みです。
1ショットで電塾チャートを撮影すると、盛大にモアレ、偽色のオンパレードになりますが、それを5回露光のマルチショットで撮ってみると、嘘のように細部が描写されます。
これは実際に見た人でないと、その驚きは伝わらないと思いますが、、、アパレルなど、常日頃モアレや偽色に悩まされている人には、神の啓示とも思えるような、そんな写真が撮れるのです。

Hasselblad H3DII-39MSだけではなく、ソフトも新しくなりました。以前の専用ソフトFLEX SCANが印刷用スキャナーをドライブするソフトから派生してきたものだったので、カメラマンからは「使いにくい」との評判がありましたが、今回まったく新しく作ったものがPhocusです。現在は英語版ですが、アップデートで日本語に対応します。
デジタルカメラ、バックのみに特化しました。
ユーザーインターフェースが改善され、見た目は最近の傾向として各社似てきました。その分、他社から乗り換えるカメラマンにも違和感が少ないと思われます。デュアルディスプレイにも対応、絞りやシャッタースピードを換えることや、AF,さらにシャッターを切るなど、カメラコントロールも強化されました。
 
強力なモアレ除去フィルターも内蔵され、マルチショットでは撮れないモデルカットなどには威力を発揮するでしょう。
目新しいところではGPS対応でしょう。アップルのiPhoneでも話題になりましたが、画像データに緯度経度の情報を盛り込めます。ジオタグと呼ばれていますが、後付のGPSを付加することによって、デジタルバックの画像にも付加できるようになります。
広告分野の写真家にはピンと来ませんが、遺跡発掘調査など、学術分野での需要を見込んでいるようです。
 
学術分野と言えばこのHasselblad H3DII-39MSですが、これだけ高精細な画像を必要とされる分野は、広告などではなく、学術分野かなと思いました。美術品や工芸品、遺跡など、将来にわたって、可能な限り精緻に記録保存しなくてはならない、そんなニーズがあります。ハッセルブラッドのデモでも、鎧の画像を出していましたが、その細部描写はすばらしいものです。

さて、良いことばかりを書いてきましたが、、、気になる点も。
まずは専用ソフトがMacのみである点。これは秋のフォトキナでバージョン1.1が発表になる予定で、そのときに対応するそうです。
Macを使っていればいいかというとそうでもなく、、、対応OSは10.5以上です。すでに10.4が切り捨てられたという事実は、インパクトありますね。ファイルサイズや処理を考えると、最新のMacProが前提か?と言う気がします。
最後に肝心のお値段ですが、、682万5,000円と、一般的なカメラマンにはなかなか・・・ですが、メルセデスに乗っているカメラマンも多いのですから、買えないという値段ではないでしょう。と言うか、クルマに金を掛けるなら、機材に金を掛けろ!と、そう突きつけられた感じさえします。

 
 
第4部 『超高精細画像拡大ソフトとSNS型写真共有サイトZORGのご紹介』
株式会社ジャングル;プロダクトマネージャー 竹本 圭輔
輔株式会社ゾーグ;春日 賢一
 
 

中判デジタルで、頭がパンパンになってしまった私にはホッとする第4部。
先ずは拡大ソフト「PhotoZoomPro2」
通常の画像拡大では難しかった自然で鮮明なリサイズを簡単に行えるソフトです。
いつものことですが、体験版で実際にご堪能ください!
150%とか200%等の割り切れやすい数字のリサイズであれば、簡単ですが、例えば187%等の割り切れない数字はリサイズに神経を使いますよね?でもこのソフトを使えば、そんな神経はご無用!実際に元サイズが小さいデータを472%という嫌な数字でデモンストレーションしていただきましたが、ちょっとビックリしてしまいました。
もちろん、全てのデータに効果が得られるわけではありません。
例えば、
・もともとのデータの画素品質が悪いもの
・ブロックノイズやカラーノイズがのっているもの
ま〜プロでしたら、こんな悩みは心配ないかと思いますが、デジタルズーム、つまり画像をトリミングしたデータのサイズが足りない場合に、このソフトの出番なわけです!こちらのソフト、単体でも使えますが、フォトショップのプラグインとしても使えます。操作は、本当に簡単!是非、ダウンロードしてみましょう!価格;18,711円ハイブリット版で、ライセンスは2ライセンス。マックに2台とかマックとウィンそれぞれ1台づつで使えるそうです!

次に、世界中の人と写真を共有できる空間を提供しているZorgのサイトのお話!
PCメールアドレスだけで無料でメンバーになれ、10GBまで保存可能!
ゾーグのポリシーとして、できるだけ世界中の参加者の写真を均一に見てもらえるように、プログラムを組んでいるそうで、その辺りが非常に素敵だな〜と思いました。
またそれらの写真にタグを付けることが、本人だけでなくメンバーもタグ付けをすることができるそうで、そのタグが検索エンジンにてヒットされるそうです(また、他のメンバーにタグを付けさせないようにもできるそうです)
そして、もっと素敵だな〜と思ったのが、メンバーが写真をみて「きれい」だとか「たのしい」だとか「かわいい」だとか気持ちを埋め込むボタンがあって、またそれがタグとなるそうです。「他のサイトで、投票ボタンってのはありましたが、写真に善し悪しってのはなくて」という話をされてましたが、確かに感情がタグとして埋め込むことができるのは、なんだか素敵じゃありません?
なにしろ、他にもたくさん春日さんの心遣いがあって、これからもっとどんどん素敵なサイトになってゆくと思います。先ずはみなさんも、登録してみては?!
これ以外にも、PhotomaticPro3.0という、ソフトの紹介をいただきましたが、簡単に言うと、HDRです。フォトショップのHDRと違い、独特のアルゴリズムで、面白い画ができます。今のところ英語版しか無いそうですが、近日ゾーグ会員限定でダウンロード特別販売をするそうです(日本語版)パッケージ版はジャングルより9月ぐらいから販売予定。価格は1万円弱。こちらも、必見!

 
 
今月の一枚
 
 

まる1年半がかりでできたCS3プロフェッショナル講座応用編
さあ、みなさん書店へ!

文: 菊池 斉
(3部のみ湯浅立志)