電塾 2006年6月定例勉強会レポート
 
 
『正しい色を再現するために』
 
 
第一部 自己紹介&自己主張の時間 参加者全員
 
 

2006年6月の電塾勉強会は有明で行われました。レポートを担当しております、運営委員の湯浅です。

今回も午前10時からやさしい電塾が行われました。その模様は最後に書いてますので、最後までお読みいただければうれしいです。

午後は恒例の自己紹介から。

1番目はわたくし、湯浅からでしたが、この前日の仕事で撮影いたしました、コレクターとして有名な北原さんのお話し「欲しいものは買う、買ってから考える」を紹介させていただきました。デジタル撮影を始めたばかりの頃は、何かと欲しいもの、必要なものが多かったのですが、実は、それはこの電塾の面々、みんな同じだったと鹿野さんが繋いでくれました。次々と新型の機器が出る中、しかも多くの製品は今のように買いやすい金額ではなかった時代に、元が取れるかどうかも分からないまま、仕事をしながら使い方を模索して来たのが、早川さんをはじめとする電塾に参加されている方々です。

「欲しいけど、、、もっと良いものが出るかも知れない。安いものが出るかも知れない」と思って立ち止まってしまっている方を見かけることがよくありますが、買ってから考える、と言う見方も良いのではないかと思います。それを買うことによってまた新しい世界が開けるでしょう。また、それを買うことによってがんばって仕事をしようと思うでしょう。

そんなことで、盛り上がった自己紹介でした。

 
 
第二部 「キャリブレーション対応モデルColorEdgeCE240Wのご紹介」
株式会社 ナナオ 営業1部グラフィック課 課長 伊藤 昌宏
株式会社 ナナオ 営業1部グラフィック課 主任 山上 剛
 
 

ナナオからこの勉強会の翌日に発売になるキャリブレーション対応モデルColorEdge CE240Wのご紹介をしていただきました。このモデルは先に北米市場で発表、発売されたモデルで、ようやく日本国内でも販売と言うことになったものです。 下の写真は左からCE240W、CE210Wそして比較対象としてCG210を持ち込んでいただきました。

今更ナナオのColorEdgeシリーズについて書く必要もないとは思いますが、、、厳密な色再現性能を必要とする出版・印刷、デザイン、デジタルフォトなどのプロフェッショナルワークをサポートする、キャリブレーション対応の液晶モニターラインナップです。測色機と同社独自のソフトウェアを使うことによりソフトウェア上のキャリブレーションではなく、ハードウェアでのキャリブレーションが取れる点が最大のメリットになっています

今までCGシリーズのみラインナップされていましたが、今回、それの下のグレードにCEシリーズが追加されました。

従来よりCGシリーズはプロカメラマンを含め各方面から高い評価を得ていましたが、欠点としては高価、、、値段が高いことが最大のネックでした。19インチのCG19は発売当時20万以上の値段でした。コンシューマー向け19インチは8万程度で買えるので、この値段の差は、余程その価値を見いだせる人でないと、おいそれと買えるモニターではありません。ただ、実際に使ってみると、その効果は絶大で、もはやCG以外では画像をチェックできないとさえ思えるほどです。(これは私、CG18,CG19のユーザーとしての私見です)

そんな中、値段の安いCEの追加は待ちに待ったとも言えるでしょう。

CGは「カラーグラフィック」の頭文字、 CEは「Creator's Edition」の頭文字です。決してEconomyの略ではありませんので、、、、。命名の通り、広く画像クリエイターに向けての商品という位置づけです。CGに比べてコストパフォーマンスを高めたモデルで、静止画と動画に向いているという説明でした。動画対応は特にCGシリーズにはない機能です。これはCEが元々は動画用のLCDを採用しているためです。CGと比べてワイド画面という点も見逃せません。

特徴は「忠実な色再現 滑らかな階調 ColorNavigatorCE(簡易版)の付属」です。

ColorNavigatorCE(簡易版)は上位機種CGに添付のColorNavigatorの機能制限されたもので、 CGはキャリブレーション後、微調整を掛けられるが、簡易版はそれがないとか、履歴管理機能もないなどの違いです。実使用として、無くても困らない人がほとんどではないかと思われます。

想定されるユーザー層は各分野のクリエーターで、モニター上と出力物のカラーイメージマッチングを計りたい人たちです。具体的には パブリッシングデザイナー、 productデザイナー、 プロモーションデザイナー、 プロ、ハイアマカメラマン、 広告代理店などです。ただし、説明ではプロのカメラマンは要求度合いが高いのでCGシリーズの方が良いでしょうと言うことでした。

会場ではCEが2台とCGが1台、並べて置かれていましたが、却ってCGの良さをアピールする展示になってしまったと感じました。この差を「遜色ない」と思うのか、「この差が大きい」と思うのかは、勉強会に出てみないと分からないことでしょう。(僕個人はこの差が大事だと思いました)

次に導入によるメリットですが、色校正作業の軽減( モニター画像が正確な色を表示することと、
複数のスタッフが全員で同じ環境に出来る)が上げられます。特に値段が安いのでスタッフの多い会社では複数台導入しても比較的コストが安く上がります。
値段が安いことでクライアントやスポンサーにも薦めやすいので、いつでもどこでも同じ色環境を再現される可能性があります。

質問コーナーです。

販売ルート?
CGシリーズ同様、量販店には出す予定はないそうです。ただし、CGシリーズとは違いハイアマの購入も想定されるのでそれも考慮される予定だそうです。

キャリブレーターを持っていない人はどうしたらいいのか?
添付のCD、EIZOウェブサイトにカスタムプロファイルがあるので、最低限、それをお使い下さい。特にMacの場合はカスタムプロファイルを指定してあげないと、勝手に他のプロファイルを作ってしまうので気をつけてください。

色の違いについて
視野角の問題もあります。
色むらの制御として将来的な技術を開発中です。(会場ではこの技術もデモしていただきました)

販売価格は?
オープン価格なので予想ですが、、、想定金額 240が18万以下 210が13万以下

複数のキャリブレーションソフトがコンピューター内に存在していても問題がないのか?
winの場合 キャリブレーターのソフトは過去に入れたモノを読みに行くのでスタートアップからはずすこと。

寿命は?
ベースの液晶が明るいモデルなのでキャリブレーション後、暗く使えばかなり持ちそう 。CGシリーズよりも長寿命?(検証していないので不明です)

次に運営委員の鹿野さんからのプレゼンです。

スタジオ撮影ならいざ知らず、ロケ現場でも信頼の置けるモニターを持っていきたいと言う要望は多くのカメラマンが抱えています。大抵はノート型を持っていくのですが、言うまでもなくノート型の液晶ではどうにもなりません。そんなことで外付けのモニターを持っていく方も多いでしょう。

鹿野さんからはお手製のディスプレイケースを持ってきていただきました。

モニターは定評のある往年のL567。それのスタンドを外してVESAマウントのところを利用して折りたたみのスタンド兼モニターフードを付けました。折りたためば液晶面の保護、立てるとスタンドとフードになると言うスグレモノ。

折りたたんだ状態でACやモニターケーブルなどが収納できるというのもよく考えられています。

現場のカメラマンが考えるとこうなる、と言う見本です。手作りなので木の板を切っての工作ですが、もっと軽い素材を使えば、ロケの多いカメラマンにとって素晴らしい機材になるでしょう。

どこか商品化してくれると良いのですが、、、というか、鹿野さんが別会社を作って商品化してしまうとか??

 
 
第三部 「gmgの高画質カラープルーフ・マッチングシステム」
gmgカラーテクノロジーズ株式会社 最高技術顧問 栗原 公
 
 

第3部はgmgカラーテクノロジーズ株式会社の高画質プルーフ・マッチングシステムについてのプレゼンです。

実を言うとこのシステム、非常にわかりにくいというのが本音です。

というのは、このシステムの主な使用環境は、フリーのカメラマンレベルでは日常的には縁がない製版、印刷での運用になります。

もちろん、縁がないから知らなくてもイイというものではありません。知識として、世の中にはこういう先進的なシステムもあると言うことは頭の片隅にでもあると、何かの時に役に立つでしょう。

以下、消化不良気味のレポートですが、、僕のレポートでは伝わらないと思われますのでこのホームページを参考にしてください。

また、運営委員の鹿野さんからレポートを書いていただきました。そちらもお読み下さい。

ICCプロファイルは使わないデバイスリンクがポイント。 96ビットのデバイスリンクできめの細かいデータ処理が可能になっている。
ウィンドウズのサーバーベースで運用されていてホットホルダーにデータをドラッグすると計算、処理する。CMYK変換でトーンジャンプなどの段付きが起きない。
他社変換ソフトではICCプロファイル変換に依存しているのでトーンジャンプなどが起こりやすい。しかも シャープネスが優秀である。
RGB最適化オプションではRGB to RGB(印刷用AdobeRGBデータからウェブ用にするなど)変換をさせるとフォトショップだと段差が付くところ、これを使うと段差が付かないなど非常に有効に働きます。(サイトを参照)

変換時にICCプロファイル変換を使わないと言うことですが、データの読み込みにはプロファイルを使っています。変換時に独自のやり方を取っている点を誤解ないようにしてください。また、変換後のデータにプロファイルを付けることも可能です。

ICCプロファイルを否定しているわけではなく、変換の精度、性能の向上をさせるシステムです。

栗原さんの経験談として、これを導入した印刷屋さんでは、今まで苦労しても合わなかったのがスムーズに合うようになって、結果的にスポンサー、クライアントからの信頼が厚くなって他所に仕事が逃げていかないようになったと言うことでした。このような事例をいくつも見てきたそうです。

カメラマンの多い電塾ですが、仕事上でこのようなシステムに出会えたら良いですね。広く普及してくれることを願っております。

業務向けなので値段が高いのですが、デモ版もありますので興味のある印刷屋さんはお問い合わせ下さい。

 
 
第四部 「祝!D200カメラグランプリ獲得報告 とNew D2Xsの詳細!」
ニコンカメラ販売株式会社 イメージングサポート部 プロサポートセンター 中嶋 斉一
ニコンカメラ販売株式会社 イメージングサポート部 プロサポートセンター 畑 和宏
 
 

まずはD200のカメラグランプリ受賞のご報告から始まった第4部です。

カメラグランプリはクルマのカーオブザイヤーと同じで、その時代を代表するカメラが受賞するものです。メーカーとしてもうれしい賞でしょう。

さて、今回はこの勉強会の数日前に発表になったD2Xsのデモです。

ちなみに勉強会当日はAPA総会とも重なっているのですが、現状3台しか実機がないところ、そのうちの2台がこの電塾勉強会に持ち込まれました。ニコンとしても気合い十分と言うところでしょうか?

D2Xsは言うまでも同社フラッグシップ機のD2Xのマイナーチェンジ機です。外観上の違いは正面のロゴと背面の液晶でしょう。

改良点はD2Xでユーザーからの改善要求が多かった部分を重点的に換えています。

以下箇条書きですが。

*撮ってすぐ確認できるモニター D200と同じモニターを搭載 工場出荷時にモニターの色調整を行う
* モニターの色再現の改善(視野角170度)
*USBケーブルの改善 クリップ式の採用(カバー式形状で不意のケーブル抜けを防ぐ)
*バッテリー性能の向上 容量の増大 D2xにも使える(互換性)
*クロップ時のファインダー表示改良 
* オートフォーカス性能改善 コントラストの低い被写体でもスキャン動作が少ない
AFロックオン機能の向上
*カメラ内でトリミング可能 
*ISO800とH1の間に3段階追加
*カラー設定 BWモードを搭載  
*長時間ノイズ ノイズ除去オンでもオフでも同等の連続撮影可能
*階調補正のユーザーカスタムの複数登録 ガンマカーブをダウンロード可能
*感度の自動制御 シャッタースピードの低速限界を決めてのオートが可能 舞台撮影などに使える
*ファンクションボタン 機能追加「押す」と「押して回す」の設定が可能
*セットアップメニュー 過去の履歴が残る カメラ設定の保存 読み込みが可能
*画像真正性検証ソフトウェア 
*CCDクリーニング時にバッテリーのみでミラーアップが可能(ただし残量が5分の4以上)

クロップ時のファインダー画面

これで間違いは激減するでしょう。

ちなみにモデルはMさん。ありがとうございました。

ソフトですが、RAWデータの復元には、PictureProject(Ver. 1.6.4以降)またはCapture NX(Ver. 1.0)(別売)が必要です。RAWデータを編集、調整するには、Capture NX(Ver. 1.0)(別売)が必要です。D1時代から同社はソフトが別売りでした。一度買えばバージョンアップで対応できますが、これにしても有償です。このあたりの対応は賛否が分かれるところでしょう。個人的にはRAW撮影がほとんどなので標準添付して欲しいと思います。

同様にD2Xsをパソコンでリモートコントロールするには、Camera Control Pro(別売)が必要です。これも別売りなので、ちょっと使ってみたい、たまにしか使わないという人には「わざわざお金を出しても、、、」とためらうと思います。

バージョンアップの時期、価格なども未定です。

次に本体D2Xのバージョンアップですが、時期が未定ですが、可能になります。ハード的な部分は変わりませんが、機能的な面ではD2Xsと同レベルになるとアナウンスされております。他社ではマイナーチェンジでも旧型機への対応はない場合がありますが、このニコンの姿勢は素晴らしいと思います。

 
 
午前の部 「やさしい電塾」
特別編 電塾 塾長 早川 廣行
 
 

恒例となりました午前の部、やさしい電塾のレポートです。

この日は特別編ということで早川さんの「DigitalPhoto概論」という講義になりました。

まずは初っぱなからフォトショップの仮想記憶ディスクについて。これは昨今のBBSでも話題になっておりいますが、仮想記憶HDとして単独のHDを指定することが重要というお話しです。フォトショップ使用時の注意としては基本であり、よく質問にも上がるものです。かくいう僕も、このお話を聞いてから自分のMacのHDを見直そうと思いました。

さて、肝心の講義、これが素晴らしかったです。僕も今では運営委員をやらさせていただいておりますが、早川さんの講義を聴くのは本当に久しぶりです。この日に午前から参加された方はまさにラッキー、幸運としか言いようがありません。それほど素晴らしい内容でした。初心者向けと断って講義されていましたが、僕は「俺って初心者レベルだったんだ・・」と愕然とする内容でした。

以下、要点だけ抜粋します。

写真は階調表現技術である 
加工すればするほど階調は失われていく 
絵画と写真の異なる部分
階調補正を前提にした撮影は16ビット処理が原則
RAWデータ処理が適している
正確な露出 ヒストグラムの確認
測光はヒストグラムを読む 
ホワイトバランスは撮影時に正しく設定すること グレーバランスとは違う グレーをグレーに出すのがグレーバランス 
オートホワイトバラスに頼らない(A/D変換前にホワイトバランスを取っている機種もあるので撮影時にホワイトバランスを取ることは重要)
固定ホワイトバランスの利用、色温度設定などを利用 
チャートの活用 
デジカメは解像感が重要 画素数ではない
CS2を使った画像処理のポイント

画像処理
選択範囲作成技術がすべて 
16ビット処理が原則
シャープネスは塩 ノイズは香辛料
カラーチャートを撮影時に撮影しておくことが品質管理の決め手
トーンカーブで無彩色をグレーに カラーピッカー R BをGに合わせるようにする そのあとに階調を整える 
色相彩度で色の偏りを補正する HSBに表示 
レタッチは修復ツール スタンプツール
きれいなシャープネス スマートシャープ 
ノイズ 
スタンプツールで崩れた部分をノイズを掛ける 
ハイライトシャドーを除いて掛ける レイヤーマスク
彩度を最後に上げる事によりヒストグラムの歯抜けを改善

終了後、午前の参加者は口々に「良かった」「来て良かった」「これだけで1万円くらいの価値があった」と言っていました。

残念なのは、当日、いきなりのサプライズ講義でしたので、事前に知っていれば、もっと多くの初心者が詰めかけただろうと、、、それだけが残念でしたが、こういうことがあるから電塾は見逃せない、と思った1日でした。

 
 
今月の一枚
 
 

モニターには皆さん興味津々

文: 湯浅立志