1400万画素のエントリークラス SONY α 350
 
 

1400万画素はどれだけ解像するか?前回のK20Dに引き続き、コンシューマ系の最高画素数をたたき出すもう一台のデジタルカメラ、α350を検証してみました。とうとうコンシューマタイプのデジタルカメラが気楽に1000万画素を超える画素数を当然のように搭載してきたのです。多分、これからも画素数は増えていくのでしょうが、このカメラは画素数とは異なるところに本来の魅力が存在するのです。それは「違和感のないライブビューと可動する背面液晶」の2点に集約されます。しかし、解像感もデジタルカメラが大きな問題点として抱えている部分なので解像感と使い勝手に重点を置いてテストしてみました。

1.解像力チャート

例によって1pixelの解像力、ベイヤー配列故の演算をいかに仕上げているかを確認するためのものです。本来、1〜2pixelの線や点はイメージセンサ上にそのままの濃度、エッジで記録されることはあり得ません。天文学的な確率でぴったりと重なったにしても…です。一本の線、一個のドットに対して1ピクセル前後のイメージセンサが割り当てられているときに、それらをどのように演算をしているのか、それを知るためのチャートです。通常使われている解像力テストチャートは、そのまま撮影すれば画素数の多いデジタルカメラの方が解像感が高いのは当然です。イメージセンサと処理回路が持つ能力をピクセル単位で確認する本来の意味のチャートだと言ってもいいでしょう。

ちなみにこのチャートはクリックする事で100%チャートを呼び出すことができます。



左から1ピクセルにあたるのが0.8pixel、中央の赤枠がちょうど1pixel、右側が1.3pixelです。
もちろん、0.8 pixelや1pixelが解像する訳がありません。黒と白のストライプや格子は解像できなければグレイになっていいはずです。マゼンタと緑のチェックもその色彩のバランスがとれていれば、グレイになるはずです。このチャートを見ると斜めの線以外はかなりグレイになっていますので、無理はしていないということになりそうです。ただ、1.3pixelは縦横斜め、かなりのレベルで解像しています。同心円もいけてますね。白黒のチェックもかなり元の感じを残しているようです。

左から1.6pixel、2pixel、3pixel。
最も重要になる1.6、2、3pixelでは赤とシアンのチェックでちょっと逆転現象が起きています。2pixelの幅を再現するのが結構難しいことがわかると思います。白黒のチェック部分では、3pixelでも偽解像を起こしています。線よりも点の方がずっと難しいのですね。もちろん、この現象は通常の撮影ではほとんど気にならないでしょう。逆に斜めの成分が含まれる同心円は見事です。

左から4pixel、5pixel、6pixel。
さすがにここまでpixelを当てることができると見事に解像します。4pixelでややチェックにおかしな、という部分が見えますがそれ以外は問題ありませんし5pixel以上は中間トーンの入ったチェックや高彩度の色彩の入れ子模様部分もはっきりと見分けられます。比較的「点」に関してもこのセンサー(演算も含めて)は「いい仕事」をしているようです。

上から1pixel、1.3pixel、1.6pixel
このチャートはイメージセンサのpixelと、実際に合焦した点、あるいは線がきっちりと重なる訳がないので、1/4pixelづつずらして配置してあります。重なり方が変化したときにどのような現象が起こるかを見ているのですが、微妙に変化したずれかたによる大きなトラブルは起きていないようです。以前のデジカメはこのあたりで、大きなぼろを出していたのですが、最近はどのメーカーも見事にまとめてきています。

やはり1ピクセルのチャート(一番上)では重なり方がずれるに従って異なる偽色を発生させているのがみられます。(大きな偽色ではないのでさほど気にする必要はなさそうです。
1.3ピクセルではかなりいい感じになります。水平、垂直線に、ホンの少し偽色が出ているようです。
1.6ピクセルでは全く問題がないところまで処理されています。

角度による解像変化

右肩下がりのほんの少しの角度がついた部分、しかも1pixelに近いところでで偽解像を発生させていますが、これだけ端正でしたら文句を付けれません。繰り返しますが、このチャートほど厳しいチャートは多分この世の中に存在していないでしょう。まさしく、重箱の隅っこを突っついている状態だという事は頭に入れておいてください。実はコンシューマデジタルカメラで、こんなチェックをしてもあまり意味はないのかもしれないのです。でも、このチャートでそこそこの性能を出しているという事はそれがリアルに1400万画素の実力を出し切ることができるのだ、という判断につながるのです。


大面積と小面積の輝度差、彩度差に差がある場合
意外と好成績なのが輝点の処理です。通常は周辺の色彩に引っ張れれるか、反対色を発生させてしまうんですが、見事に処理をしています。ひょっとしたらこの黒字に色のついた1ピクセルチャートに関しては一番優秀かもしれません。


近似明度上の異色相の再現をチェックします。
白の上のイエローやグレイ上のシアンといったものはよく再現していますが、グレイ上のグリーン、オレンジあたりは判別できなくなっています。これは処理によって変化するので、メーカさんごとの癖があるのでしょう。すべてを良好に解像するメーカーはなく、皆どこかに弱点を持っています。

同心円チャート

水平、垂直の1pixel付近はきれいにあきらめていますが(うまくあきらめるのも好結果をもたらすポイントです)斜め45度方向は驚くような解像感を見せています。


2.見た目の解像感

もちろんチャートだけではそのカメラの良さ、問題点のすべてを判定することはできなません。そこで今回もやはり九段にいってきました。例によって田安門から約170m離れて見た九段会館です。

壁のレンガや瓦の屋根が「見所」です。100%画像を見ていただければ一目瞭然ですが、まあ、見事な結果ですね。70mm側で撮影したものはすばらしい解像感ですが、18mm側を見ると、屋根瓦などは全く解像されません。同一の風景であっても焦点距離が短くなることで、同一イメージセンサに対する空間周波数が高周波側に移動してしまうのですね。70m側は瓦屋根の空間周波数が低いため、きっちり描写されますが、それが50mm、35mmと焦点距離が短くなるにつれて高周波成分に変化して、24mmあたりから怪しくなりだして、20mm付近ではもうで解像していないようです。当然これは画素数が大きければ大きいほど好結果を出す事になります。

元々の大きさが瓦やレンガよりも小さい木々の葉っぱはさらに空間周波数が高くなります。

この木立の被写体に対する距離は70メートルで、先ほどより100mは近づいているわけですが、18mm側でやっと解像している程度。葉っぱ一個につき、9pixelちょっとしか描写にあたっていません。風景として200%以上に拡大するのには難しそうです。しかし35m以上の空間周波数では葉っぱの形がトレースできるくらいにきちんと記録されており、葉っぱ一枚について70〜90個のpixelがその形を描いています。どんな風景でも撮影できる、とは言い切れませんが、ちょっとアップ気味、あるいは中景が結構手前に位置する風景であれば1400万画素はその実力を大いに発揮するでしょう。

このテストは標準的なズームレンズ、DT 18-70mmF3.5-5.6を使用しましたが、結果が思ったよりもいいのにちょっと感動した。失礼な言い方ですが、思ったよりも優秀。絞り値は多分ベストと思われるF8よりもずっと開放に近いF5.6〜F4程度なのです。ヨドバシカメラで25,200円程度で売られているレンズですので、値段対比効果は大きそうですね。

3.モアレについて

最近のデジタルカメラのモアレのチェックは行っていてあまり面白くありません。どのデジカメも、「ありゃりゃ」というモアレをおこしてくれません。特に高画素タイプの物はそうです。そろそろ違うチャートを用意しなくてはいけないのかもしれないですね。1000万画素までは多くのカメラがこのチャートで確実にモアレを起こしていたのですが、今ではほとんどお目にかかれなくなってしまいました。ま、この程度までは安心して使えるという目安のようなテストでした。


4.同時にお借りしたレンズ

については長くなるのでこちらで…。

5.分光反射特性

蛍光灯、ストロボ,タングステンの3種類の光源で撮影してみました。ソニーさんはコニカミノルタ時代から、蒸着系の近赤外線カットミラーと染料系のそれを組み合わせて、光源を選ばない上手なカットの仕方をしています。タングステンでも蛍光灯でも、ストロボでも大きな変化は見当たらりません。700ナノメートル以上の近赤外線を絵作りに活用しているメーカーさんは、ここを簡単には切らないし、ニコン、ソニーさんは可視光のみをイメージセンサに届けることにより、近赤外線の影響から逃れようとしているようです。これはメーカースタンスなのっでしょうから、あたしがとやかく言うお話ではないのですが、個人的にはシャドウが変に持ち上がり、色相が変化してしまうよりはカットしてくれた方が、やりやすい気がします。

というわけで、個人的にはこの仕上がりは○です。特に衣料系、染料で染色された物を多く扱うカメラマンに取っては必要なことでしょう。(のぞく天体系)

6.高感度特性

ISO100から200、400、800、1600、3200の6段階でいつものチャートを撮影してテストしました。

感度100と200は私には見分けがつきません。並べて比較すると、100の方がややダイナミックレンジが広いかな、と思うくらいです。400になると、重箱の隅をつつく見方をすると、ノイジーかも知れない、と思わせます。感度が800になると銀塩フィルムよりはずっとましですが、100%表示ではっきりとノイズ感が感じられます。1600、3200と順当にノイズは増えますが、色分離はきちんとしているし、極端におかしなノイズは見当たりません。感度400のフィルムを少々増感したくらいの感覚でしょうか?。1400万画素という高密度のデジタルカメラである事、コンシューマをターゲットにしているを考えれば十分なレベルにあるといえるでしょう。本来、このあたりはこのレベルのカメラであれこれいうべき事ではないかもしれませんが、それでも感度800までは安心して使用できるという目安のために掲載しました。

赤い車や緑、シアンのペンのようなべったりとした質感を持つ部分、特にシャドウ部では1600を越す高感度で再現がきつそうです。

高感度でも、リボンの布目の質感は高感度になってもそこそこ残っています。流木の質感や、金属、ナイロンの質感もテクスチャーを含めて諧調は上手に処理しています。画像処理の神経が細かく行き届いているのだと感じました。

7.諧調感

グリーンマークが安心して使える範囲。黄色がなんとか処理で逃げれる範囲、というくくりでマークしました。なんといってもISO100が「使える絞り値」の幅が広いです。しかし、感度200でもほとんど同じ幅が使える範囲に入っています。ハイライトのとびが感度200では早いようですが、絞り込んだ時のハイライトの描写はこちらの方がほんの少しだけ優れているように感じました。もっとも絞り値はいつでも変動していますので、あまりシビアなテストではありません。
感度400になると、さすがにラチチュードが狭くなるようです。グリーンのOKマークは、そのままで使用できる、またはほんのちょっとんトーンカーブ補正で破綻なく使用できる範囲で、黄色が我慢すれば使えるといった心つもりです。

ついでに、Dレンジ・オプチマイザーも感度200でテストしました。あらかじめトーンカーブ補正が行われているといった感触でみると、手間が省ける分、使いやすいモードでしょう。ただし、この画像にさらにトーンカーブを加えると、一気に破綻しやすくなります。特にアドバンスではその傾向が強まります。このスイッチを入れたなら、後で調整するのは最小限にとどめるべきでしょう。また、高感度域でこのコマンドを実行する事もはお進めできません。

8.ここからは実写画像

実はここからが今回のレポートの一番の「きも」。だって、比較的入門よりのデジタルカメラ、その性能を重箱の隅っこをつついて調べてもあまり意味はない。(でもあたしは普段の姿勢がこれだから、やらないわけにはいけないんだよね)その割にはかなりしつこくチェックしてしまったのは反省。

色再現、ダイナミックレンジ

色再現をニュートラルモードで撮影したサンプル。このモードはバランスの良い発色が特徴です。極端に彩度が高かったり、勝手に色相を変更したりしない、自然な再現が実に気持ち良い仕上がりです。質感も細かい布、バイオリンの木造部分、エボナイト部分、ドライフラワーと 見事に描き分けています。


グラデーションを多く含んだ画像は商品撮影時に多く存在します。天板に写し込んだトレペは実にきれいなグラデーションを再現しています。これらは画素数の多さもかなり寄与していると感じました。このカメラの居続けにしては商品撮影でも問題なく使えるレベルをクリアしていると感じました。ビビッドな色彩のハイヒールとなだらかなトーンも見事にまとめます。


今年になってから、サンプル撮影に登場する「銀の船」。高コントラスト部分の再現力、グラデーション、ダイナミックレンジ、グレイの再現力などをチェックするのにちょうど良いデータを得ることができます。かなり『デジタルカメラにとっていやな』被写体となります。本データをみていただければ、すぐわかるでしょうが、かなりハイレベルの仕上がりをしています。以前はデジタルカメラでこんな物は撮影したくなかったのですが、今では楽々とこなしてしまいます。

写真としてどうという物ではないが、暗い室内、明るい屋外、中間の明るさが存在する、ハイダイナミックレンジシーン。左下隅の黒い板以外はすべてトーンに入っています。

さらに黒い、逆光のカラス。空が、ぎりぎりの255付近に来るように撮影しました。当然カラスが真っ黒になってしまいますが、Dレンジ・オプチマイザーで持ち上げる事により、黒羽のトーンが見えてきました。当然全体も明るくなりますが、簡易的にダイナミックレンジを拡大する方法として提供されていいます。

クジャクの羽の高い彩度の、しかも再現しにくい部分が見事に記録されています。ノーマルの仕上がりではやや彩度が高すぎるか、とも思いますが、用途を思えば、いいバランスなのだと感じます。

α350らしさ

なんといっても接眼時と遜色ない高速ライブプレビューと可動する背面液晶を備えた入門機、というところをレポートするべきでしょう。リトラクタブルする背面液晶は「上から覗き込みながら」あるいは「カメラを頭上に掲げて」「真下から真上に向けて」という撮影スタイルを可能にしてしまいす。


カラス
もちろん、脚立を使用したり、這いつくばったり(時には穴を掘って)すれば可能なことですが、この作例のように地面を歩いているカラスをちょっとかがんだだけでこのアングルで撮影できるというのはものすごい事です。真俯瞰の撮影もボディ内手ぶれ補正と相まって、まっすぐに腕を延ばした状態で撮影することも可能にしています。(ちょっと腕力は必要)。


ヤギ
超広角ならではのすっとぼけたヤギのおじさんの表情もこのカメラだからこそ、撮影できた物でしょう。腰のあたりにカメラを構えて、カメラを顔の前面で構えない事によるメリットは大きそうです。


シダ
逆光のシダを下から見上げた写真。これも普通ならかなり苦しい姿勢で撮影しなければならないはずだが、ちょっと手を下に突き出しただけで、撮影可能でした。合焦のタイムラグが、通常状態と同じなので、違和感はほとんど感じません。



蝶本体がちょっとピンぼけ(被写体ぶれ)を起こしているが、これもライブビューを使用して撮影。普通にファインダーを覗いているのと比較してもシャッターチャンスに大きな変化は感じられませんでした。


バク
園内を忙しく歩き回っていたバク。カメラを高くあげてフェンスを逃げて、しかもライブビューで撮影。欲しいところでシャッターを切った感触そのままに撮影されていた。

高速ライブビューは自分自身があまり動体を撮影する機会がない所為か、あまりぴったりはまる被写体に出会えなかったのですが、このチョウチョやバクはライブビューで撮影したものです。ほとんどシャッターを切った瞬間に合焦、撮影がなされていました。ライブビューと可動する液晶ディスプレイに関してくどいのは、筆者は、いずれはデジタルカメラというもののスタイルの行き着く果ては、クイックリターンミラーやペンタプリズムを脱ぎ捨て、ライブビューファインダーを搭載したスタイルになると確信してるからです。もちろんビューポイントは接眼部分だけではなく、様々なデバイスがそれに当たると思っています。スカウターのような眼鏡型、コンピュータのディスプレイ、ブルートゥースでつながる独立したディスプレイ…考えればきりがありません。その意味で、変形二眼レフといえるこのシステムは現在のもっとも大きな問題(プレビューにどうしてもタイムラグが起こってしまう)を回避し、未来につながるスタイルを提案していると感じるのです。本来はアマチュアにとって一眼レフの敷居を低くし、コンシューマデジカメの使いやすさを継承する事で購入欲をそそろうという意図なのでしょうが、私にとっては「デジタルカメラの正常進化の方向性を見事に指し示している入門機」と感じられてしょうがないのです。

入門機、という事もあるのでしょうが、使い勝手で気になったのが、シャッターボタンの位置が軍艦部真上を向いているので常に人差し指をかなり曲げていないとシャターにかからない事、背面液晶が大型化、かつリトラクタブルになったせいで、そのための『枠』に場所を取られて、十字キーなどへの親指のアクセスが悪くなってしまった事(もっともフルオートで使用する場合は何の問題もない)事があげられます。また、ライブビュー時の速度とファインダーを覗いてい時の速度差は感じないのですが、全般にオートフォーカスの合焦速度に不満が残りました。もちろん、これらはその気になれば、早い時期に修正、改良できるものだと思うので、今後の進化に期待します。さらに言うと、もう少し高感度特性を磨いてくれると嬉しいと感じました。1400万という高画素を達成したためのトレードオフともいえるでしょう。

レンズ性能や撮像素子、画像処理技術はαシリーズから受け継いでいるので、既に解説したように高いレベルでまとめられています。その上で、基本的に高速で一眼レフも堪能できるコンデジ、といってしまっていいのかもしれません。1400万画素を持っている事により、風景もかなりのレベルで撮影でき、ある程度の明るさを持つ外光のもとでは、ダイナミックレンジも広く、使いやすいカメラだといっていいでしょう。