2005年 電塾3月のレポート
 
 
フォトキナ2004登場の最新機器報告
 
 
第一部 自己紹介&自己主張の時間 参加者全員
 
 

今回はスケジュールが窮屈になるほどの盛りだくさんの演目で、本来なら十分時間を使って紹介しなくてはならないニュースも自己紹介の中に組み込まれてしまいました。フォトのつばさの陳さんからは、選択、セレクトしたデータをPhotoshop 以外のアプリケーション(つまりRAW展開ソフト)に受け渡しできるような改良がなされた事、そのRAWデータが正しく保存されたかを確認できる機能を追加されたというアナウンス。でもこれって、メーカーがやるべき事なんじゃない??という気がしました。
アクト・ツーさんも新たなカメラRAWフォーマットなどに対応したiView Media Pro 2の新バージョン「iView Media Pro 2.6.3」をリリースしたとのアナウンスがありました。

 
 
第二部 ライトテーブルの使い勝手を実現した
ブラウザソフト「PicUpDESK」

株式会社トリワーク システム企画部 鈴木 晴久氏
 
 

自己紹介が押してしまったため、休憩なしでトリワークスさんのデモにはいりました。結構な衝撃が走りました。私ももちろん初めてですし、多分、殆どの方が始めて見るソフトだったと思います。
 要は画像取り込み、仕分けに特化したソフトで、昨年電塾で発表されて以来、話題の「フォトのつばさ」とは違った切り口のブラウザソフトです。
 一面に画像を広げるカルタ表示もなかなか面白いのですが、特筆するべきはこのインターフェイスです。整列しない状態で(個々のファイルの大きさも自由です)大ざっぱにグループ分けが出来ます。ちょうど机の上で焼き増しした写真をグループごとに山積みにして分類する感覚に似ています。今まであったブラウザでもっとも似ているのはCanonのズームブラウザでしょうか?
 スクロールで拡大縮小したり、ダブルクリックで大きな画像を表示、100%表示も自在です。複数選択しても同じ動きが可能であり、おまけにデスク自体も拡大縮小が可能です。このソフトも文字と言葉で説明するのは結構大変です。何はともあれ、百聞は一見に如かずです。
 その他にも右クリックでいくつかの操作が可能で、机をレイアウトシートに見た立て、レイアウトしたものをそのまま出力する事も可能です。もちろんRAW対応しているので、簡易現像をはしますが、少々時間はかかるようです。
 さらにトリワークの専用サーバ上にアップロード、ダウンロード可能というアップロード機能があり、データの受け渡しに威力を発揮しそうです。特に相手がWindows機であれば全てのデータを受け渡す事が可能であり、このサーバは「PicUpDESK」のユーザーであれば、無料で使用できるのだそうです。これは大きなメリットかもしれません。
 タブレットとの相性が抜群で、ただ今MAC版も開発を検討中との事でした。

CANON EOS Kiss Digital Nと20Da
キヤノン販売株式会社 金原克己氏

 現物が無いと言うことで“この獲物”を楽しみにしてきた山田氏にブーイングを受けながら…? 金原氏は天体撮影に特化した20Daをスライドだけでデモンストレーションしました。720nm近辺の赤を強化(バンドカットを変更)し、現行品に比較して2.5倍の感度を持たせたと言う事です。もちろんトレードオフとして近赤外線による分光反射効果がハッキリとがでるため、アゾ染料などを使用した衣料品などはかなりの影響を受けます。

CANON EOS Kiss Digital N
まず、最初に小さい!!軽い!なんと485gとおどろく重量。とは言え、中身はとにかく高画質でLPLフィルター(偽色防止フィルター)を3枚重ねて、徹底的に偽色を押さえているようです。金原氏が持参した小さめのバッグになんとレンズ付きで2台のKISS Digital Nが入っていました。(おまけに充電器と予備バッテリーも)
 イージープリントボタン、キャノンの得意のモード選択ボタン、ISOオート選択ボタン、等の簡単機能をさらに充実させています。でも私達が気になったのは別の部分でした。連写性能がアップして、秒3コマ。連続撮影Jpeg14コマRAW5コマ。これは少し前のフラッグシップ機の能力です。0.2秒に短縮された起動、AFモードの選択可能、測光モードも調光補正補正機能、ホワイトバランスブラケット、カスタムファンクション追加、AdobeRGB対応、RAWとJpegの同時記録、ディオプター追加等、実は大きな改良が加えられています。これならサブ機としての役割を十分に賄えます…時にはメインで?。
 また、モノクロモードにモノクロフィルター効果、1/4,000の小型高速シャッター、ピント板にプレシジョンマット、ストロボのGNも13まで引き上がられました。
 これで ボディ価格確か据置の99,800円です。

DPPもマイナーアップデートされ、コピースタンプというよりもヒーリングブラシに近い機能が追加されました。さらに一括リネームが可能になり、操作性が向上しています。そうそう、D60が追加され、これで残すはD30のみになりました。う〜ん。でもD30はやらんだろうなあ。

プロのサブ機としても最適 オリンパスE-300
オリンパスイメージング株式会社 筑後泰造氏・平田信也氏

 ごみ取り君1号(あるいは2号か?)というごみ取り機能を確認できるモデルを持ってきてくれて、全員に回してくれました。クイックリターンミラーがはずされており、メインスイッチを入れるとごみ取り機能が働き、中に入れられたビーズが飛び出しそうになるほどイメージセンサが振動するのを見る事が出来ます。これは結構楽しい見物でした。
 キスがママならEー300はダディがターゲットだそうです。ううむ。私にはどうでも良い事だけど…。サイドスイングミラーと言う面白い光学系を持っており、ペンタプリズムが無いため、頭がフラットになっているのは結構、収納を考えると便利そうです。見た目に違和感があるのは慣れのせいだけだと思います。
 800万画素をもっており、前述のダストリダクションシステム、さらに撮影モードが14個用意され、全て実際の画像がアイコンのように表示されます。
 フルフレームトランスファCCD、レンズ設計と相まって周辺部でも光がCCDに垂直に入るため、光量不足を解消しています。
 電源オン時にごみ取りモードが動くのでその分起動時間が長くなるという経過があります。このごみ取りは3階程度繰り返すとかなりの効果があるようです。ポップアップフラッシュも高さを十分に稼いでいますので大きなレンズでもけられが少ないと言う事も強調していましたが…レンズが皆大きいのですが…そのためかな?。
 7〜14mmという超広角レンズ。前玉のサンプルを持ってきてくれていましたが、凄い局面を持っています。35mm換算で15mmから30mmにあたります。殆ど周辺の光量落ちも少なく、ゆがみが殆ど無いのも特筆物です。一度建築の撮影で実際に使用して見たいレンズですね。こういったラインナップが“プロでも使える”と言わしめるところでしょう。
 150mmF2も展示され、実際に覗く事が出来ました。レンズの良さはそのまま拾得したデーターの良さにつながるそうです。今更ですが、デジタル専用レンズの開発が今後必須になりますね。オリンパスのシルバーリング付きはのレンズはとにかく高性能だそうです。

 オリンパススタジオは全て16ビット対応になっているそうです。今までの機能に追加して、自動トーン補正機能、多画像比較等の機能が追加されました。特に自動トーン補正機能やノイズリダクション機能は他社製のデータであっても(もちろんTIFFあるいはJpegです)適用できるので試して欲しいとの事でした。

 
 
第三部 シュナイダー社製電動シャッター&デジター
レンズとドイツのデジタル事情

PLAUBEL社 代表 Tosiyuki Ogataとジュニア
 
 

昨日日本に到着したばかりのOgataさんはすでにドイツに住んでいる方がはるかに長くなっていらっしゃるようです。金田氏からドイツのデジタル事情、レンズ事情についてのいくつかの質問から始められました。
 ドイツでは、フェーズワン、ジナー、イマコン、アイライクといったところが主力で、リーフが少々落ちている模様です。それはカメラの善し悪しではなくサービス体制が整っているかどうかが決め手になっているとの事です。

 商品撮影とくにマクロ(宝石)カタログ写真、家具等もデジタル化され、スタジオといわれるところはすでに殆どがデジタルバックを導入している模様です。日本、というより東京よりもはるかにデジタル化が進んでいるようですね。ジナーとアイライクが提携というニュースも飛び込んできました。

 シュナイダー対ローデンストックという2大レンズメーカーの浮き沈みも激しく、以前はシュナイダー60対ローデンストック40だったのが大きく変化したそうです。何度かの浮き沈みの後、ローデンシュトックは社名がリーノスに変り、今猛烈に追い上げている最中だそうです。デジタルカメラのイメージセンサーのチップが小さいうちは昔のレンズ、伸ばしレンズを改造して使用していたのが、最近はイメージセンサーが大きくなったので、それに伴う大きなイメージサークルが必要となり出し、ついに新設計レンズの発売になったとの事でした。おおよそ、私達の予想通りの動きをしているようです。35mm の焦点距離でで大きなイメージサークルを持ったレンズも発売されそうですので、かなり気になります。
 エレクトリックコントロール・シャッターは非常に小型で優秀です。ライブモードが進化した、というかまともにシャッターを切りながらライブモードを実現しています。ストロボ使用時には少々難しそうですが、蛍光灯を使用した時はかなりの威力を発揮しそうです。

 本当は自社ビューカメラ用に開発したものらしいのですが、デジタルバック用アダプター。これが非常に出来が良いので他社の4×5カメラ用のも作ってくれ、という希望が後を絶たないそうです。ユニバーサルタイプではないのですが、その分、フランジバックを最短にできる、また全体を小型化できると言うメリットがあります。

 個人的には6×9型のヴューカメラ、プラウベルPL69Dデジタルカメラの方がすごく気になりました。これ、心底欲しいと思いました。

お待たせMamiya ZDとドライバソフト
マミヤ・オーピー株式会社 新井 実氏

 開発を始めて以来、外にでる事なく、ずっと会社と会社のそばのレオパレスの往復だったといいます。(噂の紀香は付属していなかったようです)新井氏は久しぶりに外の空気を吸えるとでもいうような晴れ晴れとした顔をしていました。開発も最終調整段階に入ったようです。

 基本はマミヤ645AFDですが従来のマクワウリ型から大型35mm一眼レフ(ペンタックス6×7というのが一番正しいかも)型に変更されました。使いやすさ、手ぶれ等を考えての結果だそうです。レンズは645AFシリーズを継承しています。オートフォーカス性能をどう向上させるかが鍵になると思われます。ファインダーの視野率98%を軍艦部が大きくなってしまったという事です。ミラーボックス、シャッターまわりは流用しているとの事でした。
48mm×36mm、2,180万画素、のイメージセンサ。AD変換14bit入力、内部16ビット、RAWデータ12bit吐き出しの画像処理。コンパクトフラッシュ、SDカードのダブルスロット、秒間1.4コマ合計11コマ、RAW、Jpeg同時記録等、そのスペックは十分です。
 横161.5mm、高さ152mm、厚み90.8mm、1300gと従来の高級一眼レフとさほど大差がない大きさ、といいますがやはり見かけは大きいですね。実際に持って見ると、確かに、見かけよりは軽く、持ちやすく感じます。
ダルサ、フルフレームトランスファ正方がそ原色CCD、低温ポリシリコンTFTカラー液晶1.8方、ACIKはマミヤとダルサの共同開発、CCD出力をリアルタイムに最適化、マルチチャンネル読み出し(2チャンネル)、光学ローパスフィルターは着脱式。スタジオポートレート用にアンチエイリアスの効き方を変えた数種のローパスフィルター、IRなしのフィルターなどもを用意する事を考えているそうです。
 ごみを出さず、耐久性を向上させたシャッターの開発、ミラーショックに対する緩衝材の開発及び構造的な対策をするなど、シャッターだけでもかなりの苦労があったようです。
100,000回?
 ピントの問題を解決するためにファインダーを作り直し、マニュアルでピントあわせ可能にし、手ぶれを防ぐために内部構造を見直し、振動量を下げたそうです。

 ドライバソフトは、基本を押さえたまっとうな設計に仕上がっているようです。さすがにハイエンドを狙うだけあって、レンズ特性情報からディストーション、色収差も自動で補正する機能を盛り込んでいました。自社製のレンズしかつかないのはデメリットですが、逆にそれをメリットに変換しています。

 
 
第四部 日本ヒューレット・パッカード
業界初9色プリンタ HP Photosmart 8753
 
 

HPとしては解像度競争は終わったという事を受け、今後の可能性としてインクの化学組成、カラーマップの出来が今後の焦点に移っていくだろうと分析しておられました。日本ではなぜかエプソンとキヤノンの陰に隠れていますが、世界では圧倒的なシェアーを持つプリンタメーカーです。実は私のスタジオも、エプソンのPX6000がメインですが一台きりで、HPのプリンタは自宅も合わせるとなぜか、4台もあります。
 フォトグレイインキ、フォトブルーインキを追加し、色再現性を思いきり広げたプリンタがHP Photosmart 8753だそうです。モノクロ3色を加え、CMYと明るいシアンとマゼンタ、明るいグレイと暗いグレイ、そして黒という構成です。有線LAN内蔵し、ネットワークプリンタとして使用でき、60,000円以下という値段帯を目指すそうです。
 フォトグレイプリントカートリッジの効果は最初にライトグレイが立ち上がり、その後60ポイント位からからダークグレイが立ち上がり、43ポイント位からブラックが立ち上がると言う3段論法を張ります。これでモノクロ40,709諧調を再現できるそうです。もちろん、もっとも黒い部分もくっきりと再現できるそうです。
 また、カラーにもグレイを入れる事で濁りの少ない再現をダーク部で可能にするというのは何だかUCRにも似ていますね。粒状化やエッジの再現力、メタメリズム改善にも役立つという事でした。モノクロ画像が電球や蛍光灯などの光源が変化する事でまったく変化して見えることは私も何とかならないかとずっと思っていました。
 フォトブルーインクカートリッジを追加した理由は、余っていたカートリッジにブルーをいれたから、ととぼけたお話しもされていましたが、ブルー近辺のガマットは確実に拡大しており、とくにダークブルー部でかなりの広がりを見せているようです。高彩度部分で正しい位置で反射率が上がるのがその理由だと言う事でした。ゆたかな空色や青い海に対して効果的とのことです。中間Labへの変換をしないAdobeRGBのダイレクトマッピングもレンダリングエンジンのさによる[階調の反転]やバンディングを押さえる結果となったそうです。

 また、超小型、充電電源使用可能なプリンタ HP Photosmart 325も披露されていました。小さくて軽くて液晶ディスプレイが装備されています。これってちょっと凄いかも…

PMA報告&新製品情報
電塾運営委員 山田 久美夫

 登場するや否や、今年のPMAは不作なので、そのお話しは無し、と相変わらずのちゃめっ気たっぷりに会場の笑いをとっていましたが、いえいえ、十分に楽しめる内容でした。特に気になったのはISO1600〈売りは800ですが)のカメラFinePixF10。これは欲しいなあ。ストロボなしでどこでも撮影できるカメラは記録用に持って来いです。また、日本では発売されないだろう、キヤノンンマウントのコダックデジタルカメラ、シグマのAPS専用レンズの30mm1,4、10-20mm、15-200mm、皆気になりますねえ。どれも欲しい焦点距離のレンズです。実は私のレンズコレクションもかなりシグマ製品が増えてきて、このところ純正レンズよりも多い気がしています。シグマは元気ですね。
 山田氏のお話は7時半までつずきましたが、あまりに[情報]が大量で、ここへの掲載は控えさせていただきます。ぜひ、“生山田”を一度見学に来られませんか?

 
 
今月の一枚
 
 

これはオリンパスの7mmから14mmというとんでもない広角レンズの前玉と2番目の非球面レンズ。手前のレンズなどは、びっくりするくらい“非球面”に仕上がっていて、このおかげで殆ど収差の無い仕上がりを実現している。レンズの縁が手塗りで黒く塗ってあるのが解るだろうか?こだわりの逸品です。恒例の二次会は当初10人くらいの予定だったのがフタを開けたら25人近くに増えていました。開発者を捕まえて離さない方々が数人いらっしゃいましたが…。前回の二次会〈実は箱根1泊〉に強制的に拉致された湯浅氏が新運営委員に、広瀬氏を会友に迎えると言う決議も満場一致で為されました。


文: 鹿野 宏