2004年 デジタルカメラ学習塾4月のレポート
 
 
4月の定例勉強会は『sRGBとAdobeRGBカラースペースを考える』というテーマで、3月15日にスタジオエビスで行われた、MD研究会/電塾/アダムス/写真家ユニオン合同の、DTP WORLD誌上実験室公開実験を踏まえた、討論会を行いました。実験参加メンバーも多く参加してくださいました。このレポートをしている私が、その発端だったせいもあり、どのような結果がでるのかとても楽しみでした。
 
 
第一部 自己紹介&自己主張の時間 参加者全員
 
 

13:30時点では参加者が少ないように見受けられ、自己主張が始まったころは20人くらいかな、と思っていた。しかし、ふと気がつくと50人近いの参加者となり、このテーマはかなり皆さんの興味を引いていたのだなと思います。今回もかなり“聞かせる”自己主張、自己紹介があり、気がつくと始まってから90分をすぎていました。今日は早川塾長は連日のセミナーで風邪を引いてしまい、このような姿でした。

 
 
第二部 『sRGBとAdobeRGBカラースペースを考える』その発端
 
 

この騒動の発端、大本はハイデルベルグのセミナーにおいての鹿野と郡司氏が行ったセミナー。当初は鹿野がお話して、郡司さんに〆ていただくはずだったのが、私が出力トラブルで遅刻をしてしまったため、郡司氏が先に講演をする事になったのが全ての始まり(かもしれない)です。郡司氏の講演の趣旨は印刷標準化各印刷会社の専用プロファイル、という考え方ではなく、どこの印刷会社に出しても変わらぬ品質を提供出来る事に尽きるとおっしゃいました。そのためにも、EPSにかわり、次期印刷ワークフローの中心となるPDF/Xは基本的にRGBのカラースペースは AdobeRGBとしているので…RGBワークフローは当然として、そのカラースペースは AdobeRGBにしましょう、という趣旨のものでした。PDF/Xは印刷入稿をISO規格で規定されています。その際ワークフローとしてRGBカラースペースは AdobeRGB。CMYKは Japan Color 2001 Coated として記述されているのです。私たちもこれに異を挟むつもりはありません。(だって今まで出てきたものに比較してもものすごく妥当な線だもの)

 その郡司氏の講演のあと、鹿野がその趣旨ごもっとも、私も全く同感だが、 sRGBは、どうしてもは入ってくるよ、(クライアントさんが撮った写真、アルバイトが撮った写真、 sRGBしか出力の出来ないカメラを使用しなくてはならない時などがあり、これは決して逃げられない、というよりもさらに増える傾向にあるといえるでしょう)そのためにもカラーマネジメントは適切に設定しましょう、という話をしたら郡司氏は AdobeRGBを推奨し、鹿野は sRGBを推奨したという事になってしまったのです。(もっともそれだけではなかったのでしょうが…)それで、いったい印刷のワークフローのスタンダードカラースペースはどちらになるのだ、という質問が郡司氏に浴びせられたわけです。

 さらにアダムスのBBSなどで、 AdobeRGB、 sRGBのどちらが正しい?というような議論に発展してしまい、私は sRGB擁護派の立場に立ってしまったのです。(この時は多くお方が AdobeRGB派に回りました。これも当然といえば当然です)これにはいくつか問題はあったのですが、一番大きな問題はステージが違う場での議論が多かった事です。(これはその最中にも笠井氏から、ご指摘を頂きました。)つまりこの議論は作品を作るカメラマンとしてなのか、商業印刷を前提とするコマーシャルカメラマンとしての立場か、コンシューマーを相手にしているのか、というそのステージをちゃんとふまえて議論すべきでしょう、ということでした。(あるいは目的が印刷なのか、プリンタ出力なのか、WEBなのか、というように言い換えても良いでしょう)実はその議論もカラーマネージメントのスイッチを入れようという事に持っていきたいばかりに仕掛けた部分も無きにしもあらずでした。

仕掛けたもう一人の側の郡司氏からの提案で、それなら sRGBと AdobeRGBとどれだけ違うのか、実際に検証してみよう、という事で3月15日にスタジオエビスにおいてMD研究会/電塾/アダムス/写真家ユニオン合同の、DTP WORLD誌上実験室公開実験が行われる運びとなったのです。

 さて、前置きはこのくらいにして、その結果をMD研究会の郡司氏がスピーカーとなり、発表していただいました。

RGBデータはガンマで見かけが全く変わる。しかもカラースペースが違うと全く色が変化してしまう。デバイスに依存するものだからプロファイルが必要。今更ではあるがこのような解説から(実はもっと前振りはあったのですが割愛します)郡司氏はお話を始められました。やはりここは重要な部分なのです。RGB画像を正しく観察したければプロファイルが不可欠だ、という事ですね。そして、そのデータを作る際に AdobeRGBにするのか、 sRGBにするのか、というところではカメラ、および現像ソフトによっておなじ AdobeRGBでも色作りがきっと違うのだろう?、 AdobeRGBなら、 AdobeRGBのカラースペースをどう使用しているのかを知ることによって AdobeRGB、 sRGBという議論に終止符を打てるのではないか、ということを検証しようというわけです。もちろん検証には現在唯一(私の知る限り) AdobeRGBを再現出来るディスプレイとして一年ぶりにNEC三菱電機ビジュアルシステムズ株式会社 さんにご協力をお長いしてRDF225WGを使用しました。相変わらずこのディスプレイは美しいです。どんなものでもきれいに発色できるというわけではありませんが(もちろんですよね)きちんと AdobeRGBの色域を網羅しているので、鮮やかに美しく仕上げたデータは確かにそのように発色します。とてもまじめな作りだと郡司氏も評価しておりました。お金さえあれば、CRTはこれ以外に考えられませんね。(でもこのクラスの液晶のものが欲しい!)というのは議論の中に 私たちの持っているディスプレイではAdobeRGBは見えないじゃないか、という事も大きな問題としてあったためです。AdobeRGB再現可能のディスプレイと sRGB対応ディスプレイ、この2種類はどう見え方が違うのでしょう。
 
検証は電画の阿部氏が用意したやたら発色の良い糸のサンプルを全く同じ光源(ソラックスという太陽光を見事に再現した光源を使用して行われました。全てRAWデータで撮影され、その後専用のドライバで sRGBと AdobeRGBに書き出したものを比較します。これはビッグメーカー代表という事でニコンとキヤノンに出場してもらいました。この代表の選考は私たちが勝手に決めたものですが、以前からこの2社の方向性が大きく違うよね、という事はしばしば話題になっておりました。(コンシューマー機代表としてミノルタのディマージュA2も参加させましたが、これが意外に良い結果を出しており、注目されていました)

  確かにRDF225WGではニコンのデジタルカメラもキヤノンのデジタルカメラもその差がはっきりしていました。でも、 sRGB対応のディスプレイ(確か機種はRDF223Gでかなり質の高い表示をしてくれていました)ではニコンのデータはシアングリーンなどの高彩度域で明らかに差が感じられますけれども、キヤノンのデータではあまり差が出ないのです。ちなみに私の持っている PowerBookG4 15 inch のディスプレイではどちらのデータにも差があまり感じられませんでした。これは一つにはニコンとキヤノンでそのデータの作り方に明らかに差がある事を示しています。ニコンは AdobeRGB前面にマッピングされますが、キヤノンはある意志が働いて絵作りされているような印象です。ある意味、印刷インキのカラースペースに近似しており、ひょっとしたらそのあたりも含んだ絵作りかもしれません。実際に私たちはキヤノンから出たデータはターゲットになる色彩の彩度、明度、色相などをチューニングし、最後に彩度を上げて仕上げています。積極的に画像を調整するのでしたらこのほうがありがたい気もしますが、ニコンに比べて、かなり地味に見え、 AdobeRGB対応ディスプレイでは差が出るものの sRGB対応ディスプレイでは AdobeRGBと sRGBの差がほとんど見受けられないのです。(このあたりが sRGBか AdobeRGBという議論が増えた一因か、という分析もありました)
しかし、私の PowerBookG4 15 inch のディスプレイで見ると(ノートブックの中ではまともとは言え、かなりガモットが狭いのは検証済みです)全てのデータが同じに見えます。これも同じ sRGB対応のディスプレイとはいえ、その性能差があるのだな、という事に気づかせてくれました。つまり、 sRGB対応ディスプレイでも、素性の良い、きちんとキヤリブレーションされたディスプレイなら AdobeRGB、 sRGBの差は(正確ではないが)ある程度確認する事が出来るという事です。逆に言えば、程度が悪いディスプレイではどうあってもその差は視認できないという事です。

ソフトの解説をする庄司さんと画面を食い入るようにに見る塾生たち

今回活躍してくれたのはNEC三菱電機ビジュアルシステムズ株式会社 RDF225WGともう一つ、やはりMD研究会の庄司さんが作ってくださったツールがあります。(本人はジグといって居られましたが)RGBセパレーターとガモットチェッカーの2本です。ええ、と彼が極悪2号なのですか?何だか凄い名前ですね。
RGBセパレーターとはCMYK変換をソフトプルーフするもの出なかなか魅力のあるユーティリティです。プロファイル変換の前と後を同時にを確認出来るツール。なのですが、最高なのは各分版を見る事が出来ることです。分版のグラデーションを見るとそれが良いものかどうかが一目瞭然だそうです。また、これは6版にも分版して見せる事が出来ます。つまりヘキサクロームにも対応しているのですね。

ガモットチェッカーは今回もっとも活躍しました。撮影したデータをそのプロファイルを参照し、CIE xy色度図上にマッピングしてどのような色彩をそのデータが持っているかを具体的にグラフとしてみる事が出きる素晴らしいソフトです。これはいくつかのサンプルを比較する時に重要な方法論となるでしょう。もちろんLabでも確認でき、各明度幅で輪切りにしてみる事も出来ます。またプロファイルを付け替えた時にでる差分を確認も出来ます。もちろん実際にプロファイルの付け替えも、元データと出力したプリントアウトなどをi1 Colorなどで読み込み、出力と掛け合わて表示する事も出来ます。これで元データからあるプリンタから出力された時に、どれだけ正確な色彩を伝達できたのかが、一目で客観的に確認できるというものです。

さて、これらはMD研究会から派生したMDクラブを通じて手に入れる事が出来るようになるそうです。このあたりはさんべさんから説明がありました。
年会費1万円。ドングル代金5000円。しめて15750円で年間4本の面白いジグ、ソフトを供給してくれるそうです。私も早速入会する事にしました。
このようなものが欲しい方は、
ADS00835@nifty.com
にメールしてくださいとの事です。

さて、印刷のためのカラーマネージメントと単なる写真作成のためのカラーマネージメントは違うのでしょうか?いえ、そこに違いなどないはずです。郡司氏ももちろん sRGBは今後も印刷、製版の世界に入り込んでくるだろうとおっしゃっていました。ただ、基準は高いところ、より広いカラースペース(広過ぎない)にあるべきだというのです。でも、きれいな印刷物を作りたいなら AdobeRGBにしなさい、 sRGBは印刷のために作られたカラースペースではないのだ。デバイスの問題としてカラーマネージメント以前にフィルム、感材の色域から作られたプリンターもいまだに主力機種である事も事実。(それらは実際には sRGBに近似した入力をサポートしている)、それらも含めても、と確信犯的におっしゃいます。私はカラーマネージメントが生きてさえいれば、 sRGBでも AdobeRGBでも構わないという意見の持ち主だったのですが、はて、 sRGBでなければいけないというシーンはなかなか探せなくなってきたようです。逆を言えば、 sRGBで出来る事は AdobeRGBでも問題ない古都の方が遥に多く AdobeRGBで出来るが、 sRGBでは出来ない事の方が問題のようです。

問題の sRGBと AdobeRGBどちらが良いか、という事に関しては電塾自体すでに3年ほど前から“印刷データは AdobeRGBが優位”で認識が一致していることもあり、両方問題ないのなら AdobeRGBで良いだろう、という事を再認識しました。というよりも私たちも印刷、製版の側から“データは AdobeRGBでくれ”と言ってくださるのを待っていたのです。ただ、出力デバイス、シーンによては sRGBの方が効率的な場合もあるでしょう。(WEBの世界はまさしく sRGBですし)その場合は AdobeRGB to sRGB のプロファイル変換が(逆はかなわん、これが選択するなら AdobeRGBのもっとも大きな意味かもしれません)生きるでしょう、という事を確認した。

郡司氏からは問題は sRGBが良いのか AdobeRGBという事ではなく、実は印刷はPDF/Xでは AdobeRGBとして規定されている。これが大前提ですとおっしぃます。 印刷では重要なシアングリーンを含める事が出来るAdobeRGBから Japan Color 2001 Coated のプロファイル変換を書けているからこそ、だからこそこのデータの品質が保証されるのであり、万人が安心して使用できるデータになるのだと話されました。むむ、なんだか、ここはいやおうもなく納得させられてしまう部分であります。

その他にもJMPAはオフセット輪転機用で、 Japan Color 2001 Coated は枚葉印刷機がターゲットだそうです。何でもかんでも Japan Color 2001 Coated ではないのですね。またRGBは256ビットですが印刷は実際には180ビット程度しか諧調再現はしないそうです。それでも諧調を調整するような場合は16ビット処理が奨められるでしょう。また、現状の印刷機もCMYK to CMYKのプロファイル変換で対応できるし、枚葉機でオフセット輪転用にプロファイル変換も可能だという事をお伺いしました。

単語の羅列なので、少々危険かもしれませんが、以下のような言葉も聞こえましたので書き出しておきます。説明がつくとなるほどとうなづけることばかりでした。
DTPは作る側と使う側があれば良い。売る側はどうにでもなる。
ウィンドウズはカラーマネージメントは出来ないねえ。
フロンティアは sRGBで良い(しかたがない?)。
校正機からでるチャンピオンデータはこわい。
高くなっている印刷機の品質。
リョウビ、小森、もドットゲインが小さい。7%くらいか?。
ハイデルの良さ、は鉄を寝かすことにある。
水の良さが印刷品質を決める。
いやいや、大討論会のはずが、結構寝ていられないセミナーとなりました。郡司氏始めMD研究会の皆さまに感謝します。参加していただきました皆さま。ありがとうございました。

最後に江口氏から社内事情について面白いお話があり、RGB運用ガイドブックの4個のカラー見本(例の青空のヤツです)は一つのRAWデータから出力されたものだと言うことを記載漏れしていたといって、訂正して居られました。このガイドブックが欲しい方は
http://www.apa-japan.com/
にて。電塾でも会場で配付しております。

今日の私の感想はああ、これでやっとトリガー鹿野としての役目が終わったンだなあ、という印象でした。私個人も AppleRGB を主張してきた時代から AdobeRGB を主張した時代があり、あまりに sRGBのカラースペースで変換せずに、展開され、それなら無難な sRGBで、と折れ曲がった時代もあった。(その時代も内部処理は AdobeRGBだったのだが)これで(問題は受け入れてくれるかどうかが大きな問題だったので)安心して AdobeRGBを使える。でもこの世の中の大多数のデータはタグさえ持たない sRGBだ。携帯電話の画像は sRGBでさえないようだ。そうなるとプロファイルを埋め込む運動はまだ続けないといけなさそうですね。 NEC三菱電機ビジュアルシステムズ株式会社 RDF225WGはいいですねえ。欲しいけれども、まだ手が出ません。せめて sRGBディスプレイでも素性の良いものを使いましょうね。あたしの使ってるディスプレイもかなりひどい事になってきたので、そろそろ買い替えなきゃ。

写真:電画スタッフ  文: 鹿野 宏