デジタルカメラ学習塾5月のレポート
 
 
第0部 ■恒例 自己紹介と自己主張の時間(13:30〜14:45)
参加者全員
 
 

 恒例の自己紹介はついに晴れて第0部として独立し、開始を30分速めてのセッティングとなった。長い間、途切れることなく、自己紹介ということを推し進めてきた成果だろう。私の記憶では、当初数人の方々は自己主張をされている場合もあったが、ほとんどは名前と所属以外にお話にならなかったように思う。現在ではセミナー中も無口な(ほとんどのセミナーがそうだが、質問はセミナー中ではなく、終了後に個人的にするというあまり戴けない風習)方々はどんどん減り、自己紹介の際に、自分が聞きたいこと、自慢したいこと、最近考えていること、などを表現なさるようになってきた。誰もがそうしなくてはいけないということは無いが、全体がこんな雰囲気の中で行われる勉強会はあまり例を見ない気がする。

 
 
第1部 ■ソースプロファイルを有効に使いこなすために(14:45〜15:15)
電塾塾長 早川廣行
 
 

 例によって自己紹介は長引き、大幅にずれ込こんだが、久しぶりに早川塾長の講演で第一部はソースプロファイルは使用出来る、という大前提で開幕した。但しその際に勘違いされている事柄を、とりあげ、ソースプロファイルきちんと制作するための基本作業の説明からはじまった。これはプロファイルとは何ぞや、ということを理解すれば一目瞭然。ソースプロファイルをつくるための条件として、正しいプロファイル用チャートの撮影の仕方、ということを第一義にあげていた。むら無く反射無く、均一に証明された色温度の揃った光源を用意する。これが正確なプロファイルをつくるための第一歩だ。
 時間が押していることを気にされたのか?プロファイルメーカーの使用仕方については大急ぎで説明された。が、なかでもプロファイルの運用に関して、16ビットの重要性について口をすっぱくして繰り返されていた。
 もう一つ。こうして得られたプロファイルは何にでも通用するものではなく、同一の光源、細かく言えば同じレンズにたいして、結構有効だ、ということだ。そして光源をデフューズすれば、プロファイルだけではなく、当然そのパラメーターも加味して仕上げることになる。入力プロファイルがあるからといってそれだけで安心出来るものではない。何とかとはさみは使いよう、間違えて使用すれば両刃の剣となるのだ。

 また、ワーキングスペースにカスタムプロファイルを使用するべきでないが、撮影作業段階での正しい入力プロファイルの使用は利点が多く、さらに流通性を考えると、作成したカスタムプロファイルを添付して外部に出すべきではなく、流通させるデータにはAdobeRGB、あるいはsRGBなどの汎用的なカラースペースのプロファイルをつけるべきとも言われていた。
これらに付随して、N-Photoの永嶋氏(電塾運営委員)から8ビット、16ビットの使用についての意見、またモニタキャリブレーション時の環境光について詳しくお話をされていた。自己主張のコーナーで主張出来なかった分のお話をされた? ようだ。

 
 
第2部 ■グレタグマクベスi1新シリーズの紹介
株式会社恒陽社 石塚 晃/永島孝也
■i1センサーで調整するEIZOのLCDディスプレイ御紹介(15:15〜16:35)
株式会社ナナオ 山口省一/山上 剛/平加忠彦
 
 

 恒陽社の永島さんから無謀にも?[バリエーション]を増やすi1の紹介が為された。
内容はi1ディスプレイの発表、新価格設定、環境光測定機能の追加。などで、ソフトの機能充実し、チャートに関しても大幅にパッチ数を追加したチャートも用意されたもよう。i1ビーマー(液晶プロジェクターを測色、プロファイルを作成するアダプター)とi1モニタ(廉価版のモニタキャリブレーターで定価¥50000ナリ)の発表が目を引いた。 i1 Publish with DC以外にも廉価版のi1の追加など、内容的にはうなずける商品構成だった。

 商品構成の説明の後、石塚氏がi1ビーマー、プリンタ測色の様子デモンストレーションを行った。カラーパッチがディスプレイ全面に出るようになったこと。また、分光光度計であるがゆえの特性を生かした、環境光の測定デモなども合わせて行われた。

 さらに、i1のキャリブレータを使用しでキャリブレーションするEIZOのLCDキャリブレーションディスプレイのデモンストレーションが行われた。

 株式会社ナナオの山口省一氏から開発意図としてプリプレス向けであったこと、開発中からカメラマンにもメリットがあると言うことで、早川、阿部氏に評価を依頼したという経緯をお話された。今後の画像処理用LCDディスプレイの方向性として内部にキャリブレーション機能を内蔵したディスプレイのメリットとして、18インチディスプレイを2週間使用した早川氏から、使用感を披露された。18インチで25から30万円。精神的にも、諧調的にも十分に満足出来る、ということだ。特にハードウエア的にしかも内部的に10ビットで処理しているらしい。そのおかげで色彩だけでなく、LCDディスプレイの弱点であった諧調飛びも思いきり押さえられているということだ。(実際、美しい諧調表現をしていた) 阿部氏により実際のシステム(カラーナビゲーター)の使用法、そのデモンストレーションを体験出来た。

 最初に輝度(カンデラ)、白色点(色温度とXYで指定出来る)、ガンマを指定する。という説明に、カンデラとは何ぞや、といういきなり論点の違う方向に話が盛り上がったのは面白い。このあたりのことに興味をもたれる向きはカラーマネージメントルールブック、P20、P21を参照してください。また安藤さんのWEBページ「光と光の記録」 ここも非常に興味深い情報が詰まっており、とても勉強になるページですのでお暇な時にぜひどうぞ。  後は通常の測色と同じ方法。但しこれはアナログ的に、ハード的にあわせ込んでいる。 キャリブレートが終わると、ギャマット、数値が表示される。基本はガンマ2.2にそろえられているそうだ。

休 憩:16:35〜16:50

 
 
第3部 ここまできたカメラ付き携帯電話の画像品質(16:50〜17:20)
電塾運営委員 山田久美夫
 
 

 山田久美男氏の講演が始まったが、最初に高速CFカードアダプターの紹介が行われた。例によってウィンドウズのみの利用で、もちろん、マシンに直結されたPCIカードスロットでのみ有効トのこと。実際に350MBのデータが非常な高速で(体感で5〜60秒ほど)データが転送されていた。もちろん、CFカード自体の速度も物を言うらしい。

待望の最新カメラ付き携帯電話の情報で130万画素CCD、スーパーCCDハニカムを採用した出力100万画素のモデルなどの情報が披露された。きわめつけはA1にプリントされた画像の素晴らしいこと。近くで見るとさすがにあれは目立つものの、3mも離れると全く問題ない。ということはキャビネぐらいは十分な画質でプリント出来るかも。データはDCF準拠で、Exjf2.1に対応。なぜ2.2ではないかというと、そこまでの色彩を保証出来ないから、というとても、まじめに色作りしている携帯カメラです。そのレンズは徹底的に周辺の[ゆがみ]を矯正されており、それはバーコードを読み取ったり、OCRに対応させるためでもあるらしい。

 其の他に特徴として、撮影中も携帯電話は動いており(もちろん着信があったらいつでも電話に出られるため)そのために画像の取り込みは遅い。フル充電で一日200カット撮影可能。(彼は200カットで終わっちゃったといっていたが)ストロボは搭載していない(動画も考えると当然だ)のだが、懐中電灯にも使用可能な白色LEDを搭載。かなり明るいのにはびっくりした。この光源はきちんとプロファイルをつくっているらしく、とても素直な発色をするということだ。その他に、現状ではフル画像を携帯では送れない。メモリーカード付き、などの情報も提供された。

 
 
第4部 「技術者に学ぶ」シリーズ第三弾「マスター郡司のつぶやきin電塾」(17:20〜19:00)
MD研究会会長 郡司秀明
 
 

 郡司さんの講演は予定時間を30分ほど過ぎた、5時半に自己紹介から始まった。出身大学が千葉大で、写真とコンピューターが好きな青年だったらしい。その後大日本スクリーンに入社。スイス印刷協会、ドイツ印刷協会などでうまくいかなかったGCRを損域量のコントロール。ハイエンド用のCCDの開発し、平面スキャナーでもフォトマルだった時代にそこにCCDで参入。世界60数カ国を回り技術を研さんされた。自分の役目として、自分が納得している話しをすることを自ら課している。空が青い訳を例にとってお話しされた。ご自身に教育僻があること、セップスなども使ってきた。校正機、印刷機も使ってきた。そんなところで経験した経験値が今の自分を形づくっているとおっしゃっていた。

 ハイデル、小森クラスの印刷機と他クラスの印刷機などは当然精度の違いがある。精度が違えば、当然プロファイルがうまく動かない事もある。といったことを皮切りに、インキ被膜の圧に始まる印刷機を安定させることの重要性についてのお話をされた。インキを盛るとドットゲインが増える。オフセット印刷の理想的インキ飛沫は1mm程度であり、ドットゲインのでやすさは印刷機のセッティングで変わる。たとえば木のハンコとゴム印、印圧、ハンコの台の柔らかさ、つけるインキの柔らかさでも変化する。ここを安定させるべきだという。印刷も白地が見えているうちはいいが、33%を越えると印刷インキは濁り出す。それがドットゲインの設定により、大幅に、諧調、色彩に影響を与えるとも言われた。印刷は定数であるべきで安定することが第一義。変数は元のデータ、あるいは製版に任せるべき。という持論をさまざまな例を挙げて説明する。この辺はかつての電塾の大命題、印刷機は巨大プリンタになりうるか? に通じるところがある。

 特に印象に残ったのは、一口にグレーバランスといってもヨーロッパ7%フランス5%日本はシアンを12%まであげる。それはおおきな文化の差があった。しかし、いつの間にか、ヨーロッパはその差を乗り越えて、標準印刷の設定というものを持つに至った。(アメリカでも然り)日本でも出来ない訳は内という郡司氏のお話は心強く私に響いた。

 また8色機などで両面印刷をする時に、先ずり後刷りでドットゲインに変化が出ることも指摘し(これって確かMacWireのつぶやきにもでていたね)それをコントロールするためにそれぞれ違うプロファイルを用意するという理想的な利用方法にも言及した。

 全てをレポートする訳にはいかないが、もう一つの警鐘として、カメラマンがインプットプロファイルをつくるとやり過ぎる可能性があるという点に触れていた。しかしながら色彩を揃えることは必要あるとも認め、これはプロファイル運用ではなく、個別カスタマイズとでも呼ぶべきと提案されていた。

 その他に、印刷で出てもRGBではでない色は結構あること、 AdobeRGBまでは8ビットでハンドリングしても可、カメラマンにとっては印刷しやすいRGBデータを流通させるこれが大事なことだとも、やはり画像の仕上げの肝はシャープネスにある、とも言われた。

私が提出した質問で、印刷用のプロファイルではなく、スタンダードプルーフプロファイル、というようなものは期待出来ないか、という問いに、今後、Adobeがアクロバットのニューバージョン、Photoshop のニューバージョンでその答えが用意されるだろうと答えてくれた。これも明るい未来につながりそうなので、嬉しい。

 さて、今回のレポート、出来るだけ私見を交えないように努力はしているのだが、どうしてもそうはならない。(私見の全く内レポートって言うのも変なものだけれども)とはいえ、語りたい部分ももすこしあるので、その部分だけはカノッサンの屈辱に掲載したいと思う。まだ私の拙文をこれに懲りずに読んでくださるという向きは5月13日の日記も参照してくださいませ。

文: 鹿野 宏