Nikon D3テストレポート(β機)
 
 

ファーストインプレッション…

 Nikon D3でテストシュートした瞬間に感じたことが「まったく凄いデジタルカメラが出てきたものだ」というもの。筆者にとっては、Nikon D1 を初めて触った時に匹敵する感動があった。それはまさしく画質において「ハイエンドデジタルカメラバッグ同等の階調再現力とと画質」を持ち「ハイエンドデジタルカメラバッグも、銀塩フィルムも全て凌駕する高感度ながら、高感度域においてもコントラストが強まることもない」高品質なデータを見せてくれたことだ。もちろんカメラ自体の機構的な進化も有るのだろうが、まず、その画質に驚嘆した。

未知の超高感度ゾーン

 商品撮影レベルでISO感度200から800までを使用でき、1600 、3200、6400では舞台
撮影、スポーツ、スナップという低輝度、あるいは高速シャッターが必要な被写体を作品
として仕上げるレベルでカバーする。商品撮影にISO800という高感度が必要なのか、といわれると、ほとんどの場合はNoだが、実は出張撮影の際の物撮り、工場内の巨大な商品や社内のイメージなど、この感度が活躍する場所は結構多い。イメージ的な撮影であれば感度3200まで十分に活用できる。感度6400がそのレベルかどうかは個人差もあるだろうが、
私は「かなりいける」と感じた。さらにH-1(12800)、H-2(25600)というこれまで
聞いた事もない高感度帯で、「記録しなくてはいけない被写体」を「人間の裸眼が見る事の出来る明るさ」なら、何でも記録してしまうという、凄まじいまでのパワーを持つ。1メートル離れたロウソクの明かりで照らされたものが、十分に写真になるのだ。写真が「情報を記録する手段」であるなら、今まであきらめていたが故に撮影の用途がなかった被写体もこのカメラの出現によって「仕事の相手」になりうる。これがD3の最大の「売り」だろう。

データはハイエンドバックタイプデジタルカメラを彷彿

 超高感度もそうだが画像処理を施した時の驚くほどの粘り強いシャドウ部や中間部。
バックタイプ以外でこれだけパワーを持ったデータに巡り合えたのは初めての経験だ。
ハイライト基準で撮影してさえいれば、ほとんどのシャドウ部分を持ち上げることが可能だこれまで、デジタル撮影において、シャドウ部を持ち上げることは…特に高感度(といってもISO400や、800程度)でタブーとされていた。通常、最低感度時はシャドウを多少は持ち上げても問題無いが高感度側に行くに従って、画像のコントラストは上がりノイズの発生率も大きくなる。彩度の高い色彩や、もともとエッジが効いている高コントラスト部分などは大概その「際」で、お互いの色がにじみ出す。おまけに色がむらむらしていたり、きたいないノイズが増加したのもだった。
 しかし、D3は感度200や400はもちろん、感度3200であっても、かなりシャドウを持ち上げた状態で変なノイズが発生することがない。6400を超えると、さすがにノイジーな画像になるが、拡大使用でなければ十分な品質を持つ。Nikon D3が行っているノイズ対策は、悪玉ノイズはできるだけ発生させず、写真的な強さにつながる善玉ノイズはうまく残す…無理をしない。デジタルカメラの常識を覆すこんなことがなぜできたのか?

 それを簡単に言うと、「データの入り口でいかに豊富な情報を取り込み、それを壊さないように大事に扱うか」という事を実践しているからだ。「オーディオマニアの多くが真空管アンプに凝ったり、ソリッドアンプに超高級品質のものを用意したり、スピーカーや音楽を聴く部屋その物まで思いきり金をかけたあと、最後にたどり着くが音の入り口。たとえばカートリッジをシュアーに変えた途端にいきなり素晴らしい音が鳴り、納得してしまう。」
電塾塾長の早川氏の言葉だが、筆者もまったく同様の経験を持っている。勿論アンプやスピーカーだって「それなりに」良くないといい音は鳴らない。でも大元の情報の質が低ければなんの意味がない。きたないデータをいくら超高速のマシンを使用し、金額の張る画像処理ソフトウェアを使用し、高価なプリンタを使用してプリントしたとしても、それはただの
厚化粧で、ごまかしに過ぎない。端正、かつ階調の豊富なデータを用意してこそ、本来の
意味の画像処理も活きるものだ。

--------------ISO200 --------------------------ISO400-----------------------------ISO800-------------

------------ISO1600--------------------------ISO3200----------------------------ISO6400 --------------

-----------ISO12800-------------------------ISO25600-----------------------------------------

画像をクリックすると原寸大画面が表示されます。

 感度200から25600までの画像を並べてみた。F値は全て2.8で、手持ち撮影。200から800までは何処がどう異なるのか見分けがつかないと思う。感度800で平坦で暗い場所に
やや良性のノイズを感じる程度だろう。感度1600以上6400までは暗く平坦な部分に確実にノイズが発生し、徐々に明るい部分にもそれが感じられる…が、ここで発生しているのは良性ノイズと判断できる。感度12800でさすがにイメージセンサのノイズが乗り出すがこれなら無理を言えば使えない事はない。感度25600という恐ろしいまでの高感度ではさすがに青い輝点やあり得ない方向性を持った悪性ノイズが一気に増える。とは言え、これは目を凝らさないと見えない程度の光でも撮影できるという事だ。エッジや色彩の“ブレ”や“ぼけ”はほとんど認められないし、コントラストも大きな崩れはない。つい最近まで感度800は我慢して使用するのが常識だった私には、信じられない性能だ。感度6400がこれまでの感度800よりも質的に素晴らしいと感じた。ニコンは推奨していないが、感度12800はもちろん、感度25600という世界をこのレベルで実現しているというだけで感動ものだ。ちなみにこの画像にはノイズリダクションはいっさいかかっていない。

ハデな色彩が多い状況でISO6400で撮影してみた。画像の中のエンボスになっている部分を100%で表示している。

6400という高感度でありながら、これだけサンタのヒゲを再現している。
ちなみにものおヒゲはサンタさんの自前。

色彩が入り乱れる部分でも色がにじんだり、ぼやける事はない。イルミネーションの高輝度部分の描写も問題ないようだ。

こういったところでも、レンズのアウトフォーカスは別にして、緑と赤のエッジ、“ぼけ”ながらも背景の黄色とその手前の緑もきちんと分離しているところが頼もしい。


 収得した元データの品質向上により、一眼レフタイプ/デジタルフォトの品質は一気に
ステージを駆け上がり、バックタイプに匹敵(高感度という意味では遥かにでは凌駕している)するレベルの品質を手に入れたといっていい。それに寄与しているものは、約8.6μの大きなピクセルピッチを持っているためにイメージセンサが光をため込むパワーが大きく、ノイズも非常に少ないイメージセンサだ。イメージセンサ自身のノイズ発生率が低いのだが、さらに撮像素子のノイズ特製を分析し、ノイズ分離情報をASICに組み込み、絵柄とノイズを切り分けたという。
  それだけでなく、かつてはデータの転送路内で不要なノイズを拾ったり、発生させたりしていたようだが今回それらをことごとく押さえ込んだとも聞く。あまり大きく取り上げられていないのだが、今回の転送路は非常に良くできており、転送距離をごくごく極限まで縮めたことも大きく貢献しているようだ。さらに、現在考えうる最高量の光を集め、フォトダイオードに届ける仕組みを完成しているそうだ。これらが、きれいなデータを取り込み、高感度化、ローノイズ化に寄与しているのだろう。
 イメージセンサからの出力が14ビット。12チャンネル並列読み出しで、きわめて短い距離でアナログ前処理回路に転送され、撮影時の光源に合わせて、RGBのバランスを整えて、ADコンバータに送られる。アナログ信号はADコンバータ内でデジタルに変換され、この時点で14bitものおごったデジタルデータとして作り上げられる。ASICに取り込まれたデータはさらにハイビットの16ビットで演算され、その後は全てのパイプラインで16bit転送されるのだ。この演算に16ビットもの大量のデータを使用しているデジタルカメラは少ないはずだだからこそ、微妙な階調変化も切り捨てられることなく、維持されているのだろう。ASIC内部では設定に応じて、RAWデータ、JPEGデータの場合は、さらに膨大な量の情報(特に1005センサを中心としたシーン認識システムからの)を加味しながら現像処理が加えられ、メディアに書き出される。ニコンはこの一連の動作ををEXPEEDと名付けたらしい。高品質のデータの情報を余さず次のシステムに伝えるために、この16bit転送が採用されているのだ。
 これだけ、回路に負担をかけ、さらに膨大な量の情報を加味してオート露出、フォーカスホワイトバランスの判断も行っているため、その精度はもちろん今までの中で最高峰だ。
(私はまだ完璧とは思わないが、以前よりもはるかに精度が上がったことは事実。実際にはAWBにシーン認識を追加し、画像の中から白を探し、その地点でホワイトバランスを取るのだが、白検出の演算規模が2倍になったという。)さらに変倍型倍率色収差を軽減するために、色づれ量を正確に測定、変倍処理を行う際に最適な位置にその処理を入れる事ができて初めてカメラに実装可能になったらしい。これは発生した色ズレをフィルターでカットしているのではないため、ぼやけた感じもほとんど除去できる。画像処理過程内に機能を組み込み撮影時に適用しているため純正レンズでなくとも、この恩恵にあずかる事は可能だ。ただし解像したエッジがある程度しっかりしていないと、その効果は弱い。その意味では解像感があるレンズの方がより効果的に効くはずだ。
 色再現エンジンは、色処理のbit精度向上はもちろん、色分離を明度、彩度も加えて高めたこれも階調情報が十分にあるために彩度を上げても色飽和をおこしにくい、という大前提があるためだ。

通常は10〜12ビット取り込み、転送が多い。で、14ビットや16ビットって見かけの数字が2ないし4増えただけなのだが、それがどんなものか、っていうと…
8bit=256×256×256=1,670万色
10bit=1,024×1,024×1,024=1,073,741,824 約10億色
12bit=4,096×4,096×4,096=68,719,476,736 687億色
14bit=16,384×16,384×16,384=4,398,046,511,104 4兆3980億色
16bit=65,536×65,536×65,536=281,474,976,710,656 281兆4749億色
つまり、 10ビットから12ビットになる時に約69倍のデータになる。で、10ビットから14bitになると4,398倍。10ビットから16ビットになると281,475倍というとてつもない
情報をハンドリングすることになるのだ。無限に近く供給される、家庭用電源に比較して、あの小さなバッテリー(しかも撮影枚数をこなさないと、ユーザーにすぐ怒られる)、さらにパーソナルコンピュータに比較してあんな小さなASICの中でよくぞここまでおごった仕様をしてのけたものだと思う。それでもアナログの豊かな階調には今一つものたらないという声もあるのだが…。それにしても、多分現時点で最高の品質をたたきだしている。その割りにはさらに高速化されているというのがまた凄い。

ちなみに億を超える数字をウィキペディアなどで検索して見たが、以下の通り。
地球上の人口が約66億4千万人。
4000億が天の川銀河内の恒星の数。
10兆が人体の表面にいる微生物のおよその数。
60兆が人体を構成する細胞のおよその数。

微生物の数って何だかよくわからない。でも、16bitって人間4.5人分の細胞の数…やはりよくわかりませんね。とにかく物凄い数だという事で…。

広ダイナミックレンジ

 見かけのダイナミックレンジの広がりは、絞り値で言うとD2Xsに対して0.5段程度といわれ、さほど大きくはない。個人的にはもう0.5段は欲しいところだ。しかし、シャドウ側の
耐性が驚くほど伸びているので、現実の使用感としては2段ほど追加しても差し支えないと
感じる。どの程度シャドウ部を持ち上げる事が可能なのかを先の画像を使用して確認してみよう。これを上手に使ったのがアクティブD-ライティングだ。

シャドウ側の耐性を確認するために、先ほども出てきた感度200画像の暖炉の中に当たるシャドウ部分を切り出してみた。まずほとんど見えないと思う。そこで、なかなり極端なトーンカーブをかけて、シャドウ部を持ち上げてみた。従来はけして使用する事がなかったようなかなり強力なカーブだ。

シアンの枠の中を100%表示している。


するとこれだけシャドウ部を抽出する事ができた。カーブの形状を見れば一目瞭然だが、“おきて破り”に近いカーブをかけているにもかかわらず、ノイズや色むらなどのマイナス要因はほとんど見られない。

感度800の画像に同じようなカーブをかけて見た。もともとの見え方は感度200の画像と同一。ややコントラストは上がって見えるものの、この段階でも悪性ノイズは見えない。

こちらは感度3200。さすがにノイズが出始めるが、これだけカーブで持ち上げても、この程度なのは驚くべき事だ。実際にはこの25%の大きさで印刷される事になり、印刷時にはほとんど気にならないだろう。明るい側の質感はやや失われ始めているが、感度3200の画像に下図のカーブをかけている画像だとは説明されなければわかるまい。

 ダイナミックレンジを確認しするためにNikon D2X とFUJIFILM Fine Pix S5 Proフ3機種で確認してみた。ハイライト側に白い壁、白い被写体を置き、シャドウ側に黒い被写体(当社のRB67の最後のご奉公だ)を置いた、いつものセットを使用する。照明は傘板のストロボ
一灯を左から。跳ね返りはないように反対側にはレフ板を置いていない。この状況で1/3絞りずつ絞り込みながら撮影してみた。Bridgeでまとめて表示しており、一番上の2列、星二つの221〜228がNikon D2X 、中央2列、星三つの231〜238がNikon D3だ。下側2列の星5つがFUJIFILM Fine Pix S5 ProBもっとも明るいものがF9で、もっとも暗いカットがF20で、
2・2/3段の変化となる。そのままの明るさでOK範囲がグリーン。明るいけどトーンカーブで補正可能範囲がイエロー。暗いけどトーンカーブで補正可能範囲がブルー。補正不可能なのものがレッドのタグがついている。D2Xの場合、OKカットは1カットだけで、その前後のカットがトーンカーブを使用する事によって使用可能になる。ところがD3は、そのままでOKなのものが2カットあり、トーンカーブで救えるものが、明るい側に延びてきている。シャドウ側は、F20 のものまでしか表示していないが、実はもっと使用可能で、F22、F25、F29、F32からも適正画像を引き出す事が可能だった。ダイナミックレンジの広さで定評のあるFUJIFILM Fine Pix S5 ProヘさすがにOK範囲が広く、F9からF13まで(好みはあるが)使用可能。さらに明るい側にも、暗い側にも1/3段離れたカットからトーンカーブで調整する事が可能だった。

上の画像もクリックする事で100%画像を見る事が出来ます。

 というわけで、見かけのダイナミックレンジの広さはNikon D2X >Nikon D3>S5 Proの順だが、トンカーブを使用して補正可能な範囲を入れると、Nikon D3に軍配が上がる。シャドウ側のエッジ、質感、色彩の描写力でもD3は S5 Proを凌駕していた。抹ェ、S5 Pro以上のダイナミックレンジを持つカメラは出てこないだろうとおもて鋳ただけにショックだ。また、ここまではJPEGデータからの判断でRAWデータからの展開も含めるとなると、さらに「使える範囲」は広くなる。見かけ上の広がったダイナミックレンジは0.5段だが、そのポテンシャルは実に深いといえる。

RAW圧縮

 RAWデータの記録方式に少々異なる点がある。勿論RAW12bitよりもRAW14bitの方がハイライト側に少々延びる。左が12ビットRAWから展開、右が14bitRAWから展開したもの。ハイライト部に現れたRGBのばらつきの差がわずかに見受けられる。(トーンジャンプのように見える部分)この画像はあらかじめオーバー気味に撮影して、Capture NXで思いきり補正してみたもの。もともとオーバーなので完璧にはならないが、この程度の差はあるという事だ。ここまで追い込んだ時に12bitと14bitの差が初めて見られる。画面の中に輝度が高い白が多く含まれており、それを少しでもきれいに再現したければ迷わず14bitを選択しよう。

 いくらRAWデータが高品質だからといって、あまりにデータ量が大きいのは勘弁してもらいたい。しかしRAWデータの品質は保ちたいというのが人情だ。12ビットと14ビットの差は明るい側にグラデーションが多い被写体で見ることができる。また圧縮RAWとロスレス圧縮の差は、ハイライト側のトーンにやっと確認することができる。ロスレス圧縮と無圧縮の差は筆者にはほとんど確認することができなかった。というわけで、お勧めはデフォルトのロスレス圧縮。12bitと14bitは、被写体によって切り替えればいいだろう。ハイライトにトーンが多い時は14bit(ロスレスで約15MB)を選択し、通常の被写体であれば12bit(ロスレスで約12MB)で十分だと考える。シーン、あるいは好みで使い分けていいだろう。
筆者はメディアの容量が増えたことも有るので通常14bitで作業している。

以下参考までに実測値。
12bit 圧縮無し   18.68MB
    圧縮     9.78MB
    ロスレス圧縮 11.16MB
14bit 圧縮無し   24.5MB
    圧縮     12.17MB
    ロスレス圧縮 14.06MB

アクティブD-ライティング

 仕掛けは、撮影時にハイライト基準で撮影する事。ハイライトが飛ばないようにあらかじめプログラムしておいて暗めに撮影する。シャドウ部にかなりの自信を持っている事から、処理エンジン内で16bitでシャドウを持ち上げて、バランスをと取る。これって、話を聞いていると「あれ、なんだいつもやってる事じゃん」と気がつく方は、デジタルカメラの処理に馴れ込んでいる人。そう、まったく、私たちが普段やっている事と同じなんだ。ただし、これまではシャドウ部を持ち上げると、当然ノイズが乗ってくるんで、シャドウ基準のカットを撮影しておいて、2枚を合成する。丁寧にやる時は、適正、というか中間値基準のカットも撮影しておいて、3枚を合成していた。
 それを1枚でこなしてしまうアクティブD-ライティングは、その意味で、何処までもシャドウ部に粘りがあり、悪玉ノイズが浮いてこないNikon D3、D300でなくては、使えない技術で、他のデジカメでは、こうは行かないだろう。もちろん高感度側では持ち上げたシャドウ側が荒れることも予想される。D3の場合で感度6400以内で有効な技術といえ、安全圏をとれば感度は3200以内で使用した方が良いかもしれない。また、これを「普通」あるいは「強」にして撮影した時は画像処理を加えないほうが無難だろう。「弱」で見かけのダイナミックレンジを2/3絞り程度稼ぐ事が出来るが、何事にも「万能」とは行かない。仕上がりによっては、コントラストを追加しなくては期待する再現にならない事もある。

シャドウを出すために絞りを開けると窓が飛んでしまう。

そこであらかじめハイライト側がぎりぎり入るように絞って撮影。シャドウ側はほとんどつぶれて見えるが、実はかなりのデータを持っている。

その後、シャドウを持ち上げてレンジをコントロールし、彩度を必要量追加する。これを自動的に行ってくれるのがアクティブD-ライティングだと理解すればいい。「弱」はシーンを選ばずに活用できる。撮影後の処理がダイナミックレンジのコントロールしかないような倍は、標準や強を使用しても良いだろう。

データの仕上がりピクセルチャート

 このチャートを見ていて解像感のバランスが驚くほど良くなったことがわかる。1200万画素の解像感はもちろん有しているが、有る点からは無理に解像しようとしないので、じつにモアレを起こしにくい構造になっている。元々ニコン系はモアレ率が低いのだが、さらに改良されたようだ。ローパスフィルターの特性がさらにイメージセンサに合わせてチューニングされているのだろう。そのかわり見かけの解像感はD2Xよりも低く感じる人間もいるかもしれないが、もちろん適切なシャープネスを適用することで問題は解決する。左がD3、中央がD2X、右が元のチャートだが、表示の関係上、2倍のチャートを同寸に縮小して使用している。

鮫小紋の反物を斜めに撮影してみた。大概この撮影ではどこかで(小紋の模様とピクセルピッチが1;1付近になったところで)破綻を起こす。D2Xも見事に解像してはいるが、あちこちで偽色を発生させていて、少々硬く感じる。D3が目差したものが、単なる「最高の解像感」ではなく、「バランス良い仕上がり」だという事が感じられる。ここに表示しているのは反物のもっとも大きな部分だが、クリックすると全体像を確認できる。

----------------------Nikon D3--------------------------------------Nikon D2X -----------------------

ホワイトバランス

 草木の緑とナトリウムランプの緑はデジタルカメラの中ではほとんど同じ数値になるって知ってました?  だから体育館の中や野球場のナイターなどのシーンではうまく オートホワイトバランスが働かない。D3からは1005センサによるシーン認識(シャッターボタンを半押しの状態から測定している)により、被写体内の形態、現場にある光、センサに届いている光、明るい白を検知し、ホワイトバランスをセットするように進化した。シャッター半押しの状態から被写体、その周辺の状況をプリスキャンする 機能も搭載。対象に向かって半押しの状態でしばらくレンズを振っていると、より正確なホワイトバランスを得られるようだ。さらに全てのモードで好みに応じて微調整を加える事が出来るようになった(やっとだが)。これにより、オートホワイトバランスの精度はぐっと向上した …ではあるが、やはりオートはオート。“ツボ”にはまると、やはり面白い
結果を引き出してくれることもある。シーン認識のシミュレーションにない、あるいは本来まったく異なる環境にあっても、参照する別のシーンにマッチしてしまった時などに起こる現象だろう。これはべつにNikonに限った事ではないのだが…。ま、個人的にはオートホワイトバランスって仕事ではめったに使用しないんだけどね。


マルチパターン測光

 最近気がついたのだが、ロケやスナップなどで、相変わらず部分測光、それも、5mm程度の小さな範囲で測光してオートで使用している人たちがいる。それってダイナミックレンジが広い銀塩フィルムで有効な手段。あるいはマニュアルで露光を決める時、あるいは中央部に人物の顔がある程度に大きく存在する時に、しかも極端な逆光でない場合に使える手だ。デジタルの、しかもオートでそんなことをしたらば、どれだけ優秀なエンジンをもっていしても、オーバーやアンダーを作りやすい。デジタルフォトはハイライト基準なのだ。
 マルチパターン測光は1005センサのシーン認識情報も加味し、画像の中の明るい部分を
検知して、その面積が大きい時にはその明るさが飛ばないように絞り、ある程度よりも面積が少なければ、飛ばしていい部分と判断してくれる。だから、マルチパターン測光で撮影した時は、飛んでしまった、という結果になりにくい。(場合によっては大きめに設定した
中央部重点測光の方がいい結果を出す事もあるが…)私は上記の理由からスナップの撮影にはマルチパターン測光の露出オートを結構多用する。どうやら、今回のD3のプログラム曲線のチューニングは、やや明るめのチューニングになっているような気がする。マルチパターン測光ではー1/3〜ー1/2補正くらいで使用すると実に使いやすかった。だまされたと思って一度試してみて欲しい。
 ハイライト基準を自動的に行う方法がもう一つある。マルチパターン測光モードでアクティブD-ライティング(弱)にセットすると、とにかく画面内にあるもっとも白い部分が飛ぶぎりぎりで露光をしてくれる。後はシャドウを持ち上げるだけで、これはカメラ内部で自動的に実行してくれる実にありがたい機能だ。この場合はわざわざマイナス補正する必要もない。仕上がりは優等生的ではあるが、RAW撮影していれば、後からキャンセルする事も可能だし、JPEGであっても高品質であれば、少々シャドウをコントロールするだけの余力がある。

オートフォーカス

密集形態を持った15個のクロスセンサによるオートフォーカスは中心部にいれた被写体をほとんどはずさない。その周辺に36個配置されたシングルセンサでさえ、高精度な
合焦を実現している。新機能の「3Dトラッキング」を選択すると1005画素のセンサのシーン認識は被写体追尾にも応用され、実に見事な動きをする。アップにしたモデルの「下まつげ」にフォースをロックすると、モデルが動いても、「下まつげ」の位置でピントをロックオンする。風景、物撮りなどの構図移動にもっとも威力を発揮し、追尾速度が倍くらいに上がったら応用範囲はさらに広がるだろう。


ライブビュー

 ライブプレビューを搭載したのはニコンとしては初めてだが、初めて「使える」レベルのライブビューとして登場したと感じる。三脚モードの、コントラスト検知は物撮りに持ってこいで、コントラスト検知故、長いと2〜3秒ほど時間はかかるが、合焦位置を画面内の何処にでも持ってくる事が出来ることと、その精度の高さには感動する。外出しのディスプレイにつなげても本体の表示が消えなくなり使い勝手はさらに向上している。カメラ本体でのライブビューは実に便利だが、Camera Contorol Pro 2からのコントロールではライブビューの最中に露出などの設定を変更できないので、ちょっと不便だった。ソフトウェア…インターフェイスの問題だと思われるので、この当たりはぜひ練り直して欲しいと思う。


フォーマット切り替え

 使いやすい1200万画素に4×5の1000万画素、DXフォーマットの500万画素。コマーシャルの世界では非常にハンドリングしやすく、使い勝手のあるスタイルを3パターンで使用できる。コマーシャルの世界では「500万画素で十分」なシーンと「正方形に近いフォーマット」を要求さることが実に多いのは周知の事実だ。そういう意味で、クロップモードの利用価値はスポーツ撮影よりもコマーシャルにおいてはるかに有効な気がする。DXレンズを装着した場合は自動的にDXフォーマットとして使用できる。
 もっとも遠景の風景、100人の集合写真などでは必要な空気感、解像感を再現するために2000万画素オーバーは必要だと思っている。このクラスは別物として考えるべきだろう。


水準器

 建築写真や風景写真で欠かせぬアイテムの水準器 もう少し精度が上がり、前後の水準も計れたら完璧なのだが…あ、後カメラを真下に向けた時の水平時も…。


ダブルスロット/記録モード

 ダブルスロットによる「撮影時バックアップ機能」をサポートした事も撮影時の安心感、セイフティシステムとして多いに評価できる。通常の順次記録、RAWとJPEGを同時記録、RAWまたはJPEGを同時記録から選択できる。カード記録秒35MB UDMA66まで検証済み。 どうやら、UDMA125まで対応しているらしい。


AFレンズ微調整

 自分が所有しているレンズとボディの相性によるフォーカスの微妙な狂いを、ボディ側で補正できる。これにより、いちいちサービスに持ち込まなくても、手持ちレンズ全てをカスタマイズして、ピント位置を補正できる。デジタルはオートフォーカスに頼らなくてはならない撮影が多いだけにありがたい機構だ。ただし、同一のレンズは1本だけ。同一レンズ同士を識別する信号がないからだ。でもこれって困るね。カスタムサービスでいいから、同一レンズを識別する手だてが追加端子などでいいから、出来るようになればもっとありがたい機能になる。


ピクチャーコントロール

 被写体、あるいは仕事毎のセットを、スタンダード、ニュートラル(私はこれが一番お勧め)ビビッドを基本とし、シャープネス、コントラスト、明るさ、色彩構成などをカスタマイズして9種類まで登録できる。今まで被写体に合わせて、毎回セットしてきたものをすぐに呼び出せる
機能は「どんなものでも撮影する」カメラマンにはありがたい。ちなみに筆者は現在ニュートラル内部でシャープネスは-2〜3、コントラスト-1、色の濃さ+1でかなり良い結果を引き出せている。
 「明るさ」は新しい機能だが、ハイライトあるいはシャドウセットアップだと考えていい。+側にチェックすると、ハイライトに延びのある画像を、マイナス側ではローキーな写真にトーンを与えることができる。また撮影意図により、ハイライト重視、シャドウ部重視、標準という使い分けが可能で、従来苦手だった明るい被写体もかなりのレベルで克服してきた。ただしアクティブD-ライテングとの併用は出来ない。


14mm-24mm

同時発売になった、14〜24mmというズームレンズをついでに紹介したい。これがズームレンズかと驚くような解像感、描写力を持つ。特にF5.6~8で使用すると、単レンズよりも遥かに素晴らしい性能が得られた。大きく重い事、前玉が膨らみすぎていて傷付きやすそうな事、広角側が見事に樽型になっている事の3点が欠点といえるだろうか? しかし、樽型の収差も実にお行儀が良い収差で、Photoshopのレンズ補正でほとんど修正できる。標準側の24mmではほとんど収差が見受けられない。このレンズを一番使用する確率が20mm前後だと思うので、それは正しい選択のようだ。14ミリ側ではある程度強調されていたほうが調広角らしさがましていいじゃない、って思うのは私だけだろうか? ボディ側で周辺の色収差を吸収している事も手伝って凄まじく端正なレンズに見える。
 14mm〜16mm側は5.6以上絞ったほうが結果がいいが、17mm以上は開放から周辺まで解像する。14、17、20、24mmの高性能の単レンズをまとめて一本で持って歩ける(ズームレンズが売り出された事に良く言われた比喩だが、性能の点でまったく意味が異なる)という結論を得る事が出来た…のでこれも買っちまった。

14mm側の解放とF8の比較、レンズ中心部。ここではほとんど差が見受けられない。いずれの焦点距離でも同様なので、中心部は割愛する。

14mm側の解放とF8の比較、左隅。さすがに周辺は開放の場合、これだけ甘くなるが、F8まで絞ると見事に解像している。色収差除去が見事に働いており、ほとんどフリンジが見えない。

周辺部(左隅)のF2.8 で15mmから24mmまでの比較。17mmから上は開放でもこれだけ解像している。

周辺部(左隅)のF4 で15mmから24mmまでの比較。15mmでも結構使用できるレベルに達している。これがズームレンズだという事を念頭に置いていなくとも驚くだろう。

周辺部(左隅)のF5.6 で15mmから24mmまでの比較。ほとんどの単レンズでこれだけ周辺で解像しているものはあるまい。

周辺部(左隅)のF8 で15mmから24mmまでの比較。いずれも改めて書く必要もないくらい見事な描写をしている。このレンズの絞り値の最高ポイントはF5.6 ~F8 と見た。

さて、これ以降は作例集。いずれもかなり「無理」な状況での撮影。

太陽がかなり傾いた午後4時頃の奥入瀬の渓流。まともに日の光レンズに向かっているが周辺はまったく暗い。少々画像処理で暗部を持ち上げているが、日の光がおかしなハレーションを起こしていない事に注目して欲しい。いずれも手持ち。ISOは800。シャッタースピードは1/1000、F4
14~24 とNikon D3が合体しているからとれた映像だ。1/1000を切っているため、瀧のしぶきが太陽の光に照らされて静止している様子まで見える。

八甲田初冠雪の日。雪が粉砂糖のように紅葉した木々の上に舞い降りていた。今回の作例では唯一薄日が全面に差している条件の良いもの。マルチパターンプログラム測光 -0.3補正 AF-S NIKKOR VR 24-120mm F3.5-5.6G 65mm相当 1/640 F7.1 しばらく眠っていた24-120がかなり使える事を再確認した。

大阪駅近くのバー「オーガスタ」にて。とても暗い室内でペンシルライトを頼りに、感度を6400に上げて撮影。シャドウ部を持ち上げるとペンシルタイトの光芒が筋を引いているのがわかるが、あまりに極端な輝度さのせいだろう。この「雰囲気」を、まんまで撮影できる事自体が奇跡に近い。1/125 F5.6 12-24F2.8G

これもかなり暗い場所に置かれたもの。今までこのシーンはD1 、1Ds、D2X といくつかのカメラで撮影してきたが、今回ほど見事に仕上がった事はない。銅と鋳鉄、陶板、硬い木の壁、鉄板、絨毯、ガラスなどの質感と色彩が気持ちよく描き出されている。 ISO400 1/125 F2.2 85mmF1.8D

夕暮れのショッピングモール。見た目にすっかり空は暗いのだが、これだけの描写をしている。感度は3200。電飾の明かりも飛ばず、水面に映った生け垣や橋の影もきれいだ。3200という感度は掛け値なしに常用感度だといえる。 1/250 F2.8 14-24F2.8G

Nikon D300

 ここまで書いてD300に触れないわけには行かない。が、ほとんど同じだと思って構わないDXフォーマット機なので、レンズの焦点距離が変化することと、感度がD3に比較して200~400まではほとんど同等。800で少し気になり、1600で約1段、3200の高感度になるにつれて2段落ちるという事程度だろうか? つまり光量が十分にある状況ではほとんどD3と遜色ない性能を持っているという事だ。条件が厳しくなった時に初めてその差が現れる。
 逆にフォーカスポイントが画面全面にあるので、立ちポーズのモデル撮影時にどんなポーズでも顔にピントを合わせたい時には、絶大な威力を発揮するだろう。いったんこれを味わうと、何でD3はもっと左右にクロスセンサを追加しなかったのかといつも思う。その他クロップモードが無いなどのにも細かい仕様の差異はあるのだが、それでもD2Xsを遥かに凌駕している部分が多い。D2Xsの後継だけを考えれば、D300で十分だろう。
 DXフォーマット機なので、レンズも小さくて済む。これはロケなどではありがたい仕様だ日中のロケや、ストロボなどを存分に使用できる環境での撮影だけなら、D300の方が遥かに値段が安いのでお買い得といえる。

結論

 ただし、未知の世界を、今まで不可能だった写真を撮りたいのなら迷わずD3を選ぶべきだ感度6400までが写真として「使える」常用域。いざとなれば12800から25600相当まで神門を上げる事が可能で、常に撮影しながらバックアップを取れるという力強いサポート。建築やスポーツ、報道、自然画の世界はNikon D3で新しい地平を切り開くだろう。