■これまでの履歴■

<第9回定例セミナー> 2008.3.23

 
鹿野宏氏(電塾本部運営委員)による
「デジタルフォト講座 BASICを徹底解説」
「優しい電塾セミナー(1年間の復習編)」

   
   
 
レポート  藤山武

第9回の定例セミナーは電塾本部運営委員であり、東北電塾昨年度多くのセミナーをいただいた鹿野さんを招いての、氏の著作新書「デジタルフォト講座BASIC」を元に著書に書かれているカラーマネジメントについてを徹底解説いただきました。

今回は鹿野さんの著書を元にセミナーを進めると同時に、モニタのキャリブレーション、プリンタでのキャリブレーションとマッチングなど、実際の実演を交えて講座となりました。


■ カラーマネジメントとは何をすることなのか?

徹底解説ということもあり、まさにこの問いの解説からスタート。
取り違えたり、混同してしまいがちなカラーマッチングとの違いを含めながらもわかりやすく解説いただきました。

本来、デバイスによって色再現が異なってしまうのは間違った現象ではない。

そこで初歩的なマッチングとしてプリンタの出力に合わせて、モニタをRGBで調整し色を相似なものに近づけること。
これは1対1の作業と関係であり、モニタやプリンタが変わってしまえば通用しないものである。
ましてや他の人のモニタ、プリンタでは全くと言っていいほど通用しないものとなる。
なぜなら基準を自分勝手に決めてしまっているからであり、「色彩を伝達する共通の基準」を持ち得ないワークフローであるからである。
このワークフローでは元のデータが持つ色、色彩との整合性がないためデータの持つ色彩を正しく伝達することができない。

そこでカラーマネジメントシステム。

カラーマネジメントはまずデータの持つ色彩をモニタやプリンタに相似させるようにする。
さらにその色彩はRGBというデバイスに依存し変異する色空間ではなく、Lab*という色の絶対値、「色彩の基準の物差し」を用いてそれぞれのデバイスで色彩を相似させる。
結果、デバイスをはじめ個人や個体に左右されない色彩の正しい伝達が行えるのである。
これであれば個体どうしのマッチングだけではなく、あらゆるカラーマネジメントを行っているデバイスに於いて正しい色彩の伝達が出来るために世界中どこでも相似の色彩を再現できるようになる。


■ プロファイル

カラーマネジメントが稼働するためには3つの要素が必要となる。
それはインプットプロファイルとアウトプットプロファイルそしてカラーマネジメントモジュールである。
カラーマネジメントモジュールが元データの持つプロファイルを参照し、そのデータがどのような色彩をもつデータなのであるのか、プロファイルを元にLab色空間における絶対的な座標を算出する。
さらに出力先のデバイスのプロファイルを元にモジュールが出力再現可能な色彩の範囲を算出し、元のデータが持つ色彩のバランスを崩さぬように出力先の色空間に絶対値の座標で現された色彩をマッピングして再現する。
カラーマネジメントは常にデータに添付されるプロファイルをカラーマネジメントモジュールが参照し色彩を算出、またはマッピングして再現しているため、プロファイルが重要となる。
カラーマネジメントが稼働している環境であれば、モニタとプリンタ1対1を合わせているのではなく、元データとモニタ、元データとプリンタを絶対的な基準を元に合わせているからこそ、多種多様なモニタやプリンタを一同に並べても相似の関係が保てるのである。

ただし、カラーマネジメントを行えばすべてが上手く行くというわけではない。

色再現範囲の狭い、乏しいモニタやプリンタなどデバイス自体の能力以上の再現はカラーマネジメントを持ってしても再現が可能になるわけはない。なので再現するのに必要充分な色域、階調を持ったモニタ、プリンタが必要となるのである。


■ モニタキャリブレーション

モニタをキャリブレーションするとは、ソフトウェアキャリブレーションと、ハードウェアキャリブレーションはどのような作業を行っているのかを実際にキャリブレーションを実践しながら解説いただきました。
ソフトウェアキャリブレーションは、モニタにRGBの数値が入力された際、モニタの現在のセッティング状態で出力される
色彩、輝度、ガンマ値をLab座標上の絶対値として計測してその状態で描き出せる最大の色域をプロファイルとして作成し登録し、このプロファイルをカラーマネジメントモジュールが参照し、モニタの色再現と実際の色彩の差異を計算、CPUからビデオボードに補正したRGBの数値を伝えることで再現している。
ハードウェア自体は何の補正や調整を行わない状態で受けた情報を出力している。補正ということは差異に対する逆の数値を入力し相殺している事であり、極端な補正は表示品質の低下や階調飛びなどを起こす場合がある。

そこで必要になるのがハードウェアキャリブレーションである。
測色機とアプリケーションを用いてモニタの基準となる目標値にあらかじめ設定しておき、無理なソフトウェアキャリブレーションによるグレーの階調飛びや表示品質の低下を抑えるために行う。
目標値を定め、実際にそのモニタでの白色点、輝度、ガンマ値を手動で設定値に合わせ込む。
これによって、測色の際に大きくかけ離れた数値が生まれることもなく、無理な逆位相の数値をモニタに反映させることも少なくなり、表示品質の安定や階調飛びを抑えることができる。
加えて、人間自体のキャリブレーションも必要である。

観察環境の整備となるが、壁や机は無彩色を配置し、太陽光など強い光が差し込むような環境は避ける。

その目標値は白色点が5000ケルビン 輝度70〜80 cd/F ガンマ1.8 である。

またキャリブレーションつながりとして今回はプリンタのマッチングを実際に行いながら解説いただきました。
プリンタプロファイルはメディアプロファイルを考え、紙ごとのプロファイルをしっかりと選択して出力を行うこと、カラー管理はフォトショップで管理し、プリンタドライバでは紙の選択を行うだけにしてプロファイルを当てないようにする。
CMYKなどプルーフプリントを行う場合はフォトショップのプリントダイアログの校正からプロファイルをjapan color 2001 cortedを選択してプリンタでは用紙のプロファイルのみを設定し出力する。
この際、紙色をシミュレートするは新聞紙をシミュレートしているので、色味が落ちすぎてしまうのでチェックをしない。
別の方法として、フォトショップ上でプロファイルの変換でCMYKの色域に変換してからプリントする方法も紹介していただきました。

昨年の東北電塾キックオフから一年を掛け行ってきたカラーマネジメントについての復習という意味合いもあり、
著書と鹿野さんの説明とを照らし合わせながらのセミナーであり、
これまでのセミナーの総ざらえであり・・・
ある意味カラーマネジメントについての現時点での最終確認セミナーであるという心構えで参加者も聴講できたようでした。

著者による新書の徹底解説ということもあり、購読していた参加者から大なり小なり質問や疑問が出るなど、参加者のカラーマネジメントに対する認知とモチベーションが上昇しているのは確かなのだなと感じられるセミナーでした。


鹿野さん、今回もありがとうございました。
 

 

  

 

 
 
写真 藤山武