■これまでの履歴■

<第8回定例セミナー> 2008.2.17

 
早川廣行氏(電塾塾長)による
「2008年版理想のデジタルフォトワークフロー」

・Adobe Photoshop Lightroom Adobe Photoshop CS3を
駆使した理想的なワークフローを追求
・PhotoshopCS3はスタンダードバージョン? それともEXTENDEDバージョン?
   
   
 
レポート  藤山武

2008年最初の東北電塾のセミナーは電塾塾長 早川廣行氏を招いての開催でした。
午前の部では塾長がこれまでに講演やセミナーなどでお話されてきたことをまとめた「聞けば写真が上手くなる」DVDでの”写真のチカラ”や”写真とは”について、午後からは2008年版デジタルフォトワークフローとして2008年はRawモードワークフロー普及元年として、PhotoshopLightRoomでのRAWデータでのワークフローとPhotoshopCS3のスタンダードとExtendedの違いをご説明いただきました。

「聞けば写真が上手くなる」
DVDでは2004年に開催されたPhotoEXPOでの8大写真雑誌編集長のパネルディスカッションでパネラー全員が異口同音に口にしていた事、その2つの集約の説明から始まりました。
   写真のチカラ
    ・百聞は一見に如かず!
   百万言を費やしても語れない伝達能力を写真は秘めている。
   写真は撮り手の意志を離れて、自ら語る、事ができる。
    ・想像力を喚起する!
ある事象のある部分のある瞬間を切り取った写真には写っていない瞬間写っていない物事を、連想させる力がある。
まさに百聞は一見に如かず、言葉では語り尽くせない物事も写真によっていともたやすく伝えられてしまう。
また言葉や文章には話し手の意志や感情が含まれることがあるが、写真は撮り手の意志を離れ自ら語る。
この根底にある事を普段は侮ってしまいがちだったが、再認識させていただいた気がしました。
ムービーは撮り手の意志とフィルタを通し、時間軸で物事を伝えるため、饒舌であり自ら語りかけ、写っていない物までを連想させるのは写真以外にない。
この説明を聞いたときに、裏を返せば伝えたくない物まで伝えてしまったり、また自分の意志とは別に全く違った事象として見る相手に間違った事を伝えてしまうのだろうと思い、ついつい写真の真のチカラという物を侮りながら仕事をしてしまっている自分がいることを再確認すると共に写真に真摯に向かい合い付き合っていかなければと強く感じさせられました。


写真はPhotograph。
Photo=光でgraph=画である。

写真は実は光画であり、真実を写すと表現しているのは日本と韓国だけ。
Photographは光画であり、光で描いた絵なのである。
デジタルフォトは電画であり、絵画と光画と電画では自由度が高くクオリティに自分の意志や意図を取り込める分、電画は光画よりも絵画に近い。しかし光で描くことは同じなのであるから電画も光画である。
言葉を写真から光画、電画に置き換えることで感覚的に写真の存在をわかりやすく理解することが出来るのだなと思える説明でした。
また光画、写真の本質と技術についての説明として写真=光画の基本条件、ピント、露出、フレーミングと必要条件、色、形の正確な再現、素材感の正確な再現、存在感、現実感の再現と撮影をするに当たりよく心がけなければならない条件の説明に加え、光画の本質”被写体が興味深いこと”が最も重要であり、光画の技術である光のコントロールが8割、その他のレンズやカメラ、フレーミングは残りの2割でしかない。
良い写真、上手い写真の本質は被写体が8割であり、残りの2割の内の8割が光のコントロール技術であり、残りの2割がその他のファクターである。この2割の中にはレンズだったりカメラだったり、フィルムだったり受光素子であったりの違いが含まれているのあれば、デジタルでも銀塩でも光画には被写体の興味深さと光のコントロールがとても大切で大前提としてあるのだと言うことを証明しているのだと言うことが分かりました。
塾長も自戒の為とおっしゃっていましたが、ーシャッターを押す前に光の美しさを意識しようーは初心の基本としてこれからもしっかり心得ておかねばと再確認しました。

続いて綺麗なデジタル画像を得るためにという内容に移り、階調補正を前提にした撮影は16bit処理が原則であること、デジタル写真は階調再現技術であり、画像の記録・再現する帯域の圧縮技術である事の説明では、これまでのセミナーをはじめ電塾で常に話されている事である現時点で出来る最高のbit数で処理することが階調をできるだけ広くのこしたデジタル画像を得るための原則であり、不必要な高彩度での階調飛びは写真では不適切であること、広い被写体の階調を写真の狭い階調に適正に取り込む事、適正露出が適正画質を創り出す事について実例の写真やヒストグラムを用いて説明していただきました。
塾長も触れていましたがRawで撮影していると後で調整してしまいましょうとなってしまう、ホワイトバランスの設定の重要性の説明では、現在のデジタルカメラではアナログデータからAD変換する際にホワイトバランスを加味したデータ調整を行って書き出しを行っているので、フィルムでの撮影よりもむしろデジタル撮影での方がフィルタワークや光源のホワイトバランス管理が厳密で重要になってくるとのお話でした。
AD変換の時点でホワイトバランスが狂った状態であればそこで発生した色の狂いやノイズはPhotoshopなどでの調整では直せなくなる。PhotoshopやCameraRawでのホワイトバランス調整は厳密にはグレーバランス調整で、光源の色温度を管理しカメラに設定するホワイトバランスとは異なる物であるという事を説明いただきました。ホワイトバランスを正しくすることも画質向上の必要条件であると再認識しました。

DVDの締めくくりはPhotoshopを使った画像処理の6つのポイントを説明いただきました。
階調補正は16bitモードで行うことが最重要、画像補整はRGBカラー、明るさコントラストは使わない。
レタッチは修復ブラシとスタンプツールを使い分ける、ゆがみフィルタはレタッチの極め手、シャープネスは料理における塩、ノイズは香辛料。
電塾で知り得た情報や技術に加え、写真について再確認と再認識を凝縮した午前の部でした。□2008年版デジタルフォトワークフロー2008年版のデジタルフォトワークフローとして午後の部はPhotoshopLightRoomでの非破壊編集主義のRawデータ編集ワークフローとPhotoshopCS3の説明をいただいた。

大きな要点として
正しく取り込んだ綺麗なデジタルデータに手を加えていないデータが最も綺麗なデータであるが、正しく取り込めていないデータはどんなに処理をしても歯抜けのデータの誇張補正にしかならない。
Rawで撮影すれば万能であるというわけではない。
だが、画質を基準に考えるとやはりハイエンドカメラでもローエンドでもデジタルカメラでの撮影はRawで撮影でRawワークフローが最善である。
LightRoomでの編集作業は非破壊主義による作業であり、オリジナルデータを直接補正することはなく、階調ロスの少ない16bitデータとして書き出すことができる。
これにより非破壊編集主義による高品位データの汎用的な運用ワークフローが実現できる。
LightRoomではJPEGのデータも16bit変換後編集よりも圧倒的に高品位な物を作り出すことができるのは、
この編集がオリジナルデータを直接補正していないからである。
これまで知り得た知識では、画像データは少しでも編集を加えれば階調は1bitずつ崩れて減少していくため、必要最低限の補正を心がける事が必要で、さらに撮影以前のレンズ前にも最善の注意が必要である。と言うことでした。
その全段の部分がLightRoomによって更に安心安全な編集が可能になったということです。
やり過ぎはもちろん破綻と破壊につながるのですが、オリジナルデータの破壊を最小限に抑えることが出来るというのは私たちにとって大きなプラス要因であると再認識しました。

またLightRoomではDNGフォーマットが基本であるという説明では、パラメーターやタグ、オリジナルのRawデータも内包し一つのファイルとして完結しているDNGフォーマットを基本としているからこそできる事として、PhotoshopのCameraRawにも多bitRaw形式でパラメーターを持ち込めるという点、またその逆も可能な点などや、将来、展開が出来なくなってしまうなどの不安を残さずアーカイビング出来るデータフォーマットである点などを挙げられていました。
そしてどれもがオリジナルデータの非破壊主義編集であることから元々のデータは撮影した時と同じ情報量を持っている事になるわけです。
DNGデータとして管理できる点、プロジェクト毎にデータベース化しカタログを作成し軽快な編集作業が出来る点もおおきな利点です。
塾長はこのほかにもワークフローの一部としてバッチ処理について新規のカタログ作成から始まり、基本補正やHSL処理、傾き補正や切り抜き処理、センサーゴミのレタッチなど一連の作業をLightRoomでは同期でバッチ処理できるという流れを数百枚の撮影データの実例を元に説明してくださいました。
この同期という処理は作業効率を格段にあげてくれるなと常日頃思っていましたが、枚数が膨大になればなるほど効果は大きいことを実証いただきました。

LightRoomの説明の最後に誕生のいきさつを教えていただきました。
Photoshopは毎年毎年膨大な機能が増え肥大してきた、そんな中写真はベテランだがパソコンは不安な人のためのソフトを作るべきだ!として生み出されたのがPhotoshopLightRoom。

誰もが目的を目指して進められるソフトである。

Photoshopの簡易版でも縮小版でもない必要に求められて生まれたLightRoomはこれからのRawデータワークフローでとても有効に機能するように出来ているソフトなのだなと改めて認識しました。
普段の作業の半分はLightRoomで行ってますが、まだまだ使いこなせていなかった部分がデータベースとしての運用でした。カタログ管理など使いこなせていなかった点など、今回のセミナーで知り得た利点を元に徐々に活用方法を作業の中に取り入れて実践していこうと思います。
 

 

 
 

「PhotoshopCS3のスタンダードとExtendedの違い」

本日最後の説明はPhotoshopCS3のスタンダードとExtendedの違いとどちらを選ぶかについて。
アドビのホームページにある説明を元に塾長の解説をいただきました。
新たに加わったスマートフィルタとしてスクリプトをレイヤーとして読み込む事が出来るようになった事、
ビデオの書き出しレンダリングが可能になったこと、CS3とCS3Extendedの差異のとしてオーバーレイプレビューの可能なコピーツールと修復ツール32bitHDR画像のサポート強化、3Dモーショングラフィック、ビデオレイヤー、Vanishing Pointでの測定、3D情報の書き出し、アニメーション、画像計測スケールとカウントツール、imageStackによる処理などCS3で可能な機能とExtendedで可能な作業の範囲を紹介いただきました。


多くの機能追加と強化がありますが・・・

基本を知って正しく使い事が大切!

サウナもデジタルも!

と塾長はご愛用の自家用サウナのお話と共におっしゃっておりました。
最後にどちらを選ぶかは…世の中お金じゃない「志」!

カラー時代にラボ任せになってしまった現像…。それを自分の手に戻していくためにPhotoshopが広まった…。
志を持って画像処理を試したい、取り組みたいという方は是非Extendedへと締めくくっていただきました。

2008年最初のセミナーは初心に戻って再認識する部分と今後の基準となるワークフローの習得の機会となりました。


早川塾長東北電塾へお越しいただきましてありがとうございました。
写真 青木真人