九州電塾セミナーレポート

九州電塾10-01

今年からセミナーは2部制で行いまず基礎を最初から1年間学んでいき、後半をさまざまな話題について学んでいくということにしています。
最初に去年1年間の皆勤賞、荒川さんに、本部電塾より、早川塾長からのデジタルフォトマスター認定の表彰状が送られましたので、今回も出席された荒川さんに支部長佐口より授与していただきました。
まずは第1部は佐口さんと的場さんにお願いしました。

今年最初のセミナーはカラーマネージメントの入り口であるモニターキャリブレーションです。
実際におこなう前に、私が自分の環境でColorEdgeCG19とサブモニタで使用しているSyncMaster215TWのキャリブレーション過程をキャプチャーワンで取り込み、過程を説明しました。
人間の目と違ってカメラのCCDは評価蛍光灯の種類の違いによる色温度を正確に再現してくれました。またモニタの輝度と環境の照度のバランスも客観的に見せてくれるので、皆さんも是非一回お試しください。
結果はSyncMasterはソフトキャリブなのでブライトネス/コントラストの手動調整が必須で、CG19と比較すると手間がかかりましたが、なんとか二機種を揃えました。マシンスペックの差はいたしかたありません。

さて教室ではColorEdgeCG243Wと223Wの2機種で実際におこないました。ソフトは付属のColorNavigatorでハードウェアキャリブレーションです。(両機ともAdbeRGBをほぼカバーする色域)
キャリブレータはColorMunki Photo(スペクトル方式アクティブ型)を使用しました。
モニターキャリブレーションを始めるにあたって、最も重要なのは環境光の色温度です。
理想的なのはカメラ(入力)から、撮影照明や環境、最終出力までの白色点を揃える事ですが、全てを揃える事は、諸事情で困難かと私は思います。まず自分の作業環境の色温度をある程度把握する事が重要です。(色温度計がなくても、モニターも環境もある程度はデジカメでチェックできます)
その上で作業環境の色温度にモニタ合わせるか、モニタに設定する白色点に環境を近づけるかを決めます。いきなり目標値で作成してもうまくいかない場合が多いと思います。


次に大切なのはモニタの輝度(一般的には80cd~120cd)と環境の明るさがなるべく同程度の状態に揃えることです。単純に言えば環境が明るいとモニタは暗く見えます。(これもデジカメでチェック)


上記の2点を確認すれば、キャリブレーションでの設定のガンマ1.8/2.2やモニタ白色点の5000K/6500Kはどちらでもいいと思います。さて実際のキャリブはColorNavigatorでは手動調整/紙白/環境光の各モードがありますが、今回は手動調整でおこないました。最初の2点を整えれば後は自動です。(産業大学さんの教室はテーブル周りで実測4750K)結果は目標設定値と結果値がほぼ揃っていたので個別ではいいと思いましたが、2機種の色味をいまいち揃えることが出来ませんでしたので又検証して報告します。
又橘野委員から(始めに環境設定でモニタの壁紙で同じ無地の色を設定しておく事)の指摘を受けました。


次に重要なのは、モニター画像とプリント(作品)との比較ですが、環境光とモニタの輝度をある程度揃えても、モニタ上の画像とプリントの比較ではプリントへの照度は足りませんので評価用蛍光灯スタンド20W程度を追加しなければなりません。
モニタ画像のプォトショップ画面の255上といつも使用しているプリント用紙の白をカメラのTTLで計測し同程度の照度に蛍光灯スタンドを設置して観察環境を揃えて、画像とプリントの比較をします。
(この場合プリントはモニタのすぐ横に同列に並べる)


以上で一応の環境整備とモニターキャリブは終了ですが、CMSのスタートは自分の作業環境です。
4000K以下の環境では、特にソフトウエアーキャリブの場合に難しくなります。又、できればハードウェアキャリブレーションが出来るタイプのモニタが精度も高く、作業も楽でおすすめです。
最後に以前九州電塾でセミナをして頂いたアスカネットの大野さんのレクチャーが今、動画になっていて解りやすいので、是非ご覧になる事をおすすめします。「アスカネット-モニタ調整と色調評価」で検索出来ます。


追記(的場)会場にてCG-243WとCG-223Wで同じ目標値、同じ輝度、同じガンマ値で同時にキャリブレーションを行い、色味がおのおの違う色味に傾いているように見える結果についてセンサーの違いによるものかと思いましたが、その後の検証で違うセンサーを使ってもどちらのモニターも同じ色味に傾きました。センサーは正しく作動していました。個体差があるにしても納得のいかない結果を(株)ナナオ 木田氏に問い合わせをしました。


まず第一にX-riteのセンサーがおおよそ世界基準のセンサーという事をふまえた上でモニターのバックライトの分光特性の違いからColorMunkiが読み取る数値が違ってしまう事を原因として推測してあります。(CG-243WがM味、CG-223WがG味、に偏って人の目には見えてしまう。)センサーを基準とすれば間違いではないとの事です。


ソフト上の環境設定で複数モニターモードを少しお話しましたが、技術的には2度視野と10度視野、人間には10度視野が近いらしいという事で切り替える事が出来るとの事です。


さらにColorNavigatorのソフト上の詳細モードから手動設定で色温度を任意の位置に目標値として設定する事が出来ます。その後、センサーにより測色を開始してガンマ値を整え、色温度値と輝度を結果として出してくれます。(モニター設置の環境下で自分の目でグレー、白色を判断して目標値に設定した場合、結果は100K程度の幅が出ましたが、このモードで二つの機種の色味はかなり合います。


二つの機種の色を合わせたい場合はどちらかを基準として手動調整するしか術がないのが現状のようです。人間の目の見え方とセンサーの読み取り方が違うのでセンサーに頼って調整するのが難しい(センサーで合っていても人間には合って見えない)という事のようです。個人の判断に委ねられますが、便利な機能がついたソフトですから納得がいくまで追い込んでみる事ができます。


第2部は私河口がVRの説明と実演を担当いたしました。
まず簡単に CubeVRのできる仕組み、つくる仕組み、見える仕組みをお話しました。皆さんわかられたでしょうか。
わかってしまえば、そうかそうなんだとなるんですが、最初はやはり不思議です。だって足下も映ってるし、普通どうなってるんだろうと思います。


 そして実際の作業です。まずノーダルポイント(パララックスポイント)の見つけ方。これは自宅でもできる乾電池を使用した見つけ方をおこないました。
今回は魚眼レンズで行いましたが、自分が持っているレンズのノーダルポイントがわかっていれば、 VRだけでなく、Photoshopを使用してのパノラマ製作においても精度のいい撮影ができるので、ぜひ皆さんやってみてください、すごく簡単ですから。


 その次が、撮影する機材の紹介です。
私は十年ぐらい前Kaidan社のVR雲台を使用していたのですが、今は五年ぐらい前に買った LinkIconNodalNinjaの3型を使っています。今回去年の12月に日本で唯一の代理店になった、知る人ぞしる、宮崎のLinkIconよしみカメラさんに NodalNinjaの製品や、seitz社の1億4000万画素のRoundshotやモータで回転し自動的にシャッターを切ってくれるVR Drive等をもってきて頂き、皆さんに紹介しました。
CuveVRは光軸の設定をちゃんと行い、いい機材を使用すれば、撮影も素早くできるし、処理も短時間で行えます。特にNodalNinjaは小型軽量で安いんですが、しっかりできていて大変優れている雲台です。今までは個人輸入で購入するしかなかったんですが、「よしみカメラ」ひとつき社長のおかげで日本で簡単に購入できるようになりました。


 セッティング、光軸をセンターに合わす、そしてノーダルポイントを中心にすべてが動くように設定を行います、あと大事なことはレーリーズの使用、そして今回素早く水平をとる為に雲台を使用せずEZ-Levelerを使って、3軸の調整により素早くレベルをとる方法をお見せしました。日本のメーカーではこういうレベラーは存在しません、何でつくらないのか不思議です。売れないんでしょうね。


 セッティングが終われば後は撮影です。僕は対角線魚眼を使用していますので一周を6回で撮影します。そして天、それから地ですが、僕は地は180度ずつ2回撮影を行います。そうすると雲台の軸だけが残りますが、後はきれいに隠せます。合計9枚で撮影を行います。理論的には円周魚眼2枚ですべてを撮影することができるんですが、どうしても周辺は甘くなるので、オーバーラップ部分が必要になってきます。
そこで円周魚眼の場合は4枚。天面をきれいに見せたい場合は、90度真上を撮影、地はコピーを入れるスペースにするのであれば5枚で完成します。
撮影が終われば後は処理です、いろいろなソフトが存在しますが、お勧めはPTGuiです。日本語ではありませんが覚えれば簡単ですし、機能も充実していて、仕上がりがとてもきれいです。
「どうしても日本語がといわれる方には、LinkIconPanoweaverそしてLinkIconStitcherがあります。すべてのソフトは体験版がありますのでためされるのがいいとおもいます。」


 そして撮影がしっかりしていれば、簡単な設定のみで、基本的な2次元の平面画像(世界地図を考えると分かりやすいと思います)に書き出してくれます。
そして書き出しをPSD形式のレイヤー画像でおこない、Photoshopで簡単な修正を行います。
今回はちょうど的場さんが、僕が撮影中に2画面にわざと入って困らせようとしたので、ちょうどいい教材になりました。的場さんありがとう。
このソフトだけでもCubicVRは作成できるんですが、フィニュッシにはPano2VRがお勧めです。このソフトは日本語化もできていて比較的取っつきやすいと思います。そして何より素晴らしいのがflash形式での書き出しができることです。あとデフォルトでスキンも多く用意されていて、バージョンアップもPTGui同様頻繁に行われています。
この2つのソフトともMAC・WIN両方あり、デモ版で試すこともできるので、ぜひ触ってみてください。


 これでCubeVRの画像が完成しましたので、後はwebブラウザで確認を行い、完了です。
最後に大事なことを、セミナーで言ってなかったのですが、画像にはシャープネスはかけないでください、かけると回転中の画像にジャギーが発生する場合があります。
このソフトの詳しい説明を、QTVR Diaryで二宮氏が説明をされています。VR関係の情報を日本で最も多く発信されている方ですので、興味を持たれた方はぜひそちらで。














写真 佐口正章 河口清秀
レポート 佐口正章 的場久長 河口清秀