九州電塾セミナーレポート

九州電塾09-06

6月20日、梅雨に入ったはずなのに、今日もまた晴れです。
今月も九州産業大学の講義室をお借りして行う予定だったのですが、学校の講義の関係で今回は大学の撮影スタジオに場所を移して行いました。
今回の内容はデジタル撮影、初級です。
まずAPA理事で阿部スタジオ社長の東島氏が『そこまで貼って委員会』というテーマで今迄制作されてこられた作品を見せながら、東島さんの写真制作の基本『フォトモンタージュ』の方法や理論、考え方等を皆さんに語られました。

まずモノクロで暗室で行う多重露光・着色ペインティング、もちろんデジタルカメラ等考えもしなかった時代の作品です。





次がカラーフィルムを使ってのコラージュ、なんとポジの切り貼りやプリントを切り貼りし複写しての多重露光等、東島さんはPhotoshopが発売される前からレイヤー合成等をハサミとノリで制作されていたんです、すごい事ですよね。







次が1990年代ポジをスキャナーで分解したり、PhotoCDを使用してのデジタルによる合成です、この時代はまだPCの処理能力も低く、Photoshopも2.0の時代でやっとモニタがカラーになりプリンタも昇華型を使用していた頃です。こんなとき高いレイアウトスキャナー等を外部委託ですが、もう使用されて作品制作を行われていました。
東島さんの制作で一貫していえるのは、素材からメーンの被写体迄ご自分で考えラフを作り、ビジュアルイメージを頭に描きながら行われているということです。
これは今デジタル画像処理が当たり前になり色々な素材が市場にあふれている現在でもその姿勢は貫かれているということです。僕はPhotoCDが出始めやっと安い料金でデジタル入力が行え、プリンターもHPのDeskWriter 550Cが出てきた頃Photoshopを使い始めデジタル処理を始めました。東島さんはそんな頃もうハイエンドの機材を使用して仕事を行ってこなれていた訳です。本当にすごい!
そして2000年に入りデジタルカメラを使用した画像処理を行うようになったということでした。そんな中で大きく違うのがそれ迄はほとんどモデル撮影だけだったのが、現在は風景写真でも『そこまで貼って委員会』を実践されていることでした。これは画像処理を意識しないように、シズル感を出す為に行っているということでした。
今回東島さんに見せていただいた画像は、僕も某百貨店の広告でよく見ていた画像だったので,こんな時代から東島さんは時代を先取りしていたんだと感心したし、すごいなと思いました。東島先輩お疲れさまでした。







2部は、早川塾長の登場です。
今回は塾長が東京芸大のゼミで講義されているデジタル撮影講座から、お題は「デジタルフォト概論」ーーこれだけでデジタルフォトの基礎は卒業ーーです。











1−写真のチカラとは
自ら語る力・連想させる力 デジタルであろうがアナログであろうが写真の本質の説明です
2−写真は『光で描く画』である Photo-Graph
筆と絵の具で描いた絵が絵画と呼ばれ、光で描いた絵が光画=写真と呼ばれる
ここまでは写真の話ですが,ではデジタルの関係は?
3−電画(デジタルフォト)は光画(写真)よりも自由度が高くより絵画に近い
その次は写真の条件です
4ー光画=写真の基本条件(ピントが合っている/露出が適当である/フレーミングが適切)
5ー光画=写真の必要条件(色や形を正確に再現/素材感を正確に再現/存在感・現実感を再現)
6ー光画=写真の本質(被写体が興味深いこと=写真撮影のプロとは被写体の専門家でもある)
7ー光画=写真の技術(光のコントロール技術が8割/その他の技術は残りの2割に/銀塩写真とデジタル写真の技術的な差は4%以下にすぎない)
 これはつねづね塾長がいわれているレンズ前(ライティング)が大事であるとい
うことです。ライティングをマスターすれば写真技術の8割をマスターした事になる。
『銀塩もデジタルもライティング技術は変わらない』
次に細かくライティングの基本を解説されました(光の方向性を理解する)
・トップライト(普遍的なトップライト)
・プレーンライト(ライティングのベース)
・レンブラントライト(立体感と雰囲気を表現する)
・サイドライト(プレーンライトとレンブラントライトの中間)
・光の質を工夫する(ディフューザー・バウンス)
8−絵画と写真の最も異なる部分(無限に広がる微妙な諧調表現が光画の表現)

その次がいよいよデジタルです
9−Photoshopは諧調優先主義がモットー(PhotoshopCS2 32bitが実際に扱っている諧調数は1,073,741,824階調)
10−諧調再現の実際(諧調補正は諧調情報を損なう処理だが,工夫次第で諧調ロスの少ない補正も可能である)
ここでヒストグラムの見方、Photoshopでの諧調補正の方法や諧調ロスを減らす工夫を語られました
11−適正露出が適正画質を作り出す
12−適正露出の基本は(ハイライトを飛ばさない)
13−シャドーは明るめに
14−光画の雰囲気はライティングが演出する(シャッターを押す前に光の美しさを意識しよう)
15−デジタル測光術(ヒストグラムによる露出確認)
・メインライトを決めるー撮影をするーライトを近づけるー域外警告表示ーライトを離すー光を拡散するーメインライト決定ー補助光を加えるー補助光を拡散するー補助光を離すー背景を照明するーホワイトバランスを設定ーライティングの完成ーグレーチャートの使い方ー黒バックと白バックの場合(これらすべてを細かく解説していただきました)
16−ホワイトバランスは撮影時に正しく設定(オートには頼らない)
17−RAWモードとJPEGモード(画像品質に大きな違いがあるわけではない)
18−写真は諧調表現技術である(諧調補正を前提にした撮影は16bit処理が原則)
19−デジタルフォトに必須のチャート活用
・トーンカーブでグレーバランスを整える
・トーンカーブで諧調を整える
・色相彩度で色の偏を補正する
20−Photoshopを使った画像処理のポイント
選択範囲・16bitモード・RGBモード・トーンカーブ・修正ブラシとスタンプツール・ゆがみフィルター・シャープとノイズ これがPhotoshopを極めるポイントです
最後に
21−必須のモニター調整ツール(作業環境と環境光の整備が正しい画像処理の出発点)
以上、70枚以上の画像を使用して分かりやすい講義でした。
今回のお話は初めての方から熟練の方、アナログ・デジタルに関わらず写真を写す上ですごく分かりやすく基本をもう一度見直す上で勉強になりました。
最後に2つの『き』を意識するを塾長がお話しされました。
機:機が熟す(物事をするのにちょうど良い状態になる事)
氣:氣を込める(万物には氣が存在し,そのもたらしめている根源)
これは人生の必須ツールです。
2時間による講義でしたが今回参加された皆さんは、よく理解出来たのではないでしょうか。ライティングの調整からヒストグラムの見方、Photoshopの調整まですべての肝を語っていただきました。もう基本は分かりました 。被写体をどう料理するかは皆さんの腕にかかってます。
早川塾長どうもありがとうございました。休憩なしでしたが2時間があっという間に過ぎました。東島さんも今回初めての講義でしたが勉強になりました。
次回は佐口さん、橘野さんによる撮影中級編の予定にしています。

写真 河口清秀
レポート 河口清秀